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糸でつながる、君と僕  作者: やしゅまる
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第四章 文化祭準備と秘密の試作品

これはAIが書いたものです

六月の終わり。

梅雨の湿った風が校舎の中まで流れ込んでくるころ、2年B組の教室はいつもよりにぎやかだった。


「はいはい、静かにー! 文化祭の出し物、今日こそ決めます!」


学級委員の山瀬まどかが声を張る。

誰かが「カフェ!」と言えば、別の誰かが「いや、ホラー系でしょ」と返す。議論はなかなかまとまらず、時計の針は無情に進んでいった。


そんな中、ぽつりとあかりが手を挙げた。


「じゃあ、こういうのはどう?」


教室が一瞬静まり返る。


「“手作り雑貨カフェ”。手芸が得意な人が雑貨を作って、それをディスプレイして。お茶とお菓子も出して、ちょっとおしゃれな空間にするの。どうかな?」


「あー、いいかも! 手作り感あるし、女子も喜びそう!」


「誰が作るのかって問題あるけど……」


「――いるよ。ここに」


あかりが少し振り返って、にやりと笑う。


「雨宮くん。ほら、“あの”ぬいぐるみを直した“ゴッドハンド”が!」


「ちょ、ちょっと待って! 僕はそんな……!」


遼の声は掻き消されるように、歓声と笑い声に紛れていった。



その日の放課後。

どうしても断りきれず、遼はあかりと家庭科室で“試作品”作りをすることになった。


「こんなの、僕一人じゃ無理だよ」


「大丈夫。私も手伝うし、他にもやってみたいって言ってる子いるよ。まどかとか、ゆかりちゃんとか。男子も、興味ある人いたし」


「……でも、売り物になるようなものなんて……」


「ううん、売らなくていい。“誰かが丁寧に作った”ってわかるものがあれば、気持ちが届く。……私、そういうの好きだな」


遼は何も言えなくなった。

あかりの横顔は、夕焼けに照らされて優しく、まぶしかった。



試作品第一号は、シンプルなリボンのヘアゴムだった。

落ち着いた紺色のリボンに、小さな刺しゅうで白い花を一輪、あしらった。


「すごい……本当に売ってそう」


あかりが目を輝かせながら手に取る。


「ねえ、これ、今日から使ってもいい?」


「えっ、そんな……まだ、試作品だし」


「でも、こんなにかわいくて、もったいないよ?」


彼女はそう言って、髪を結び直し、そっとリボンをつけた。


その瞬間――

遼の胸の奥が、ふっと温かくなって、でもどこか切なかった。


(これ、僕の手で作ったんだ)


(それを、君が――つけてくれている)


その事実が、たった一つのリボンが、こんなにも強く心を動かすなんて、思ってもみなかった。



遼の「秘密の手芸」は、もう“秘密”じゃなくなっていた。

それは恥ずかしくもあったけれど、どこかで――嬉しかった。


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