第四章 文化祭準備と秘密の試作品
これはAIが書いたものです
六月の終わり。
梅雨の湿った風が校舎の中まで流れ込んでくるころ、2年B組の教室はいつもよりにぎやかだった。
「はいはい、静かにー! 文化祭の出し物、今日こそ決めます!」
学級委員の山瀬まどかが声を張る。
誰かが「カフェ!」と言えば、別の誰かが「いや、ホラー系でしょ」と返す。議論はなかなかまとまらず、時計の針は無情に進んでいった。
そんな中、ぽつりとあかりが手を挙げた。
「じゃあ、こういうのはどう?」
教室が一瞬静まり返る。
「“手作り雑貨カフェ”。手芸が得意な人が雑貨を作って、それをディスプレイして。お茶とお菓子も出して、ちょっとおしゃれな空間にするの。どうかな?」
「あー、いいかも! 手作り感あるし、女子も喜びそう!」
「誰が作るのかって問題あるけど……」
「――いるよ。ここに」
あかりが少し振り返って、にやりと笑う。
「雨宮くん。ほら、“あの”ぬいぐるみを直した“ゴッドハンド”が!」
「ちょ、ちょっと待って! 僕はそんな……!」
遼の声は掻き消されるように、歓声と笑い声に紛れていった。
*
その日の放課後。
どうしても断りきれず、遼はあかりと家庭科室で“試作品”作りをすることになった。
「こんなの、僕一人じゃ無理だよ」
「大丈夫。私も手伝うし、他にもやってみたいって言ってる子いるよ。まどかとか、ゆかりちゃんとか。男子も、興味ある人いたし」
「……でも、売り物になるようなものなんて……」
「ううん、売らなくていい。“誰かが丁寧に作った”ってわかるものがあれば、気持ちが届く。……私、そういうの好きだな」
遼は何も言えなくなった。
あかりの横顔は、夕焼けに照らされて優しく、まぶしかった。
*
試作品第一号は、シンプルなリボンのヘアゴムだった。
落ち着いた紺色のリボンに、小さな刺しゅうで白い花を一輪、あしらった。
「すごい……本当に売ってそう」
あかりが目を輝かせながら手に取る。
「ねえ、これ、今日から使ってもいい?」
「えっ、そんな……まだ、試作品だし」
「でも、こんなにかわいくて、もったいないよ?」
彼女はそう言って、髪を結び直し、そっとリボンをつけた。
その瞬間――
遼の胸の奥が、ふっと温かくなって、でもどこか切なかった。
(これ、僕の手で作ったんだ)
(それを、君が――つけてくれている)
その事実が、たった一つのリボンが、こんなにも強く心を動かすなんて、思ってもみなかった。
*
遼の「秘密の手芸」は、もう“秘密”じゃなくなっていた。
それは恥ずかしくもあったけれど、どこかで――嬉しかった。