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糸でつながる、君と僕  作者: やしゅまる
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第三章 ほころびと広がり

これはAIが書いたものです

翌週の木曜日。

遼が家庭科室で居残り補習を受けていたのは、別に成績が悪かったからじゃない。ただ、担当の和泉先生に「君、細かい作業得意そうだし、ミシンの掃除手伝ってくれない?」と頼まれただけだった。


(ミシンの掃除なんて、誰でもできるじゃん……)


とは思いながらも、道具の扱いは慣れている。ちょっとしたご褒美代わりに、余った端布と糸をもらっていいことになった。



掃除を終えた遼が廊下に出ると、ちょうどあかりと目が合った。


「おっ、雨宮くん。いたいた!」


「えっ、なんで……」


「先生に聞いた。補習って言われたから、なんかちょっとドキドキしたけど、ただのミシン掃除だったんだね。よかった」


「そんな心配しなくていいよ……」


「心配するよ。“秘密のパートナー”なんだから」


その言葉が、まるで風船みたいに廊下に浮いた――と、思った瞬間。


「えっ、パートナーって何?」


鋭い声が後ろから飛んできた。

振り返ると、あかりの友人グループの一人、山瀬まどかが首をかしげて近づいてくる。


「え、ええと……」


遼が言葉につまる前に、あかりがにっこり笑った。


「うん、実はね。雨宮くん、ぬいぐるみの修理がめっちゃうまいんだよ。家庭科レベルじゃなくて、プロ級。私のボロボロのクマちゃん、耳きれいに直してもらったんだ」


「え、それマジ? 雨宮くんが!? 意外すぎる!」


まどかが口をぽかんと開けたまま、まるで珍しい生き物でも見るような目で遼を見た。

遼は耳まで真っ赤になって、うつむいた。


(……しまった。もう、秘密じゃなくなった)



その翌日から、“うわさ”は小さな火種のように広まった。

「家庭科の達人男子」「縫い物男子」「マジで手芸部入るべき」など、からかい半分の声も聞こえてきた。


最初は恥ずかしかった。

でも、ほんの少しだけ――少しだけ、悪い気はしなかった。



金曜の放課後。

遼が校門を出ようとすると、あかりが待っていた。


「ねえ、雨宮くん。……落ち込んでない?」


「……ちょっと、恥ずかしいけど。もう、仕方ないかな」


「うん。でも、あれでよかったと思うよ。だって――」


あかりは、遼の制服の袖をつまんで、目をそらさずに言った。


「自分が得意なこと、ちゃんと見せられる人って、かっこいいと思う」


風がふわっと吹いて、桜の花びらが舞った。

その瞬間、遼の胸の奥で、何かが静かに“ほどけた”。


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