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糸でつながる、君と僕  作者: やしゅまる
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第二章 ぬいぐるみの秘密

これはAIが書いたものです

夜。

遼の部屋には、机のスタンドライトだけが灯っていた。

手元には、あかりが持ってきたクマのぬいぐるみ――年季の入った小さなぬいぐるみで、右耳のほつれは思ったよりひどい。でも、しっかりと縫い直せばまだまだ一緒に過ごせる。


(あの子、なんでこんなにボロボロになるまで……)


遼は針を持ち直し、丁寧に布と布を合わせる。

彼の指先は、驚くほど静かに動いた。小さな針穴に糸を通し、一目ずつ心を込めて縫っていく。まるで、言葉では伝えられない誰かの気持ちを読み解くように。


やがて、耳の破れた部分がきれいに閉じられ、最後のひと針を結ぶ。


(これで……よし)


ライトを消して、ぬいぐるみを布で包む。

胸の奥が、なぜかほんの少しあたたかい。



次の日の放課後、遼は人目を避けて、校舎裏のベンチであかりを待っていた。

陽の光がオレンジに傾きかける頃、彼女は制服のスカートをひらりと揺らしてやってきた。


「やっほ。……早かったね」


「……あまり目立ちたくないから」


「そっか。じゃあ、こっそり渡して?」


遼は、そっと布に包まれたぬいぐるみを手渡す。

あかりがそれを受け取ると、布を少しずつほどいて、中をのぞいた。


「……!」


彼女の目が一瞬、驚きに見開かれる。

そして、そっと右耳をなでるように触れた。


「すごい……すっごく、きれい。まるで最初から、傷なんてなかったみたい」


「……よかった。うまく直せて」


「ねえ、これ……どのくらい時間かけたの?」


「二時間くらい……かな。そんなにかかってないよ」


「ふふ、なんだか悔しいなあ。私、裁縫ほんと苦手でさ。家庭科のボタン付けもできないタイプなのに」


「そうなの?」


「うん。でも――」


あかりは少しだけ、ぬいぐるみを抱きしめるようにして、静かに言った。


「この子、小さい頃にお母さんが作ってくれたんだ。でも、そのお母さん、もういないの」


遼の心臓が、静かに鳴った。


「だから、ちょっと破れただけでも……怖かった。壊れていくみたいで。でも、雨宮くんが直してくれて、なんか――すっごく、安心した」


遼はうまく言葉が見つからなかった。

ただ、自分の手仕事が誰かの心を救ったんだと思うと、胸の奥に温かいものが広がっていった。


「……また、何かあったら。いつでも持ってきて」


「ほんと? じゃあ、これからもお願いね。裁縫の“秘密のパートナーさん”」


そのとき初めて、あかりがいたずらっぽくウィンクした。

遼の顔が真っ赤になったのは、言うまでもない。

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