第二章 ぬいぐるみの秘密
これはAIが書いたものです
夜。
遼の部屋には、机のスタンドライトだけが灯っていた。
手元には、あかりが持ってきたクマのぬいぐるみ――年季の入った小さなぬいぐるみで、右耳のほつれは思ったよりひどい。でも、しっかりと縫い直せばまだまだ一緒に過ごせる。
(あの子、なんでこんなにボロボロになるまで……)
遼は針を持ち直し、丁寧に布と布を合わせる。
彼の指先は、驚くほど静かに動いた。小さな針穴に糸を通し、一目ずつ心を込めて縫っていく。まるで、言葉では伝えられない誰かの気持ちを読み解くように。
やがて、耳の破れた部分がきれいに閉じられ、最後のひと針を結ぶ。
(これで……よし)
ライトを消して、ぬいぐるみを布で包む。
胸の奥が、なぜかほんの少しあたたかい。
*
次の日の放課後、遼は人目を避けて、校舎裏のベンチであかりを待っていた。
陽の光がオレンジに傾きかける頃、彼女は制服のスカートをひらりと揺らしてやってきた。
「やっほ。……早かったね」
「……あまり目立ちたくないから」
「そっか。じゃあ、こっそり渡して?」
遼は、そっと布に包まれたぬいぐるみを手渡す。
あかりがそれを受け取ると、布を少しずつほどいて、中をのぞいた。
「……!」
彼女の目が一瞬、驚きに見開かれる。
そして、そっと右耳をなでるように触れた。
「すごい……すっごく、きれい。まるで最初から、傷なんてなかったみたい」
「……よかった。うまく直せて」
「ねえ、これ……どのくらい時間かけたの?」
「二時間くらい……かな。そんなにかかってないよ」
「ふふ、なんだか悔しいなあ。私、裁縫ほんと苦手でさ。家庭科のボタン付けもできないタイプなのに」
「そうなの?」
「うん。でも――」
あかりは少しだけ、ぬいぐるみを抱きしめるようにして、静かに言った。
「この子、小さい頃にお母さんが作ってくれたんだ。でも、そのお母さん、もういないの」
遼の心臓が、静かに鳴った。
「だから、ちょっと破れただけでも……怖かった。壊れていくみたいで。でも、雨宮くんが直してくれて、なんか――すっごく、安心した」
遼はうまく言葉が見つからなかった。
ただ、自分の手仕事が誰かの心を救ったんだと思うと、胸の奥に温かいものが広がっていった。
「……また、何かあったら。いつでも持ってきて」
「ほんと? じゃあ、これからもお願いね。裁縫の“秘密のパートナーさん”」
そのとき初めて、あかりがいたずらっぽくウィンクした。
遼の顔が真っ赤になったのは、言うまでもない。