第91話 雷を纏って突撃する技
それ以上はいけない!
少し短めです。
「ねぇねぇ、次はだれの修行の話をする?」
『えっと、じゃあ私の話をするね。』
次は姉さんの番か。姉さんとコッチーの修行を付けてくれたのは静岡で出会ったネコショウグンだったようだ。オオヤマツミ様のつての広さは予想外だ。最初に会ったときは脳筋親父という感じだったのに、実際は色々と細かいところまで気配りしている頼りになる大人という印象に変わっている。
『私たちの修行は大きく二つ。一つは二人の魂を一つにしていくこと。もう一つは雷の速さで移動攻撃する修行だったの。』
「魂を一つに…」
「雷の速さっていうのはカグツチが言っていた雷身ってやつね。」
魂を一つにするために二人はお互いの思い出を話し合ったそうだ。初めてコッチーがうちにやってきたとき。あれはそう、2年前だったか。俺が高校に入学した時に親がマンションを買って引っ越して。父さんも母さんも実家では動物を飼っていたから、動物OKのマンションを選んだんだよな。
『コッチーがうちに来た時はまだ赤ちゃんだったから本当にかわいくてね。私たち家族はもうメロメロ。コッチーはまだよくわからなかったけど、とっても温かく感じたんだって。』
「へぇ、そうやって思い出を話して、お互いのことをもっとよく知っていったってことですか?」
『うん、そう。こんなこともあったね、とか、あの時はこんな風に感じてたんだ、とか。ホオリちゃんがミコトちゃんのXitterの投稿を見てニヤニヤしている時は、お互いちょっと嫌な気持ちだったとかね。』
そんな風に見えていたのかよ。ニヤニヤしてたかなぁ…。気を付けよ…。
「気持ち悪いわね。ホオリ。」
「強くイキロ、ホーリー」
「えへへ、私のツイート見てそんな感じだったんだ…」
「いや、爆発しろホーリー」
まったく福島さんの手のひらはグルングルンだな。しかし気持ち悪いは傷付くぞレベッカ。
『そうそう、すっごくおいしいごはんはたまにしか食べられない。っていうのはおかしかったなぁ。何のことかと思ったらCiaoちゅーるのことだったりね。確かにあれは高いし、異常に喜ぶから、他のご飯食べ無くなったら困るって、たまーにしかあげなかったんだけどね。
あとはコッチーはホオリちゃんのお姉ちゃんのつもりだったとか。ホオリちゃんは家族の中で一番下だったんだなぁってね。』
「げ、マジか…。まさか虫をよく俺のところに持ってきてたのって、そーゆーこと?姉さんや父さん母さんには持って行かないのが不思議だったんだよなぁ。」
「養ってくれてたんだね、ホオリくん。」
「どんな顔すればいいのさ、それ…。で、修行はどんな感じだったの?」
「露骨な話題転換でござるなぁ。」
うるさいぞ、福島さん。絶対変な方に話が行くんだよ。親戚のおじさんとかが子供の頃の恥ずかしい話したがるのと同じだぞ。
『ふふっ、そうだねぇ。修行は自分の身体を雷に変えちゃう、みたいなイメージかなぁ。実はコッチーって戦闘中は常に自分の身体の周りで静電気を作ってたんだよね。すごく無意識に。その電気をもっと自分の身体の近くに発生させて包んじゃうみたいな?』
「それって自分はしびれないんですか?」
『そうそう、漫画とかアニメとかって雷が落ちるとしびれたりするよね。でもあれって実際はそうじゃないんだよね。確かにずっと静電気みたいな微量な電気を感じ続けると感覚がマヒしてしびれたようになるけど、実際は電気が発する熱で暖かいというか、熱いって感じ。
そして自分をイカヅチを放つように雷の流れに乗せるの。』
「コッチーならすぐにコツをつかんだんじゃない?私ほどじゃないけどプラーナの扱いは上手だし、戦闘のセンスが高いしね。」
『あはは、ありがとうレベッカ。そう、確かに雷を纏って移動する、っていうか雷に引っ張られるって感じなんだけど、この動き自体は結構すぐにできるようになったの。』
そうなのか、話を聞いていても正直実際にどうやるのか全然分かんないんだけど、コッチーは凄いな。ネコショウグンの教え方が上手かったのかもしれいないけど。
『でも、自分が目標とした場所に止まったり、相手にちょうど攻撃を当てたりするのがすっごい難しくてね。何回も壁に頭をぶつけたんだよ。雷爪で切り裂くときも、当たる瞬間に腕を振るうのは無理だったから、実は最初から雷爪を固定してたりしてるの。』
「ってことは、カグツチ様が“置き”には気を付けろって言ってたのは、動き始めちゃったら止まるまで制御がきかないからってことですか?」
「そのようね。戦闘経験の高い奴とか異常に感のいい奴には気を付けないとまずいかも。」
『そうだね。カグツチ様も本気を出していたら危なかったと思う。全身を刃にできちゃうし。
ってことで雷身を使った時の制御にほとんどの時間を使ったよ。』
「そう言えば、技名は無いの?なんかみんな技名叫んでてさ。しかも格好いい感じで。」
「ホオリくんも叫んでたよ?」
「ミコトとレベッカがそうしてたから、羨ましくてマネしちゃった。」
「ガキねぇ。」
「技名を叫ぶのは男の子の憧れでござるよ。」
『そうだねぇ、あえて言うならボルテ』
「「それ以上はいけない!」でござる!」
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