第85話 神剣炎龍
戦闘回です
門をくぐった俺は来た時と同じように光に包まれ、どこか別の場所に出た。どこだろうここは?ずいぶんと広い草原?
『みな、良く戻った。体からあふれるプラーナが大きく増大したな。よくぞ頑張った。』
オオヤマツミ様に声を掛けられる。周囲を見渡すとコッチーにレベッカ、そしてミコトもまたオオヤマツミ様の前に立っていた。
「ただいま戻りました、オオヤマツミ様。
みんなも今戻ってきたところ?1か月会わないと久しぶりな感じがするよ。」
「うん!ちょうど今だよ。ホオリくんも、みんなも久しぶり!また会えてうれしい!」
ニャ!
「ミコトは変わらず元気ねぇ。でも無事戻ってこれて良かったわ。ホント、無事戻ってきた自分をほめたい…」
レベッカはどうしたんだ?珍しいなアイツがあんなに消耗しているのは。
『さて、戻って来て早々だが、まだ修行は終わりではないぞ。最後にもう一戦じゃ。』
「修行の成果を見せる場ってことですね!よーしやっちゃうぞー!」
ニャー!
コッチーとミコトはやる気に満ちているな。レベッカは大丈夫か?
「フフフ、ぶつけてやろうじゃない…ドーンとぶつけてスッキリさせてもらうわ!」
おっと、こちらもやる気みたいだ。俺もせっかく得た力を試させてもらうとしよう!
『やる気があるようだな。では頼むぞ。』
オオヤマツミ様がすっと下がると、ドンッと目の前で爆炎が弾けた。するとそこには炎を纏った龍が現れていた。
『最終試練にようこそ。勇ましき人の子らと妖精女王よ。俺は火之迦具土神…貴様ら人間にはカグツチという名の方が知れ渡っているかもしれんな。』
「イザナギとイザナミの子供で、生まれた時にイザナミを燃やしちゃったからイザナギに斬られたとか言う神話が残っている?」
「伝説の剣とかじゃなかった?」
「はぁぁぁ、地獄の訓練が終わったと思ったら上位神と戦うとか…そう言えばタケミカヅチってアンタの子供だったわね…イワツツノヲの臣下みたいな岩男も洞窟にでていたし、あれもアンタの子供の眷属じゃない…はぁ。」
『くくく、ちなみにホオリの師となった経津主は俺の孫で、炎弧も俺の眷属だな。』
「今回の修行は全面的にカグツチ様の関係者ばかりだったってことですね。」
『そうだ。大山祇とは兄弟でな。』
「全部つながってるよ、ホオリくん…」
『まぁ我らが父と母であるイザナギ、イザナミには子が多い。この国の神の多くは元を辿れば我らが父と母につながっておるからな。
さて、口上はこれくらいにしよう。貴様らの修行は全て見ておったぞ。俺は炎と剣の神だから戦うのが好きなのだ。タケミカヅチを倒すほどの力、それをさらに磨いたのだ。
楽しませてもらおう!!』
!?
カグツチから巨大なプラーナが吹き荒れる。こ、これが上位神!!
一瞬の油断が死につながると確信できるプラーナだった。俺は即座に全員に対し3種バフを発動。さらに前に出て棍を構える。
カグツチは一瞬で間合いを詰めてきて、剣先になっている尾が振り下ろされる。
受けきって見せる!
棍にプラーナを全力で込める。障壁も複数生成し勢いを少しでも殺そうと試みるが一瞬で切り裂かれ意味をなさない。だが、尾剣をなんとか棍で受け止める。
止まったところをミコトが尻尾ごと蹴り飛ばしてくれる。そして手のひらから水の弾を3発発射。
おお!水を扱うことができるようになったのか。あれが修行の成果か?
身体が炎でできてるなら水は効果的かと思ったが、襲い来る水弾をカグツチは腕を刃に変え切り裂く。カグツチは全身を刃に変えられるのか?どこまでかは分からないが、全身を変えられると思っていた方が良さそうだ。
「ふうん、二人ともなかなか鍛えてきたみたいね。次は私の番よ!コッチー!動きを止めるわ!」
ニャー!
レベッカの両手にプラーナが集まったかと思うと、光る鎖が伸びていきカグツチを拘束。かなりの速度だ。初見だと回避は難しいだろう。
拘束した瞬間、カグツチの真上から雷が落ちる。更にコッチーがカグツチの後ろに出現。いつの間に移動した?
いや、目で追えないほどの速度で突進し雷爪で切り裂いたのか!?
二人の技に見惚れていると、ミコトはすでに動いていた。両手を伸ばし手のひらを合わせ収集していたかと思うと、手と手の間からレーザー?いや水なのか?とんでもなく高密度に圧縮されたウォータージェットカッターのようだ。あんな技まで!
俺も負けていられないな!コッチーのイカヅチと雷爪でひるみ、ミコトのウォータージェットで体の一部を貫かれたカグツチに向かって棍の先に発生させた刃を振り下ろす。頭から真っ二つにするつもりで振り下ろしたが、カグツチはとっさに身をよじり、斬り飛ばせたのは腕一本だった。
レベッカから強いプラーナが発せられたのを感知した俺は、着地と同時に大きく飛びのく。
風の玉がカグツチを包み、中で暴風と共に雷と石つぶてが暴れ舞う。
「ストームプリズン!」
技名まで考えたのか!英語なのは謎だが、無意味に恰好いいぞ!
さぁ、俺達4人の新技総攻撃、どの程度のダメージを与えた?
嵐が消え去ったあと、弱弱しく燃える炎に包まれ、ボロボロの体になったカグツチが現れる。
よし!かなりの大打撃を与えられたんじゃないだろうか!
『ククッ、素晴らしい…カァーーッカッカッ!』
ドウッという音ともにカグツチから発生した爆炎で吹き飛ばされる。防御すら間に合わない速度で飛んでくるとは。俺達は空中で態勢を整え着地。少しすすけた程度だったので、火力というより風の圧力が強かったのか。
爆風がすき去った後、その中心には最初に現れたと同じ姿のカグツチが存在していた。
『下級神程度なら本体でもあるいは勝負になるかもしれんな。よくぞここまで鍛え上げた。だが、まだまだこの程度で神は倒れんぞ!』
復活したカグツチから炎のブレスが吐き出される。
「レベッカ!」
俺とレベッカで障壁を作り出し炎を防ぐ。
「ミコト!水は使っちゃダメよ!爆発するわ!」
おっと、ミコトが水弾で炎に対抗しようとしたのか?炎は水をかければ消えそうだが、カグツチの炎は強すぎて消えるどころか爆発する?水蒸気爆発って言うんだっけ?
レベッカはさすがの視野の広さだな。
コッチーは俺達が炎を防ぎきると信じてプラーナを貯めている。さすがだな。絶対防ぎきるからデカいのを頼むぜ。
何とか炎を防ぎきる。俺とレベッカは肩で息をして、膝をつく。コッチーは炎が消えた瞬間に特大のイカヅチを放った。
ニ”ャーーーー!!
カグツチは回避が間に合わないと悟ったのか、とっさに身体の刃を地面に突き立て、イカヅチを受ける。
なんてやつだ。雷の一部を地面に流してダメージを少なくしている。
だが、ミコトもその隙を逃すつもりは無いようで、イカヅチが消えたところを見計らい、カグツチの懐に飛び込んでいた。
身体が炎と刃にもかかわらずひるまずに突きのラッシュ。いや手甲の方が固いのか。さすがはイワナガヒメ様の力が宿った手甲だ。カグツチの刃を砕きダメージを与えている。
流石にカグツチもミコトの連撃を嫌がったのか、体を高速回転させミコトのインファイトを阻害する。まるでミキサーだ。さすがにあの中に手を入れるのは無理だろう。
ミコトがいったん距離を取るために飛び退いたところで、カグツチから刃と火炎弾の雨が俺達に降り注いだ。
エンカウント:Lv測定不能 火之迦具土神
新技お披露目回でした。技名を叫ぶのってどう思いますか?厨二感があって個人的には好きなのですが、本作はよくある魔法が体系化されている世界ではないので基本的には技名を叫ばない仕様になっています。
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