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第9話 成長

パワーアップイベント

 ということで、3Fの呉服店に設置されている畳スペースでレベッカ先生の実験に付き合うことになった。


「で、試したいことって結局なんなの?」


「その前に、そもそもプラーナについて説明してなかったわよね。プラーナが何かを知ることから始めましょう。

 プラーナっていうのは、世界をながれているエネルギーのことで、この世界が生まれた時からあるそうよ。世界の中心から外に向かって流れ続けるエネルギー、どこまでもどこまでも先へ先へ進み続けるエネルギーよ。プラーナが通る道を「ナーガ・マルガ」なんて言うわね。

 プラーナはエネルギーそのものなんだけど、うまく使えばいろんなことができるわよ。風や炎のような物質に変化させたり、肉体を癒したり。肉体を強化したり、弱めたり、基本的に何でもできるくらいに思っていていいと思う。もちろん生み出した物質をそのまま維持するのはかなり工夫が必要だから、ここみたいな建物を作ったりするのは向いていないわ。プラーナで作った刃で石を切り裂いて、プラーナの力で積み上げる、なんてやり方がいいわね。


 ちなみに私たちは物質的な肉体を捨てて、プラーナそのものになってロカ・プラーナに引きこもったの。だからアクマは倒されると霧散してナーガ・マルガに戻っていくのよ。


 で、プラーナはニンゲンが知覚できないだけで、この世界を流れ続けているの。逆を言えば、プラーナを知覚できればいいのよ。いままで知覚できいなかったから慣れていないだけで、ちゃんとコツを掴めばちゃんとプラーナを使いこなせるはずだわ。」


「つまり、プラーナを感じて操れるようにするってこと?」


「その通りよ。ちなみにコッチーはすでにプラーナを使ってイカヅチを生み出しているわね。その割にはプラーナの吸収効率が悪いけど。まぁ変な魂の混ざり方をしているから、その辺が影響しているのかもね。」


「ん?待って、今なんて?コッチーの魂が混ざっている?」


「あら知らなかったの。体は一つだけど魂は2つ混ざったようになっているじゃない。ニンゲンって魂が見えないんだっけ?」


「見えないよ。何当たり前みたいに言ってんだよ。でも何でそんなことに…。」


「心当たりは無いようね。まぁコッチーはすでにアクマだから、そのうち進化して喋られるようになるんじゃない?種族が違うから知らないけど。」


「もう何が何だか…。コッチー、お前アクマだったのか?」


 ナァー?とコッチーが鳴く。コッチーにもよくわかっていないようだ。まぁアクマだろうが猫だろうがコッチーはコッチーだし、俺の大切な家族であることには変わりない。これからも一緒に強くなっていけるなら、それに越したことはないのだ。


「話を戻すわよ。まずはホオリとコッチーがプラーナを感じられるようになりましょう。感じ取れるようになれば使うこと自体はそこまで難しくないわ。もちろん自在に操れるようになるには長い鍛錬が必要だけどね。私だって、完璧に使いこなせるなんて、とてもじゃないけれど言えたものじゃないわ。ウチの女王様くらいになれば誰にでも自慢できるけどね。


 じゃあ、まずはプラーナを感じ取るところから始めるわよ。手を出しなさい。」


 俺はレベッカに向かって手を差し出す。レベッカは俺の手のひらに、自身の両手を乗せて集中し始めた。


「どう?何か感じる?」


「なんだろう、レベッカから俺の手に何かが流れているような感じがする。ちょっとくすぐったいな。」


「そう、それがプラーナよ。今感じているエネルギーは体全体にも流れているわ。私から流れてくるプラーナと同じようなものが、ホオリの体の中にも流れているのよ。それを感じてみて。」


 レベッカに言われるまで意識していなかったが、確かに自分の体にもレベッカから流れてくるようなエネルギーが感じられる。


「わかるような気がする。体中を何かが流れて回っている感じだ。」


「そう、それでいいわ。その流れを感じ続けていてね。そして、今度は私から流れてくるエネルギーを押し返すようにホオリのプラーナを私に向かって流してみて。逆流させてもいいし、流れをぐるっと一周させてもいいわ。」


 レベッカからの流れはとても心地が良かったので、流れは変えずに体の中を一周させてレベッカに返すようなイメージでプラーナを動かしてみる。不思議と、俺とレベッカのプラーナの流れが一つの輪になるような感覚があった。


「ふふっ、本当にいい子ね。ホオリからとっても気持ちがいいプラーナが流れてくるわよ。そんなに私のことが好きなのかしら?」


 レベッカが艶っぽい目で見てくる。ドキッっとした瞬間、プラーナの流れが乱れ霧散した。


「あははっ、初心ねぇ。でも私の教え方がいいのは当然だけど、ホオリもいい筋してるわ。今度は一人でプラーナの流れを感じて、体の中をぐるぐる回しなさい。流れの向きを変えたり、手や足、頭の先から放出するように動かしてみたり、手のひらの上で玉にしてみたり、玉にしたプラーナを光らせてみたり、いろんなイメージで操作してみなさい。

 その間に私はコッチーに教えているわ。」


 よし、からかわれたのはともかく、筋はいいらしいので、この調子でプラーナをうまく使えるように練習しよう。


「あら、コッチー、嫉妬しているの?そんな目で見ないでよ。大丈夫よ、あなたの大切なホオリを取りはしないわ。そんなことより、あなたももっとプラーナを使えるようにならないと、大切なホオリを守れなくなるわよ。まだまだ強いアクマはたくさんいるんだから。どうやら本格的にロカ・プラーナとアッシャーは重なってきているみたいよ。神と呼ばれた者たちも遠くない未来に現われ始めるわ。その時にあなたがホオリの隣にいられるよう、強くなりなさいな。」


 わかっているわよ、と言わんばかりにコッチーはレベッカを見やり、レベッカと手を合わせた。


「あなたは、もうすでにプラーナをイカヅチに変えることができる。体をめぐるプラーナをもっと感じて、流れを強く太くしなさい。そして、それができたら周囲にめぐるプラーナにも感覚を向けなさい。プラーナはどこにでもあるわ。あなたの中だけでなく、他の者たちの中に、空気の中に、世界中にプラーナが満ちていることを感じなさい。

 そして、いつかはそれらを取り込むことができるのだと知りなさい。あなたの不思議な魂はそれを可能にするわ。」


 その後、一時間ほどレベッカに教わったとおり、プラーナを感じ操作する練習を続け、俺は手のひらに乗るくらいの大きさの炎を10秒くらいは維持できるようになった。コッチーにいたっては電気の球をぐるぐる頭の上で回したり、飛ばして戻したりできていた。


 レベッカ先生のプラーナ講義、パネェっす!


 プラーナの扱い方の基本を学んだ俺たちは、次にアクマを倒した時に得られるプラーナの量をもっと多くできないか、アクマを狩って試すことにした。


 奈良さんに近場でアクマと戦い、プラーナの吸収効率を上げられないか試すことを伝え、モールの外に出る。スライムだとプラーナが少なすぎて分かりづらいので、餓鬼が出るところまで行くことにした。


 結果、アクマを倒した時にプラーナは自分たちに流れてくるもの、周囲に散り散りになるものがあることを感じることができた。散り散りになるものはどうにもならないが、自分たちに流れてくるものはすべて取り込むように意識すると、今までよりも多い量を取り込めるようになっているとレベッカが言ってくれた。


 ただし、それでもすべてを取り込むことが出来ているわけではなく、取り込めずに霧散しているプラーナもあるようだ。根本的にアッシャーに生きるものはプラーナを知覚できない存在であるため、100%吸収するには長い時間をかけて肉体を変化させていくか、何か補助装置のようなものを作るしかないのだろう。


 とはいえ、今までよりは確実に多くのプラーナを取り込めている実感があり、アクマを倒すごとに扱えるプラーナの量も多くなっていると感じられた。


 コッチーにいたっては、イカヅチを2連射したり、2本同時に放ったり、2倍の太さにしたり、完全にイカヅチ使いとして成長していた。太いイカヅチなら餓鬼を一撃で倒すこともできている。


 俺はコッチーのイカヅチでひるんだ奴や、炎の球でけん制して近づいてからバットで殴る泥臭い戦い方だ。いや、最後は物理が最強なはず…だよね?


「ホオリ!」


 レベッカの声で意識を戻す。その時目の前には炎の球が飛んできていた。とっさに左腕で頭をかばう。次の瞬間、俺は吹き飛ばされ、地面に転がる衝撃を感じたと同時に左腕に焼けるような熱さを感じた。


「な、なにが!?」


 炎が飛んできた先を見ると、玉ねぎ頭が炎の球を回りに纏わせ、フワフワ浮きながらこちらを見ている。


(もう一発来る!?)


 と次の瞬間、特大のイカズチが玉ねぎ頭を貫いていた。それを見た俺も体を起こし突撃、地面に落ちた玉ねぎ頭をゴルフのスイングのようにバットで殴る。


 玉ねぎ頭は青白い光となって霧散した。


 プラーナを少しでも多く吸収しようと意識を向けるが、腕の強い痛みで気がそれてしまった。


 コッチーが心配そうに俺を見上げている。今にも泣きそうな表情だ。


「ああ、コッチーありがとう。おかげで命拾いしたよ。腕は大丈夫、大丈夫だから…。」


「大丈夫なわけないでしょ!とりあえずここを離れるわよ!急ぎなさい!次が来るわ!!」


 レベッカに叱咤され、急ぎこの場を離れる。モール近くの安全圏まで何とか戻ると、レベッカが俺に近寄ってくる。


「ここまでくれば大丈夫ね。少し休みましょう。あと、腕を出しなさい。」


 レベッカは俺の腕に手を向け、プラーナを集中させた。緑色をした優しい光が俺の腕を包んでいく。焼けただれた腕がみるみる元に戻っていった。


「レベッカ…これは…?」


「回復の術よ。プラーナをうまく使えば癒しの力に変えることもできるわ。私は超!優秀だから癒しの力と衝撃の力を使えるピクシーなの!感謝しなさい!ひれ伏しなさい!!」


「ひれ伏さないけど…でもありがとう、痛みまで消えたよ。すごい力だな。プラーナってこんなこともできるんだね。」


「そうよ、傷をいやしたり、毒を中和したり、錯乱を抑えたりね。上位の神になると一瞬で全身をいやして体力まで回復させる力を使ったりもできるらしいわよ。まぁ消費するプラーナも多いからたくさんは使えないでしょうけどね。」


「その癒しの力って俺にも使えるかな?」


「そうね、使えるかもね。もう少し強くなってプラーナをたくさん抱えることができるようになったら教えてあげるわ。」


 レベッカの凄さを再発見し、俺たちはモールに帰還した。

エンカウント:Lv3 餓鬼 / Lv4 オンモラキ / Lv?? 化け猫

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