第69話 シルキークッキング
テレレッテッテッテッテ
テレレッテッテッテッテ
テレレッテッテッテッテッテッテッテッテッッッテ!
「しょ、勝負というと…。」
『フフッ、もちろん武の力という訳ではありません。戦闘力ではあなた方が明らかに上でしょう。私は戦闘向きではないですし。
そして私は館の守り人であり、家政婦でもあります。スコーン、おいしかったでしょう?あの味を再現できるようになってもらいます!』
料理対決…的な?料理得意な人なんていたんだっけ?
「はい!わたしやります!レベッカも手伝って!スイーツ好き女子としては逃げるわけにはいかないよね!」
「はぁ、私は食べる方専門でもいいんだけど…。まぁそこで情けない顔をしてみている男共に任せるより、私達でやった方が良さそうなのは理解したわ。」
コッチーもニャーニャーと気合を入れているようだ。コッチーもやるの?
「コッチーもやる気だね!よし、3人でシルキーさんにイギリス伝統的なスコーンの焼き方を教えてもらおう!」
「ま、悪くないわね。自分たちで作れるなら、また食べられるってことだし。よし!やる気出てきたわ!」
「ホーリーはスイーツ男子ではないでござるか?イマドキの若者は台所に立つものでは?」
「いやいや、うちの台所は母さんの聖域でしたから。一応、週に1回は母さんを休ませる日ってことで父さんと俺でご飯作ってましたけど、お菓子作りはしたことないですよ。」
「よし、拙者らは彼女らの奮闘を見守るでござる!」
妙にキリッと福島さんが言うけど、軽くイラつくな、この顔…でも言っていることには賛成だ。
『話はまとまったようですね。材料は用意してあります。この先に少し進んだところにお庭が素敵なレストランがあります。そちらのキッチンをお借りしてスコーンを作りましょう。』
材料は、強力粉・薄力粉・ベーキングパウダー・グラニュー糖・無塩バター・生クリーム・
牛乳・卵
卵は艶出し用なのでなくても良いですよとはシルキーの言。
「ふむふむ、粉は振るってからまぜてと…」
女性陣がクッキングを始めたので、俺は福島さんと二人、付近の散策を行う。
シルキーの言う通り、レストランから見える庭は異国情緒を感じられる。また、同じ敷地内には広い草原があり、観光客が一休みできるようなスペースになっていた。こういう無料のスペースがあると観光客は助かるんだよな。
そう言えば、昔、父さんが連れて行ってくれた観光地で子供の俺たちがつかれた時に休むスペースがそこらにあった場所、どこだったかな。父さんも母さんも子供はすぐ疲れるから休む場所があると助かるね、なんて言っていたような気がする。
福島さんとシルキーが力を貸してくれるというのは、また何か力の結晶のようなものが貰えるのかなとか、もしかしたらトラータ解放戦線が使っていたダイモーンのように仲間として加わってくれるのかも?とか、そんな話をしながら散歩してみた。
福島さんが宮城さんから聞いた話によると、アクマを使役して戦うこと自体はできるようになってきている話がチラホラあるようだが、弱らせて無理やり捕まえると関係性がよろしくないらしく、下手にプラーナを与えて強くすると、制御できなくなる可能性が高いと言われているそうだ。
まぁそりゃあ無理やり捕まえられて戦わせられたら誰だっていやに決まっている。鹿児島のカイトさんや出雲のヤチホさんが連れていたアクマはそんな感じじゃなかったな。
「あれは特殊な方法で仲間になったらしいでござるよ。ニッショウ殿のウサギは神から遣わされたと言われているしな。」
とは福島さんの言。Xitterでは結構有名な話らしく、カイトさんは生太刀という剣と白いウサギを大国主様から借りて戦っているらしい。ベリアルに攻撃された時にウサギをかばって大けがをしていたから、とても大切にしているのだろうと思う。
ヤチホさんと一緒にいたオオカミはマカミという昔から言い伝えがあるオオカミの神様の一種だそうだ。大口真神と呼ばれ、神格化されたオオカミの伝説が色んな地域で言い伝えられているそうな。ヤチホさんの家は出雲大社の宮司さんで由緒正しい家柄なので、もしかしたら神様に近い生活をしていたのかな。
「レベッカみたいに会話で仲間になったアクマはいないんですか?」
「そうだなぁ、今のところXitterでは話に上がっていないようだな。神を介して仲間になった例はあるようだが、アクマは基本的に人間を見ると襲ってくるので、よほど実力差が無ければ話しかけるのもリスクが高すぎるし、命がかかった戦いではそこまで余裕はないと思うでござるよ。」
「会話自体が出来るアクマもそんなに多くないですしね。人型でも問答無用で襲ってくる奴も多いし。あ、でもマーメイドのお姉さんは全然好戦的じゃなかったような…」
「おお人魚!マーメイドの目撃情報は全くないでござるよ。ホーリーは運がいいでござるよなぁ。」
「そう言えば、マーメイドのお姉さんは足を生やして理玖を移動するためにプラーナが欲しいとか言ってましたね。普通に服を着ていたら人間と見分けがつかない気もしますよ。」
「ん?それはつまり…」
「ええ、人間の中にアクマが混ざっていても見た目だけでは気付かないかもしれないですね…」
「会話ができるアクマはすでに人間の中に混ざって生活している可能性があるということでござるか…。良いことなのか悪いことなのか…」
「人間に危害を加えなければ良いのかもしれないですが…レベッカを見ていると考えていることとかは人間と変わらない感じですし。」
「隠し事もあるようでござるがなぁ。害意があるようには見えぬし、プラーナ操作など貢献の方が大きすぎて、レベッカ殿は少し判断に困るが…」
そんな話をしていたら、結構な時間がたっていたので、レストランに戻ることにした。
「あ!帰ってきたー!もうすぐ焼きあがるから、焼き立てを味見して、シルキーさんの採点だよ!」
ちょうどいいくらいの時間だったようだ。遅れたらかなり怒られただろうから、危なかったかな?
バターのいい香りがするスコーンが焼き上がり、シルキーが試食。さあどうだ、ミコトなんかは結構緊張している様子だ。
『ふぅ、…いい出来ですね。この味とレシピ、忘れないでください。材料とレシピは書いたメモをお渡しします。できれば長く受け継いでくださいね。』
「わかりました!シルキー直伝のスコーンとしてインフルエンサーのわたしが責任をもって広めていきます!」
ミコトは嬉しそうだな。女子高生トレーニーとしては結構注目されているしフォロアーも少なくない。そんな彼女が妖精から教わったスコーンなんて投稿したらバズるかもしれないな。
「で、これで満足なわけ?どういった形で力を貸してくれるの?」
『私の力はコッチーに必要になります。私自身の存在力が彼女の新たな道を開くのでしょう。私のことは気にせず、その神が作りし道具をお使いなさいまし。』
シルキーはそう言うと、光になって俺のスマホに吸い込まれていった。
ピコン!
【妖精シルキーが仲間になりました。】
アクマデバイスから通知が送られてきた。
これってつまり…
勝負じゃなくて仲良しクッキングになってしまいました。
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