第7話 物質界と神々の世界
いろいろ解説回
ナイン&Jモールに戻ったが、いきなりピクシーを見せると絶対に大変なことになることはわかっていた。まずは信頼できる人に相談するのが一番良い。
一旦、レベッカには胸ポケットに隠れていてもらい、奈良さんに偵察の報告がてら相談することにした。
「奈良さん、偵察についての報告と相談があるので、二人きりで話せるところはありますか?できれば他の人に話を聞かれないところがいいんですが…。」
「おかえり、高屋君。無事に帰ってきてくれてうれしいよ。君の報告を受けて、明日から偵察チームに活動を開始してもらう予定だ。詳しく話を聞こうじゃないか。」
奈良さんは、従業員の事務所内にある接客部屋に案内してくれる。防音が聞いていて、外に声が漏れないようにしているらしい。ショッピングモールって内密な話をすることがあるのだろうか?
「まずはお疲れ様。人払いを希望とのことだったので、飲み物はペットボトルのお茶で我慢してくれ。コーラの方がよかったかな?」
「いえ、お茶で大丈夫です。それでまずは周囲状況から話しますね。
30分では小学校までたどり着けませんでした。かなり怪物が増えていて、できるだけ避けながら進むと全然距離を稼げないです。やむを得ず餓鬼を2体倒しました。
新しい怪物とは遭遇しませんでしたが、コンビニが崩れているところがあって、たぶん見たことがない力の強い奴がいるんじゃないかと思います。あとは、モールから離れるほど怪物が増えている感じでした。」
「なるほどなぁ。人には出会わなかったかい?」
「はい、人は一人もいなかったです。で、相談なのですが…」
「ん?ずいぶん言い淀むな。そんなにひどいことがあったのか?」
「いや、まぁある意味ひどい目にあったんですけど、まずは奈良さんだけの胸にとどめておいてほしいんです。約束してもらえますか?」
「むむ、、まぁ君には世話になっているし、どうしても全員の不利益にならない限り、私の胸にとどめよう。」
「ありがとうございます。実はですね…。こんなのを拾いまして…拾ったというか付いてきてしまったんです。」
胸ポケットからレベッカを出す。さすがの奈良さんも席を立って驚愕の表情を浮かべている。
「ま、待ってください。危険はないんです。話が通じるので。
これ?はピクシーのレベッカ。コンビニに閉じ込められていて、助けたら付いてきてしまいました。」
「これって何よ。相変わらずホオリは失礼な男ね。アクマといいなさい。あんたらがニンゲンなら私たちはアクマよ。
アッシャーに普遍的にいる人がニンゲン、ロカ・プラーナに普遍的にいる人がアクマよ。
なーんか、雰囲気的にいろいろと聞きたいんでしょ。よかったわね、私は知識も豊富な空気を読めるレディなのよ。感謝しなさい!ひれ伏しなさい!」
(あ、さすがの奈良さんも気圧されている。キャラ濃いもんなーレベッカ。)
「お、お、おっと、これは失礼したレディ。レベッカさんだったね。私は奈良と申すものだ。このモールに避難している人々のリーダー的な役割を担わせてもらっている。
レベッカさんはいろいろと詳しいようなので、我々の相談役のような役職についてもらえると嬉しい。対価はいかがしようか?」
「あらー筋肉ダルマの割にはわかっているじゃない。イイ男ねぇ。対価は簡単よ!あの甘い食べ物をたくさん頂戴!」
「たぶん、チョコとかそういったお菓子のことだと思います。コンビニでお菓子を食い漁っていたら、ほかの怪物が建物を崩してしまって閉じ込められてたようなんですよ。」
「なるほど、それは災難だったね。しかし、あなたは幸いだ。ここにはたくさんのお菓子がある!あなたに支払えるものは潤沢だ!」
「いいわね!いいわねーー!俄然やる気が出てきたわよー!
さぁ何が聞きたいの?なーんでも聞いて頂戴!このレベッカ様が教えてあげるわよー!!ほーほっほ!ゲホゲホ…」
(こいつ、本当に大丈夫か?)
その後、レベッカは本当に何でも答えてくれた。
まず、怪物たちはアクマと呼ばれる存在で、ロカ・プラーナという世界から来たらしい。こちらの世界の言葉にすると「神々の世界」とのこと。反対に、こちらの世界はアッシャーで「物質世界」となる。
ロカ・プラーナとアッシャーは46億年くらい前までは同じ世界だった。だが、約46億年前に外宇宙なのか別の次元かは定かではないが、強大な邪神が配下を率いて飛来し、神々と交戦したらしい。南太平洋のニュージーランドと南米大陸の中間くらいに巨大な島のような石造都市を建設されるなど、一部分において攻め込まれたりはしたものの、何とか石造都市ごと海底に封印することができたらしい。
だが、神々はもとより地球自体のダメージも大きく、神々は位相の違う世界で眠りにつき、地球は自己回復の期間に入らざるを得なくなったそうだ。
現代において、地球が46億年前に誕生したと考えられているのは、この自己回復が始まったあたりなのだろう。
とんでもないスケールの話が出てきた。
まぁピクシーたちはそれほど強い種族ではないそうで、邪神との戦いには後方支援のみで、前線には出ていないとのこと。彼女たちの王と女王は最前線で戦っていたため、伝説として話自体は語り継がれているそうな。レベッカ自身は邪神とその配下たちがどのくらいヤバイのかは見ていないらしい。しかし、太古の地球の神々が総出で戦ってようやく封印したくらいだから尋常ではない存在であることは確かなようだ。
今回、彼女たちが俺たちの世界 アッシャーにやってきたのは何故だがわかっておらず、突然に世界がつながったと言っていた。アッシャーの日付で2040年3月23日金曜日、レベッカはせいしんがどうとかブツブツ言っていたが、確証はないので情報が増えたら説明できるかもと言って、それ以上は教えてくれなかった。
あと、レベッカはコンビニスイーツに夢中になっていたので人を襲うことはなかったが、他の仲間たちは正気を失っているものが多く、人を襲うものもいるだろうとのこと。突然、アッシャーにつながったため眠りを無理やり起こされたことや、ロカ・プラーナとは異なる力の流れによって酔っているような状態ではないかと言っていた。
なお、アクマたちは物理的な肉体を持っておらず、プラーナという力の塊でできているらしい。また、不滅の存在らしく、倒したとしても世界をめぐるプラーナの中でよみがえるので、もしピクシーの同族と戦って倒してしまっても、レベッカ的には特に気にならないそうだ。
そして、非常に重要なことなのだが、本来、アッシャーにしか存在できない人間や動物などはプラーナを知覚できないし使うこともできない。だが、俺とコッチーはアクマを倒すと微弱ながらプラーナを吸収しているらしい。もちろん吸収効率は非常に悪く、レベッカがアクマを倒して得られるプラーナと、俺やコッチーが得られるプラーナは量が全然違うらしい。10分の1くらいしか得られていないのではないかとレベッカは言う。
俺が奈良さんの腕力に近づいている理由はプラーナを吸収していたからだと思う。
俺とコッチーだけが特殊なのか、他にもプラーナを吸収できる人がいるのかは現在不明。そのため、偵察隊の人たちに俺がついて行ってスライムを倒してみて検証してみようかという話になった。明日からさっそく検証開始だ。
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奈良さんとレベッカは便利キャラ