第60話 神身一体
戦闘終了
これだけの力を結集しても勝てない相手…人間にどうにかできる存在じゃない…魔王…神に匹敵する力…
そうか、神様ならば勝てるかもしれないのか。俺が最も信頼する神。あの豪快で力に満ち溢れた存在。大いなる山の神。すべての大地は山につながっている…
「大いなる山につながる大地よ、岩よ、草木よ。我、この身と魂を賭して願う。草木の神、岩の神、そして大いなる山々の神よ。高屋 穂織の身に降りて、そなたらのいとし子に害成す脅威を調伏せしめん。イシュヴァラ・マム・イッチャム・プラヤチャトゥ…」
大地から、大地にひしめく岩から、大地に根を張る草木から…膨大なプラーナが流れ込んでくる。
同時にコノハナサクヤ様、イワナガヒメ様、オオヤマツミ様の意思を感じる。コノハナサクヤ様からは俺のことを心配する気持ちが、イワナガヒメ様からは決断した俺の背中を押すような気持ちを、オオヤマツミ様からは共に戦えることを喜んでくれるような気持ちを。
『き、貴様ぁぁ!何を、何をしているーーー!』
神々の思いを胸に、俺に集まったプラーナが体の中で爆発し、スパークする。
俺を中心にまばゆい光が放たれ、一帯を覆う。
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~~Side 玉乃井 美琴
優しい力が流れ込んでくる。イワナガヒメ様の、コノハナサクヤ様のそして誰かの大きな背中が…お父さん?…
ハッと目を覚ますと、沢山の人が手当てを受けていた。太子交差点から少し南に下ったところにあるホテルのロビーのようだ。
何かに驚いている女性に声を掛ける。
「すみません、ここは?戦いはどうなったんでしょうか?」
「あ、目が覚めたんですか?戦いは分かりません。でも、今一瞬光の波が通り過ぎたかと思ったら、怪我をしていた皆さんの傷が回復して…。」
「コッチーやレベッカ…、尻尾が二本ある猫と30cmくらいの妖精さんはどこにいるかご存じですか?」
「ミコト!」
そう聞いているうちにレベッカとコッチーがこちらに飛んできた。
「コッチー!レベッカ!無事だったんだね!」
コッチーがニャーニャーと焦ったような声を出している。何か嫌なことが起こっているの?
「ミコト!話している時間はないわ!急いでホオリのところに戻るわよ!
もう遅いかもしれないけど…」
レベッカがボソッと何かを言ったが聞き取れなかった。とりあえずホオリくんのところに向かわないとなんだね!
「分かった!急いでいこう!ホオリくんを助けなきゃ!!」
わたし達は看病してくれていた女性にお礼を言って、ホテルを飛び出し、太子交差点に大急ぎで向かう。
ホオリくんがいるであろう方向から今まで感じたことがないような大きなプラーナを感じる。ベリアルの本気を見たときに感じた絶望的な力より更に巨大だけど何故か懐かしいような、でも同時にとても不安になるような力。
コッチーとレベッカも同じような感覚なのか、難しそうな顔をしているように見えた。特にレベッカは今まで見たことがないような、そう、悲愴という言葉が一番合うような、そんなつらそうな顔。この先で何が起きているのか感じているの?
太子交差点まで後すぐという所で、巨大な力がぶつかり合っているような衝撃をたびたび感じるようになる。
「レベッカ…これ…近づけないんじゃ…」
「あの!バカ!これじゃあ!!もう、何考えてんのよ!
私が全力で障壁を張るわ!コッチーとミコトは私の後ろに。あのバカを絶対に助けるわよ!」
レベッカの障壁で、戦いの余波は防げているが、ホオリくんとベリアルの戦いが見えたとき、誰からともなく足を止めてしまった。
それは、そう、すでに人間の戦いではなかったから…。
黒い炎が体全体を覆って、オーラのようになりながら、剣を振るい、炎を飛ばし、攻撃するベリアル。その一撃一撃がわたし達にとっては必殺の威力があることはすぐにわかった。
それに相対するのは、神衣をまとって光のオーラを全身から放ちながら、岩の剣のようなものを振るって戦う男性。少しだけホオリくんの面影があるような気がする。そして同時にとても懐かしいような不思議な感じを覚えた。
ベリアルの攻撃を何の脅威にも感じていないようにいなし、弾き、叩き落す。そして荒々しい剣筋でベリアルに傷を負わせる。
ベリアルは焦ったように攻撃を繰り出すが、すべてが無為に帰していた。そして、突然地面から岩の槍が突き出し、ベリアルを貫く。貫いた岩からは木の枝が生えてきてベリアルを完全に拘束した。
『ここまで、ここまで来て!貴様!貴様!古の神がなぜ邪魔をする!貴様らの時代は終わったはず!ようやく外神がいなくなって!儂らが!儂らこそがあぁぁぁ!』
叫ぶベリアルに何も感じることなく、ホオリくんのような神様は剣を振り下ろし、ベリアルを切り裂いた。
切り裂かれた体から黒い炎を噴き出し、べリアルは光になって消えていく。
ホオリくんの体から女性のような形の何かがすっと現れる。あれ…コノハナサクヤ様?
『さ迷えし魂よ。そなたはもう家に帰る時だ。我、大地に根を張る草木の姫なり。そなたに光の道を示さん。さぁお帰り、また来世で相まみえよう。シャウチャ ジャーヌ…』
レベッカが使うのと同じ浄化の術がベリアルだったものに降り注ぐ。一瞬、壮年の男性が現れ、そして光になって消えていった。
コノハナサクヤ様はこちらを見て、悲しそうな顔をしながら頭を下げ消えていく。
ホオリくんの体からも光が大地に帰っていき、元のホオリくんに戻ったところで、ホオリくんはその場で倒れてしまった。
「ホオリくん!」
わたしとコッチーとレベッカがホオリくんに駆け寄る。
「レベッカ!レベッカ!ホオリくんを回復して!お願い!」
「ミコト…これは…怪我じゃないわ…魂の…」
コッチーが必死にホオリくんを舐めて、体をこすりつけている。ホオリくんをこの世にとどめようとしているかのようだった。
「これはもうだめじゃっど。神ば体に降ろしたら、人間じゃ耐えきれんど。」
金髪の男性が声を掛けてくる。
「何で!何でそんなこと分かるの!?ホオリくんはこんなところでいなくなったりしない!」
「駄目なんじゃ。オレは前にも同じ光景を見たことがあっど。」
この人は何を言っているの?ホオリくんは凄いんだ!誰よりも早くプラーナを使いこなせるようになって。たくさんの人を助けて、どんどん人が生活できる場所を増やしていった英雄なんだ!
神様とだって誰よりも仲良くしてて、神様だってホオリくんを頼りにしてた。神様がホオリくんを連れて行くなんて、絶対にありえない!
「ミコト…そいつの言うことは…」
ピコン!
【プラーナの結晶(土)が吸収されました。】
「え?なに?…アクマデバイス?」
「この力…オオヤマツミの…!ミコト!ホオリは助かるかもしれない!とりあえず住吉大社にホオリを運びましょう!」
「うん!」
エンカウント:LvLv60 魔王 ベリアル(分霊)
スーパーなベジタブルなアレのような感じです。ミコトさんのヒロイン力が増加中。
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