第59話 真なる魔王
戦闘中
レベッカが最後に届けてくれた回復で何とか立ち上がり棍を構える。
『ほう、まだ立てるとはな。小さな妖精女王がいるとは言え、本当に貴様は人間か?
まぁよい、どれだけ立ち上がろうと、ここまでだ。人間では儂には勝てぬ。』
ベリアルの手に獄炎が灯る。あれは防げない…どうすれば…。
ベリアルが手を振り上げる。これから獄炎が投げつけられる。妙にその動きがゆっくりに見えた。
「神剣!分断撃ぃぃぃ!」
突然現れた、光る剣を振るい金髪のツンツン頭の男性がベリアルの腕を切り飛ばした。
続けて高回転するバレットが3発、ベリアルの胸に着弾。ひるむベリアルの首めがけてオオカミが噛みつこうと飛びかかる。
だが、ベリアルはとっさに身体をひねってオオカミの牙は回避した。
俺の前に立つ、二人の男性。
「チームのみなさんは、高屋くんのチームメンバーば連れて退避してごせ。ここは僕ら三人で対処するけん。」
マッシュヘアに眼鏡、整った顔立ち、細身の体に袴をはき、手に薙刀を持った青年が言う。
金髪の方は俺の方を振りむき、何か光るキューブのようなものを差し出した。
「とんでもなか化け物と戦っちょるなぁ。でもまぁオレ達がやっしかなかど。これはオオヤマツミからお前宛に預かっちきたもんじゃ。受け取りな。」
光るキューブは俺の中に吸い込まれていく。
ピコン!
【山神 オオヤマツミの意思を手に入れ、吸収しました。】
キューブが吸い込まれた後、体が燃えるように熱い。力とオオヤマツミ様の人に対する愛情、守ろうとする意志が流れ込んでくる。
俺も同じ気持ちだとはっきり自覚した時、体の熱さは消え、全身に力がみなぎってきた。
「とりあえず怪我は大丈夫そうじゃな。」
「はい!ありがとうございます。これでまだ戦えます!」
俺は改めて棍を構え、ベリアルを睨む。
ベリアルはオオカミを退け、さらには切り飛ばされたはずの腕が再生していた。
「ぶった切ったはずじゃったどな。また生えてきたんけ?」
金髪の青年が、嫌そうにつぶやく。
「さて、ケリばつけますよ。」
眼鏡の青年が俺たちに声を掛ける。
その声に従い、真っ白いウサギがオオカミを含めた俺たち全員に力と守りと素早さを大きく上昇させる術をかける。
こんなに身体能力が上がる術は初めてだ。俺が使う術を3回かけたくらいの効果がありそう。
「これはすごい!では行きます!」
俺はベリアルに向かって駆け出す。左隣を金髪の男性が走る。右にはオオカミが並走していた。
眼鏡の男性は後中衛かな?バレットの精度・威力共に俺をはるかに超える物だったし。ウサギは完全にサポート係のようだ。
「ベリアル!お前はここで必ず倒す!!」
『雑魚が増えたところでぇぇ!!』
ベリアルは獄炎を剣の形に変え、俺たちを迎え撃つ。こいつは槍だけでなく、剣の技量も高い。
俺たち二人とオオカミ一匹の波状攻撃を受け止め、捌き、時には攻撃し、隙間に飛んでくるバレットを叩き落す。挙句に時々小さな火弾を眼鏡の青年やウサギに向かって飛ばしている。
何と言うプラーナの制御だ。レベッカが下級神クラスと言っていたが、これが神の力、技量なのか。
「クソ!どうなってん、崩せんど!雪丸!!」
ウサギから更なるバフが飛んでくる。身体能力は最大まで上がっているはず。しかしベリアルは俺たちの力を上回っている。
『アオーーーン!』
オオカミが遠吠えをあげ、光の波動が発せられた。あれは大僧正が使っていた破邪の力か?
『グウウゥゥ!不快な犬め!!』
今までの攻撃とは違い、明らかに嫌がるベリアル。悪魔だから破邪の力には弱いのか?
だが、このチャンスを逃す手はない。金髪の青年と合わせてラッシュをかける。眼鏡の青年のバレットも密度を上げる。あのバレット、直線で飛んでくるだけでなく、大きく曲がってベリアルの背中にも着弾している。あんな変態軌道まで出来るのか!?
そして、何となく、金髪の青年が大きな一撃を入れたがっているように感じた。
俺はとっさに足をトトンと踏み鳴らし、大地の力を発動。ベリアルの右足元を砂のように変えて足を取る。砂に足が少し埋まった瞬間にもう一度足を踏み鳴らし固める。
オオヤマツミ様の力を更にもらった今、手を付けなくても術が使えるようになっていた。
ベリアルの動きが一瞬止まる。その隙を逃さずに金髪の青年は大上段斬りを放った。
「神剣!分断撃ぃぃぃ!」
完全に袈裟斬りが入ったように見えた瞬間、ベリアルの体から獄炎が噴き出し、金髪の青年を吹き飛ばした。
それだけでなく、俺やオオカミのところまで炎が迫る。
俺はオオカミと後ろの眼鏡の青年やウサギを守る位置に移動し、全力で防壁を作る。
先ほどは壁ごと炎に砕かれたが、今回は防ぎきる。
後ろから眼鏡の青年が走ってきて、金髪の青年を回復。ウサギは回復術の効果も高められるのか、何やら緑色の光を二人の青年に放っていた。
追撃をさせぬようオオカミが前に出る。俺もそれに続き、棍を突きいれる。
何撃か打ち合ううちに、金髪の青年が戻ってきて剣を振るう。もう回復したのか。あの二人の回復はレベッカ並の力があるようだ。
何度か金髪の青年の剣劇がベリアルに傷をつけるが、すぐに癒えてしまう。オオカミの破邪の力もベリアルの気を逸らすことが出来るが決定打にはならない。
俺の棍の打撃も確実に通ってはいるが、ベリアルの動きを阻害する程度にしかなっていない。土槍も何度か放っているが、ベリアルの肉体を貫くことが出来ずにいた。
さすがに俺たちの体力も落ちてきて、動きにも支障がでる。ウサギのプラーナも切れかけているのか、バフが切れそうだが追加は飛んでこない。
ベリアルが炎の剣を横なぎに払い、俺達を退かせると、獄炎の火球を3連射して眼鏡の青年とウサギを狙った。
一撃は眼鏡の青年が薙刀で切り払ったが、次の火球を障壁で防御したところ威力に負けて吹き飛ばされた。
最後の一撃がウサギに直撃しようとする。
「雪丸――――!」
そのとき、いつの間にか移動していた金髪の青年が自分の体を使ってウサギを守った。
炎に焼かれた男性とウサギが動かなくなる。
一瞬の出来事に動きが止まったオオカミをベリアルが切り裂く。オオカミは光になって眼鏡の男性の方に吸い込まれていった。
アクマデバイスに戻ってしまったのか。
その、眼鏡の男性も炎に焼かれた様子はなかったが、吹き飛ばされた先で倒れていた。
『なかなか手こずらせてくれたが、今度こそ本当に終わりだな。良く戦ったぞ英雄小僧。』
ベリアルが満足そうな顔で俺の方を向いた。
エンカウント:Lv60 魔王 ベリアル(分霊)
戦闘が長引いてしまっております(´・ω・`)
方言はCopilotくんが担当しております
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