第58話 燃える大阪(後編)
どんどん決着をつけていきます
三重さんは長崎病院にいた自衛官の生き残りです
~~Side 三重さん
秋田さんの方を見ると、向こうもかなり優勢の様子。例の集中砲火で一気に決める気のようだ。
こちらの相手、幹部の林は老若男女様々な顔が7~8つはついており、大きな本を持った悪魔に姿を変えた。
接近戦を仕掛けると、上手く衝撃波を放ち、こちらの動きを阻害するだけでなく、自身を大きく移動させることにも使っている。
それでも波状攻撃には対処しきれないらしく、少しずつダメージが蓄積してきたのか、かなり動きが鈍くなっている。表情も常に笑っている顔一つ以外は焦りの表情を浮かべている。
こちらも一気に勝負を決めてしまおう。
チームメンバーがプラーナを雷に変えてダンタリアンを狙う。コッチーのような強力な攻撃ではないが、ダンタリアンは雷をかなり嫌がっていて、全力で防ごうとしてくる。
その隙を上手く使ってバレット一斉射撃といこう。
メンバーに合図を送り、雷攻撃を行う。近接組はその間に距離を取り、部隊全員でバレットを放つ。
秋田さんの部隊も同じようにヒトデ型の悪魔目がけてバレットを放つところだった。
『ククク、パラバルターン』
ダンタリアンが何かをつぶやいたのが聞こえたと思った瞬間、放ったはずのバレットが完全にこちらに跳ね返ってきた。あまりに一瞬のことで誰一人躱すことも防御することもできず、幹部と戦闘中の全員が吹き飛ばされていた。
『ククク、奥の手は簡単に切らないから奥の手なのですよ。』
もう誰も動けなかった。このままやられてしまうのか。あの時、駐屯地で何もできなかったと同じように…。
口惜しさと情けなさで涙がこぼれる。せっかく生かしてもらった命が無駄になってしまう絶望に身を振るわせようとした時、ダンタリアンに灰色の塊が物凄いスピードでぶつかり、ダンタリアンが跳ね飛ばされた。
『ごっふぅ!!ガガ、な、なにが…』
「お待たせしてしまいまして、すまんでした。ここからは僕らに任せてごせ。」
薙刀のような武器を持った線の細い青年が、あまり聞かない方言で声を掛けてきた。
そしてこちらが返事をする前に、ダンタリアンに向かって走っていく。ダンタリアンは先ほど一瞬見えた灰色の塊に攻撃されているようだ。
速すぎて良く見えないが、大型の犬のような形をしているような気がする。
「治療は私たちがいたします。このまま横になっていてください。」
優しい力に包まれて、傷が癒えていくのを感じる。声の方を見ると穏やかそうな顔をした20代後半くらいの女性が回復の術を使ってくれていた。
他のメンバーたちにも2人ほどの男女が回復をして回ってくれている。
どこから来たかは分からないが、味方らしい。そして、ダンタリアンと戦う青年だが、立ち回りが非常に上手かった。灰色の大型犬と共にダンタリアンが攻撃を行う隙が無いほど飽和的に攻めており、ダンタリアンはなす術もなく大型犬が足に噛みつき引き倒すと、青年が薙刀でとどめを刺した。
光になって消えゆくダンタリアンに青年は懐から取り出した光る砂か塩のようなものをまき、手を合わせて祈る。大型犬がアオーーーンと鳴くと、ダンタリアンだった光は林の姿に戻り、そしてまた光になって霧散していった。
~~Side 高屋 穂織
秋田さん、三重さんの状況を確認すると、バレット一斉射撃が反射されたようだ。あんな術があるのか。完全にすべての攻撃は跳ね返されていた。とんでもない奥の手を持っていた。
体が無意識に秋田さんたちを助けに行こうと動いたところで、ヒトデと多頭の悪魔に攻撃を仕掛ける二人の男性が見えた。
そして、他にも傷ついた人たちを救助する人がいるようだ。男性2人の強さはわからないが、ウサギと大型犬、いやオオカミかな?の相棒もいるようだし、俺たちはベリアルに集中だ。
こいつだって悪魔の大ボスだからどんな奥の手を持っているか分からない。押しているからと言って油断せずに行こう。
「向こうは大丈夫そうだ。俺たちも油断せず、確実に倒そう。」
ニャー!コッチーの力強い声が聞こえる。
『クックック、こちらの想定以上の戦力だったか。人間ごときと侮ったか。だが、これで終わりだと思うなよ。ハァァッ!!』
ベリアルから大きなプラーナの高まりを感じ、その後すぐに大きな破壊の力が込められたプラーナの弾とそれを追いかけるように放たれた黒い炎が飛ぶ。
とっさに防御態勢を取ろうとしたが、弾と炎は俺たちの方ではなく、交差点の建物がある三方向に飛んでいく。
「ま、マズイわ!祓いの陣が!!」
レベッカが何かを察知し叫ぶ。
なんだって、ベリアルが攻撃した先に祓いの陣を作り出す三神の力とそれを守る人がいるって言うのか!?
俺たちは三方向をそれぞれ向くが時すでに遅く、プラーナ弾が建物を破壊し、神の力を感じる光がむき出しになったかと思うと、光に向かって黒い炎が直撃した。
バギィン!と大きな音と共に神の光が弾け、その後に祓いの陣がサアッと消えて行ってしまった。
『クックック、ハッハッハ、ハーッハッハッハ!!忌々しい神々の鎖は切れたぞ!これが真なる魔王の力だぁっ!!』
ベリアルの咆哮と共に暴力的なプラーナが放たれる。一瞬、俺たちの足がすくんだ。
「これは…恐怖…?」
「う、うそでしょ…こんなの…」
「マズイわ、マズイわよ。コイツ、どれだけアクマを喰ってきたのよ。下級神レベルに届いているんじゃ…」
コッチーも2本のしっぽを後ろ足にくるりと巻き込み、今にもうずくまりそうだ。
『ガーーハッハッハッハ!!これぞ真の獄炎じゃーー!』
大笑いと共にベリアルが先ほど三神の力を破壊したより密度が濃い黒い炎を放ってきた。
俺は歯を食いしばり恐怖を押さえつける。
「負けるかぁーー!大!岩山!壁ぃぃ!!」
今まで最大の岩の壁を出現させ、獄炎に対抗する。獄炎が岩にぶつかった途端、ゴゴゴ!と音を立て岩が押され、さらにはドロリと岩が溶けたと感じたとき、炎と岩が爆裂した。
その余波を受けて俺たちは散々に吹き飛ばされる。操鬼闘法は保たれていたが、熱波と岩のかけらに打ち据えられ、誰もが動くことが出来ないほどのダメージを負ってしまった。
「ぐ…ま、まだ…負けるわけには…」
「アンタだけでも…」
レベッカから癒しの力が伸びてくる。少しだけ力が戻った気がした。俺は何とか立ち上がると、震える足を押さえながら、棍を構えた。
エンカウント:Lv47 ダンタリアン(分霊)
出雲弁もCopilotくんが変換
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