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プラーナの導く先へ ~崩壊した世界でネコとピクシーを仲間に、俺は英雄として生きていく~  作者: よろず屋


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第48話 その夜に

ある意味本編は後半

文字数が通常の1.5倍でお送りします

「なんとか勝てたぁ!みんなお疲れさま!!」


 ミコトが元気な声を上げる。いや、ホント元気だよね、キミは。


『ありがとう、そなたらのおかげで大蛇を葬ることが出来た。完全体ではないとは言え、骨を使って受肉した神を倒すことができるとはな。』


「いえ、タケルさんがいなければ倒すことはできなかったですよ。とどめだってタケルさんでしたし。」


『はっはっは、では全員の力だな。配下の人蛇たちも遅からずいなくなるだろう。神宮に戻り、剣を戻したのち、体を返さねばな。』


 そうか、タケルさんは勇敢な青年の体を借りて戦っていたんだった。


「その体の持ち主は無事なんですか?ナーガに槍で貫かれたと聞きましたが…」


 神宮に戻りがてら、タケルさんの体の持ち主のことなどを聞いていく。


『剣に宿る神気により傷も癒えている。しばらくは体に合わない力を無理に使った影響で床に臥せるだろうが、一週間もせぬうちに回復するであろうよ。』


「ホント、その大学生のお兄さんが名古屋にとっては英雄だね!」


『はっはっは、そうだな。我も英雄などと呼ばれ祭り上げられたが、この体の青年こそ真に勇気ある英雄だろう。』


「まったく、蛮勇じゃなきゃいいけどね。」


 レベッカがため息交じりに口をはさむ。まぁ良いじゃないか、その勇気がなければ名古屋はオロチに荒らされ、人も皆殺しにあったかもしれない。


 そして、天叢雲剣はオロチに吸収され、更なる悲劇が生まれただろう。偶然、運が良かっただけ、と言えばそうだが、それでもその瞬間に神剣を使って人々を守ろうとした思いは奇跡を起こしたともいえる。


「レベッカもそう言うなよ。名古屋の人たちが救われたのも事実だし、偶然とは言え、奇跡を引き寄せたのは勇気のおかげだろ。」


「まぁそうだけどね。でもホオリ、アンタは勇気と蛮勇をはき違えたら駄目よ。ニンゲンなんて肉体が失われたら、同じニンゲンとしては戻ってこれないんだから。」


「そうならないために、わたし達がいるってことでしょ!?ちゃんと頼ってねホオリくん!」


 ニャーとコッチーも鳴いていた。


 まぁそうだ。命は一つしかない。失われてしまえば、もう取り戻すことはできない、よな。


 そんなことを話しながら、熱田神宮に戻る。


「やぁ、高屋君、おかえり。ミコトも無事だったようだね。」


 神宮に着くと、秋田さんが待っていてくれた。


「わーー!秋田さーん!」


 ミコトは秋田さんに駆け寄り、拳を付け合わせている。元々、秋田さんと一緒に活動していたし、二人は親しいんだよね。


 秋田さんたちは後詰部隊として熱田神宮に入り、避難民を守ってくれていた。タケルさんがオロチ退治のため、名古屋城に行っていたから、避難所の守りが手薄になってしまうところをうまく埋めてくれた形だ。


「高屋君、明日には長崎病院や食料工場からも戦闘員がこちらに来る予定だ。どうにか道を繋げて、大阪救出の橋頭保にしたい。」


「千秋さんとはどんな話になっているんですか?」


「現在、名古屋にはヤマトタケル様のみが降臨されている。他の神は確認されていないので、ヤマトタケル様に相談しようということになっているんだ。」


『相分かった、まずは宮司殿のところで詳しく話し合おう。』


「はい、よろしくお願いします。ヤマトタケル様。」


 秋田さんたちは名古屋に来るまでの間、ヒュギエイア様のお守りの力で弱いアクマが近づけないようにして移動してきたそうだ。


 運よく、強力なアクマにこそ遭遇しなくて済んだが、リスクは高いので道は必須とのこと。


 そんな話をしながら千秋さんのもとに向かう。


「皆様、ご無事で何よりでございます。そして名古屋をお救い下さり本当にありがとうございました。日本武尊にあわせられましても、その神威にかしこみ申し立て祀ります。」


『宮司殿、よくぞ民を守ってくれた。俺の方こそ感謝を。

 では、この後どうするか話し合おう。まず俺から話さねばなるまい。』


 ヤマトタケルによると、あくまでヤマトタケルは天叢雲剣に残っていた神の力で顕現しているにすぎず、他の地の神のように神力を振るうことはできない。


 もともと、彼自身、神ではなく神剣に力を授かった人間であり、天叢雲剣に残っていた意識の残滓らしい。


 そのため、道をつなぐには天叢雲剣の力を使うことになる。


 天叢雲剣をつかって顕現すると言われている天照大神か、本来の剣の持ち主である素戔嗚尊を一時的にでも降臨させて、道をつなぎ、剣自体を名古屋の守りとする。


『それでは、宮司殿、祝詞をお願いする。俺が祝詞の力を借りて神を呼び、願いを申し出よう。』


 神殿にてヤマトタケルが天叢雲剣を掲げ、千秋さんが祝詞をうたう。


 荘厳な雰囲気の中、剣から天に向かって光が伸びたと思うと、ヤマトタケルの前に太陽のような輝きを放つ人影と、“力”としか称しようのない輝きを放つ人影が現れる。


『我らに願う愛しき人の子らよ。そなたらの願いを叶えん。だが、我らの力も大きく減じている。父らが産み落としし、この島国にあまたの神々が集まりつつある。神と人の力をあわせ、苦難に立ち向かおう。

 そして、われらとまた相見えることを期待する。』


 神の声が響き渡ったあと、ヤマトタケルは台座に天叢雲剣を突き刺した。


 まばゆい光と力の波が一帯に広がっていき、空気が清浄化されていく感覚を受ける。


 目を開けると、2柱の神と思しき人影は消えていた。


 そしてヤマトタケルが口を開く。


『みな、我もこれにて去る。天叢雲剣に残った残滓ももうない。もはや再び見える(まみえる)ことはないが、魂はみな流転する。気付くことはなくとも出会うこともあろう。最後に良き戦いが出来た。武人として誇りに思うぞ。ではさらばだ…』


 その言葉と共にヤマトタケルも光の粒になって消えていった。残された青年は、糸が切れたように倒れようとしたところを、秋田さんがさっと支え、優しく寝かしつけた。


「ホオリ、見習いなさいよ。あれがイケメンよ。」


「比較する相手が悪すぎるだろう。俺にそんな甲斐性を求めないでくれ、悲しくなる。」


「さて、宮司様、彼のことをお願いします。私たちは先にリーダーたちを話し合った通り、本日はこちらで休ませていただき、明日、部隊の集結を待って大阪に向かいます。」


「何から何までありがとうございました。人は多く失われてしまいましたが、名古屋にはまだ多くのモノづくりの技術と知恵が残っております。残された人間の生存圏で貢献できるよう働いてまいりましょう。」


「はい、みんなで力を合わせて日本を取り戻しましょう。」


◆━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


 その夜、ささやかながら天叢雲剣とヤマトタケルを祀る宴会を開き、生存者全員で感謝と、亡くなった人への哀悼の意をささげた。


 一晩泊る部屋を借り、眠りに着こうかという所で、誰かに呼ばれたような気がした。


 気持ちを静め、耳を傾けていると、やはり俺を呼ぶ声がする。どうしてこんな呼び方をするのか分からなかったが、何か二人で話があるんだろうと思い、コッチーに一声かけて部屋を出た。


 南神池という池があるところで、レベッカがぼんやり池を見ながらたたずんでいる。


「珍しいね、あんな呼び方するなんて。」


「アンタも成長したわねー、あの声に気付くなんて。」


 言い方はいつものアレだが、妙に沈んだような声でレベッカが応える。


「まぁ俺も少しは成長してるってことだよ。先生が良いからね。まだ夜風は冷たくない?」


「ふふっ、変に気遣っちゃってさ。そうね、せっかく来てもらったし、言わなきゃね。」


 ずいぶん遠回しだ。彼女らしくないなと思いながら、レベッカの近くに座る。


 するとレベッカは俺の肩に腰を掛けた。


「私ね、ホオリに謝らなければならないことがあるのよ。」


 黙って続きを待つ。


「トウガのいた山に向かう途中、学校で魔人にであったじゃない?そして3人で何とか倒した。」


「そんなこともあったねぇ。“だいそうじょう”だったっけ、変なことを口走っていた骸骨のアクマ。」


「そう、ダイソウジョウ。あのアクマね、富士のふもとで戦ったバイク乗りと同じだったのよ。」


「アクマデバイスに魔人とか出てたよね。同じってそういうこと?」


「そうとも言えるし、そうではないとも。いや、多分そういうことなのよね。」


「珍しく遠回しな言い方するね。普段は、もっとこう、バーンって感じで直球だろ?」


「ふぅ、そうね。はっきり言うわ、魔人はね、もともとはニンゲンよ。」


「…そっか」


「そっかって、あんたね。ニンゲンって同族殺しに強い忌避感があるんじゃないの?」


「まぁそうなんだけどね、あくまで“元”だろ?アクマがこんなに現れた世界だし、そうなんだろうな、くらいには思ってたよ。」


「それだけじゃないのよ。魔人は浄化してやらないとプラーナ・マルガに還れないわ。ダイソウジョウは浄化できなかったから、完全に消滅してしまったのよ。」


「そうなんだ…、でもさ、あの時ってまだレベッカは浄化できなかっただろ?」


「それはそうよ、でもそういうことじゃなくて、仮に私があの時浄化できてたとしても、浄化しようとか考えもしなかったってこと。」


「つまりは、レベッカは今は、それだけ俺達人間のことを考えてくれるようになったってこと?」


「むーー、そういう言い方されるとね、ちょっと答えづらいけど。」


「俺はそれだけでも嬉しいな。俺なんてさ、別に普通の人間だったんだよ。何にも特別じゃない。それこそ、ミコトの方がよっぽど特別な存在だったよ。高校生としては有名人な方だしさ。

 でも、レベッカがここまで連れてきてくれたんだ。だから感謝しているけど、恨んだりなんてしない。」


「フン!ホオリのくせにカッコつけてんじゃないわよ。」


 そういいながら、レベッカは少し照れ臭そうだった。


 そのあと、少しの間二人で空を見上げていたが、少し寒くなってきたので部屋に戻って、コッチーが温めてくれていた布団に入って3人で眠りについた。

エンカウント:Lv?? 天照大神 / Lv?? 素戔嗚尊

レベッカさんはメインヒロイン(偽)です。サイズはこの先も変わらない予定。


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