第43話 名古屋封鎖
移動メインの回
富士市から名古屋までは東海自動車道を通れば車で3時間弱。レベッカと探知宝珠があればアクマとの不意の遭遇戦もないので、4時間かかることはないだろう。
だが、これだけXitterでの情報交換が活発になってきたにも関わらず、名古屋からの情報発信が全くないというのは気になるところ。
大阪の人間同士の抗争もあるし、不安材料が多い西進となりそうだ。
サクヤ様や藤野社長たちに別れの挨拶をして、出発。
東海自動車道に乗る前にイワナガヒメ様にも挨拶に行く。お賽銭箱を越えた門の先にある広場でイワナガヒメ様が待っていた。
『勇ましき人の子らよ、此度の働き見事であった。迷える魂より妹を、この地を、そしてかの魂を救ってくれたこと感謝する。』
「いえ、こちらこそイワナガヒメ様にいただいた力があったからこそ何とかなりました。全部あって、さらに福島さんの知恵と力があってようやくでしたから。」
『サクヤを通して視ておったよ。かの魂は失い、嘆き、悲しみ、そしてそれらが強かったからあそこまでのプラーナを引き出したのだろう。人間は不思議な存在じゃ。プラーナを知覚できない存在であるが、此度のロカ・プラーナとの接続で魂に何か変化が起きておる。
変化しているのか本来の姿に戻っているのか…まだ分からんが。シヴァかノルニルの三姉妹なら何か知っていそうなのだが…こちらにはおらんだろうし。』
「確かに不可思議な点が多いわよね。あの骸骨は確実に元ニンゲンだった。特殊なやつが何人かいるけど、基本的に人間はそこまで大きなプラーナは扱えないわ。少し扱いが上手い秋田でさえ、プラーナの総量はそこまで多くない。肉体が死んでいるからって、あそこまで強力な存在になるのはおかしいわ。」
『その謎は力の匠たるそなたの旅路でわかるやも知れぬな。』
「ま、とにかく今は情報が少なすぎてわからないわ。私たちは西に向かうから、アンタにお礼を言いに来ただけ。ありがとね。」
「「「ありがとうございました!」」」「にゃーー」
コッチーや俺たちもお礼を言って、イワナガヒメ様の社を後にした。
「さあて!これから名古屋旅行だね!平和な時だったら美味しいものも沢山あってパワースポットもいっぱいだから楽しかっただろうなぁ。あぁみそかつ、手羽先、ひつまぶし…」
「味噌を使った料理が有名なんだっけ?あと小倉トーストとか?」
「ねー!あぁ本当に残念。」
「若人たちよ、早く乗るんだ。拙者は正直気が乗らんでござるよ。連絡が全く取れないとか、最悪ゾンビタウンになっててもおかしくないのでござるよ?」
「アンタ、その口調でいくことにしたの?」
「いや、一応気を張って普通に喋ろうとしてたのでござるが、先の戦闘で素が出てしまったのでもう良いかと思って…」
福島さんは相変わらずだが、根は良い人だし、やはり大人だけあって頼りになることも多いから喋り方くらい良いだろう。
俺たちは福島さんの運転で名古屋へと向かうのだった。
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高速道路を使った移動は、前回、富士市に来た時と同様、戦闘はほとんど発生せず、単発のアクマと遭遇してもレベッカ&コッチーの長距離イカヅチ射撃で終わるのでスイスイと進んでいった。
名古屋市までもうすぐ、豊明IC付近まで来た時にレベッカが神妙な顔をして、何よこれ…とかつぶやいている。
「レベッカ殿どうしたでござる?次のICで降りた方が良いでござるか?」
「いえ、このまま進んでいいわ。確証がないからついてから話すけど、確実におかしなことになっているから覚悟しておいてね。」
こいつは確証がないと絶対教えてくれないんだけど、真剣な時は絶対にロクなことがない。名古屋はどうなっているんだ…。
俺たちは重い空気のまま目的の呼続出口で高速を降りる。遠くの方に黒い半球のようなものが見えてきていた。
「あれはいったい…」
「近くまで行って。そこで説明するわ。」
福島さんは無言で頷き、さらに車を走らせる。
熱田神宮の周りに流れる新堀川の手前で車を止め、川を隔てて向こう側は黒い半球でおおわれているようだった。
「で、この黒いのは何なの?これが連絡が取れない原因?」
「そう、連絡が取れないのはこの結界のせいよ。完全に外部から遮断されているわ。
で、これが何かって言うと、邪念がこもった結界ってとこね。この中にあるものがよほど嫌なのか、恨んでいるのか分からないけど、絶対に外に出したくないって意思を強く感じるわ。」
「これって中に入れるの?」
「ん~、多分入れるわ。だけど出てこれるかは分からない。出てこれない可能性の方が高いんじゃないかと思うわ。」
「う~ん、レベッカにも分からないのか…」
「私は結界術については専門外なのよ。障壁のような一時的な防御としての使い方はともかく、結界っていうのは媒体やら方位やら色々と手続きが必要だったりするし。三清の爺どもなら詳しいと思うけど、こっちにいるのかしらね。あとは泰山府君あたりかしら…」
「はい!はーい!わたし思いついたんだけど、イワナガヒメ様やサクヤ様って富士山を守るために何かしてたでしょ?結界?というものも分かったりしないかな?」
「ん~、あれは結界じゃなくて攻撃に対するカウンター、攻勢防壁みたいなものだしねぇ…」
「じゃあじゃあ!勢至菩薩様は?智慧の仏様なんでしょ?何か知っていないかな?」
「あー、なるほどね。仏なら可能性はあるわね。あいつ等ってすぐ結界を張るし、私がホオリとあった場所のずっと東側には頭おかしいのかってくらい強力な結界があったしね。」
「え?頭おかしいくらい強力な結界?」
「さ!マハースターマプラープタに連絡を取りなさい!」
「合点承知の助!」
あれ?俺の質問は無視?そして福島さんの即答もどうなってんの?あぁもういいや、とりあえず目の前の状況をどうにかしないと!
福島さんがさっそく食料工場の岡山博士にDMを送ってくれた。
岡山博士から10分後に通話機能を使って、勢至菩薩様とつないでくれるそうなので、俺たちは結界の周囲を探索することにした。
「そうそう、宮城氏からの情報だが、熱田神宮には日本の三種の神器とされている天叢雲剣が祀られているらしいでござる。この結界と何か関係があるでござるかな?」
「三種の神器ですか。何だか凄いものが出てきましたね。でも、アクマやら神様やらが実際にいるってことは、三種の神器も本当にすごい力がありそうですよね。」
「ねぇねぇ福島さん、三種ってことは他に二つあるってことでしょ?他の二つはどこにあるの?」
「宮城氏がその辺も書いてくれているでござる。一つは八咫鏡で三重県の伊勢神宮に、一つは八尺瓊勾玉で皇居にあるようでござるな。なになに…勾玉は何度も奉納場所が変わったり、実物を見た人がいないとされているなど、存在自体や価値自体を疑問視する声もある。だそうでござる。」
「ふーん、ここには残りの二つは無いのね。三つ揃ったら何か起きるのかな?」
そんなことを話しているうちに、岡山博士から連絡が来た。
名古屋に何の恨みもないのですが、名所が多いことと、三種の神器があるということでパワーバランスを考え封鎖状態になってしまいました。ご容赦くださいm(_ _)m
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