Extra Story3 究極無敵結界
別視点。第2話と同じ日の出来事です。
~~Side Japanese government(日本政府)
ズン!ズズン!
体の芯に響くような大きな揺れが起きる。本当に彼女の言う通り、世界に異変が起きたのか?
「総理!急ぎ非難を!」
首席秘書官が大慌てで部屋に入ってくる。
「わかりました。皇居に連絡は?」
「はい、第2秘書が宮内庁長官に連絡を取っています。総理は急ぎ直通ルートで皇居に入ってください。」
「他に避難できる人はいますか?」
「本日はノー残業デーですので、皆さんお帰りになっているかと。近しい方々には念のため伝達はしておりますが、どれだけの方が真剣に受け止められたかは分かりません。」
「やむを得ませんね。私だって彼女が言ったことが本当かなんて、半分信じていませんでしたから。」
「しかし、彼女の言う通りになってしまったと。」
「そうですね。彼女には連絡が取れているの?」
「いえ、そこまで手が回っておりません。が?あれは?」
「ミス ファーリオ…ここを知っていたの?」
「フフ、高宮総理、あなたならワタシの話を信じて行動してくれると思っていました。だから秘書の方にすぐ連絡がつくようにしていたのデス。」
まったく食えない女性だ。確かに今日のことは彼女が事前に情報を渡してくれていたことだけれど、それにしたって先回りをするような行動。
ナイア=フォーリオ…現在の在日米国大使。いくら在日米国大使とは言え、ここまでできる人間が今までいただろうか。
いや、今はアメリカの脅威について考えている暇はない。天皇陛下の元まで参じなければ。
「ワタシも一緒に行っていいデスよね?」
「ここまで来ているのなら仕方がないでしょう。付いて来てください。」
3人で急ぎ、皇居へ続く地下の直通路を急ぐ。
大きな地震だったと思うが、通路に被害は無いようで安心する。天皇陛下や皇后陛下が無事であらせられるか、心配ではあるが。
はやる気持ちを押さえ、可能な限り急いで皇居に向かう。
皇居に着いたが、地上の建物ではなく、緊急用の地下シェルターに降りる。ここを知っているのは宮内庁の上位の役職者と天皇家、そして天皇に認められた一部の総理大臣経験者だけだ。
ただ、過去の経験者たちもここは知っているが、網膜認証から削除されているのでシェルターに入ることはできない。
まさかそこまで知ってナイアは私を待っていたのか?
少し恐ろしくなったが、そんな妄想は振り払って直通のエレベーターに乗る。
かなり地下深くまで降りて、エレベーターは止まった。ここまで来るのは私も初めてだ。まさかここを使う日が来ようとは。
「陛下!ご無事でしたか!?」
エレベーターを降り、ホールに出ると、天皇陛下や皇后陛下や皇太子殿下、宮内庁の幹部が数人集まっていた。
「高宮総理、あなたもご無事でしたか。良かった。一体何が起きたのか…。」
「陛下、ご安心下さい!ここは物理的にも霊的にも完璧な防御を誇っております!究極無敵結界 真・江戸城です!」
宮内庁長官が自信満々に防御の絶対性を主張する。
確かにここは核攻撃を想定した物理的な堅牢さと、古来より伝わる霊的な結界により守られているとされているが、三種の神器が一つしかなく、四方の四天王陣が破られればどうなるか分かったものではない。
宮内庁としては絶対だと言いたいだろうが、正直何が起きているかすら分からないのに、絶対だなんておこがましいと思う。
「それはともかく、コマンドルームに向かいましょう。何が起きているのか確認しなければ。」
私の掛け声で、人が動き出す。
「私も行きます。国家の意思決定は高宮首相、あなたに委ねますが、私の知見が役に立つこともあるでしょう。」
陛下も一緒に向かうと言われる。その自国愛と責任感はこの国の象徴たる人にふさわしい方だ。
「はい、陛下もぜひお願いします。ここにいる全員で状況を打開しましょう。」
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~~コマンドルームにて
「外の様子は見られる?」
「はい、各方向の映像をモニタに出します。」
8枚のモニタに四方八方の様子が映し出される。
北西の方角の映像から火の手が見える。
「あの方向は・・・まさか・・・市ヶ谷!?」
「じ、自衛隊とは連絡がつかんのか!?」
皇宮警察の本部長が叫んでいるが、あの様子だと自衛隊や米軍は優先的に攻撃を受けているのでは?
攻撃?そう、攻撃を受けているんだ。これは何者かによる侵略なのか?
「他の方角で何か目立ったものは?」
「何かが動いている様子がありますが、良く見えません!」
コマンドルームが騒がしくなってきている。
「ミス ファーリオ、米国とは連絡がつかないのですか?」
「高宮総理、ナイアで構いませんよ。本国とは連絡がつきませんね。ホットラインも沈黙したまま。在日米軍も同様です。これはチャイナやロシアの侵攻でしょうか?」
米国とは連絡がつかないか。そしてナイアも何かの侵攻だと感じていると。
「他国とのホットラインは通じますか?」
「駄目です。回線は何も通じません。インターネットもすべて駄目です。地上とも連絡がつかないんです。」
「ここには発電施設や食料生産所もあるので、最悪数年は生活できますが、何も分からないのでは…」
不安の声が強くなってきた。これはまずいわね。
「ほほほ、ほ、本部長!?モニタに映っているものは!あれは!か、怪物です!タコの頭がついた人型の怪物がこちらに押し寄せてきています!!」
まさか人間ですらないとは…世界に何が起こっているの?
日本政府が本編に登場するのは結構先になりそうなので、何度か高宮総理視点のエピソードは挟み込む予定です。
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