第31話 ルート開通
オーガニック的な
ママンがクリスマスの時にいなかったことを延々と恨みつらみしたりはしません
『死ねよやーーーー!』
ヴォーンが大技を繰り出そうとする。
「させぬぞ!!」
トウガが地面に拳を叩きつける。
ヴォーンを始点として広範囲に土の大きなトゲが放射状に広がっていく。前衛で守らされていた鬼たちも巻き込んでいく。
反対にトウガを中心として半径5mが20cmほど陥没し、トゲを破壊していく。
大技の隙をつきたいが、俺たちも足場が陥没したため体制が崩れる。だがトゲからは守られた。
俺たちが体制を立て直す前に、足場陥没の影響を受けないレベッカが強力な衝撃波をヴォーンに放つ。
そして、トウガが拳を叩きつける瞬間に飛び上がっていたコッチーも渾身のイカヅチを落とす。
「皆さん!バレットを全員でヴォーンに放ってください!」
俺たちは残る全員でヴォーンに向けてバレットの雨を降らせる。
満身創痍になったヴォーンに向けてトウガが一瞬で近づき、正拳突きを放った。
「地獄突き!!」
ヴォーンの体でプラーナが爆発する。
「ぐ、ぞ、がぁ…ぎざまらだけでも…」
ヴォヴォルの時のように邪悪な影がヴォーンから吹き出ようとしている。
あの死をもたらす影!全員は守れない!!
俺が焦りを感じた瞬間、レベッカが叫びヒュギエイア様を感じるプラーナを放った。
「慈悲深き女神の力よ!死の影を振り払い、愛しき子らに祝福を与えん!!」
柔らかな緑の光の波が辺りを吹き抜け、ヴォーンから吹き出そうとしていた邪悪な影を吹き払った。
そしてヴォーンも光に溶けて消え去っていった。
「レベッカ殿、感謝を。」
「レベッカありがとう。あの死の影を追いやってくれて。」
ニャーとコッチーも感謝を伝えているようだ。
「ま、せっかくヒュギエイアから力をもらったのに使わないのも勿体なかったからね!」
小さな体で胸を張って威張るレベッカ。レベッカさんは今日も通常運転だね。
「みなさん、お疲れさまでした。無事、鬼たちもあるべきところに還すことができ、ボスも倒すことが出来ましたね。」
徳島さんや三重さんのチームを労わる。
さすがに通常より強力なアクマである鬼の大群と戦ったのだ。彼らは息も絶え絶えと言わんばかり。
それでも誰一人として命を落とすことなく、やり切ることができた。本当に良かった。
2チームの皆さんには少し休んでいてもらい、俺たちは牢に閉じ込められているという雷鬼を助けに向かう。
雷鬼はかなり消耗していたが、命に別状はなさそうだった。
「おお、刀牙よ。無事だったか…」
「当然だ、友を置いて逝けるわけがなかろう。さぁ黄泉の国に帰ろう。配下の鬼たちはプラーナ・マルガに還った。ヤマ様に報告せねば。」
「あぁ、ありがとう、友よ。儂がふがいないばかりに部下たちには申し訳ないことをした。」
「それは儂も同じぞ。不意打ちとは言え、あのディープワンにはしてやられた。」
そんなことを話しながら雷鬼を救出。
俺たちも簡単にあいさつし、徳島さんたちが休む場所に戻った。
「ホオリよ。儂は雷鬼を連れて黄泉の国に戻る。ここでお別れだ。」
「そっか。帰っちゃうんですね…。」
「ああ、短い間だったが、良き時間だった。だが、かの邪神の配下どもはまだまだ居るだろう。儂らを襲ったディープワンもまたどこかに居るはずだ。」
「はい、俺も修練はきつかったけど強くなれたし、楽しかったです。」
「操鬼闘法の修行に終わりはない。怠けず鍛錬を続けよ。この国を救う戦いの時にはまた会えるよう、儂らも準備するつもりだ。」
「分かりました。また会える時を楽しみにしてます。」
では、さらばだとトウキは手を振り、雷鬼に肩を貸しながら暗闇に続くゲートのようなものを通って去っていった。
少し寂しいなと思っていたら、コッチーが俺の体を登ってきて腕の中におさまった。
あぁあったかいね。
さて、いつまでも感傷に浸ってはいられない。ヒュギエイア様のところに戻って八幡小学校までの道をつないでもらおう。
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「ヒュギエイア様、無事、自衛隊駐屯地を占拠していた鬼とクトゥルヒを倒してきました。これでニャミニャミ様の社との間に道が通せますか?」
『勇ましき人の子よ。確かに途中で道を阻んでいた存在は消え去りました。ニャミニャミ様の力の結晶をここに。』
俺はアクマデバイスから【水龍神の力の結晶】を選択し取り出す。
『ああ、あなたは水気を強める結晶をお持ちですね。そちらもいただけますか?』
水気を強める?アプリを操作して確認すると、マーメイドのお姉さんにもらった【プラーナの結晶(水)】が目に付いたので、それも選択し取り出した。
『ありがとう。それではニャミニャミ様と力を合わせ清浄なる道を作ります。』
ヒュギエイア様は薄く目を閉じ、集中し始めた。
その周りを【水龍神の力の結晶】と【プラーナの結晶(水)】が飛び回り始め、力が高まっていく。
高まったプラーナが爆発するかのように天に向かって光の柱が立ち上り、周囲をさらに清らかな空気に変える。
ヒュギエイア様は目を開け、にこりと微笑んだ。
(うわぁ、女神様の強烈なスマイル…これは…)
バシバシバシッとふくらはぎに強い痛みと共に、後頭部にもガツンと痛みが走る。
コッチーはシャーと鳴きながらネコパンチをしているし、レベッカはひどく嫌そうな顔でため息をついている。
「まったくこれだから男は…」
さすがにこれはひどくないかな。女神さまの笑顔とか、男には耐えられないでしょ。うちの女性陣は厳しすぎる。
俺ががっくりとうなだれていると、長崎院長が話し始めた。
「モールの奈良さんと八幡小学校の香川先生と三者通話をすることになった。少しみんなで話そう。」
長崎院長はスマホをテーブルの上に置き、Xitterで通話をスピーカーモードで開始する。
奈良さんや香川先生の声を聴くのも久しぶりな気がするな。
香川先生の話によると、小学校側でもニャミニャミ様の社から光の柱が立ち上ったそうだ。
そのあと、西に向かう一番大きな国道が薄く光を放ち始めたらしい。
ヒュギエイア様によると、それがアクマが近づけない清浄なる道とのこと。これで、八幡小学校から長崎病院までは安全に移動が可能になった。
喜んでいる俺たちに、奈良さんからさらに嬉しい話があった。
『ナイン&Jモールにも神を招き入れることが出来た。そのため、モールから八幡小学校までの間にも清浄なる道が繋がったよ。』
「ええっ!?いつの間にそんなことを!神様を招き入れるなんて、そんなことが出来るんですか?」
『非常に運が良かったとも言えるな。秋田君の部隊が東側を探索中、阿佐ヶ谷の方で傷ついた神様と、その神に守られていた子供たちを発見したんだ。
その神様にプラーナを分ける代わりにモールを守る神になってくれと秋田君が交渉してくれてね。』
秋田さんすげぇ…
『まぁその秋田君も高屋君がいろいろと教えてくれたから、アクマが出現する危険な場所にも行けるようになった。結局は君のおかげとも言えるな。』
「いえいえ!そんな、俺なんて…。バレットだって秋田さんが思いついたものですし、俺だって秋田さんにはいろいろと教えてもらった立場ですよ。」
「ふふん、じゃあ私のおかげってことね!流石はレベッカ様!さあ私を崇めなさい!ひざまづきなさい!」
『はっはっは、レベッカさんもお元気そうで何よりです。この度のことモールの皆さんに代わりお礼申し上げます。』
奈良さんも相変わらずの丁寧対応だ。ほら、レベッカが調子に乗ってる。
「奈良さん、ほどほどにしてください。すぐ調子に乗るやつなんで。」
そんな話をしつつ、次の目的地について俺たちは話し始めた。
エンカウント:Lv?? クトゥルヒ ヴォーン / Lv?? 雷神 雷鬼
1998年のネタを忘れられない訳で。ぜひオーガニック的な台詞集をご覧ください
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