第24話 精霊の試練
レベッカ姐さんパワーアップイベント
病院に戻りヒュギエイア様にヘンルーダを渡す。すぐに霊薬を作り、自衛隊員の治療に入るそうだ。
俺たちは長崎院長に3日間をめどに修練を行うことを伝える。トウガのことや彼が話した内容についても長崎院長にだけまずは説明をした。
長崎院長は難しい顔をしていたが、レベッカの例もあり、力を貸してくれるアクマがいることは納得してくれたようだ。
修練が完了し、勝算が見えたら駐屯地に向かうが、その際に一緒に戦ってくれる人がいるならプラーナの使い方を教えて、俺たちが修練している間に、その人たちも各自で鍛えてもらえないか頼んだ。
長崎院長は希望者がいればぜひにということで、院内に避難している人たちに説明をする。
俺が来た時に対応してくれた男性たち3人と他に女性2人が手を挙げてくれたようだ。
彼らにレベッカと協力してプラーナの使い方を教える。俺自身が少しずつ使い慣れてきていることもあり、八幡小学校で教えた時より上手く伝えられたと思う。
自衛隊員が復帰したら、彼らにも伝えてもらうようお願いした。
レクチャーが終わるころにはもう夜になっていたので、今日はこのまま病院に泊まって、明日の朝一番で滝山城跡に戻ることにした。
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次の日、早々に滝山城跡に戻ってきた俺たちは、トウガの案内で山中の社に向かう。
社に向かうにつれ、空気がより澄んでいくような感じがする。
そういえば、滝山城跡にはアクマが出現しない。不思議に思ってトウガに聞いてみた。
「社に祀られている神の力と、儂の気配のせいだろうな。神の力はかなり弱まっていて完全な聖域にはなっておらんが、そこに儂が来たことで弱いアクマは近づいてこれんのだろう。」
「トウガさんってサカキオニ?でしたっけ?俺、聞いたことがなくって…。」
「はっはっは、そうだろうな。サカキとは揺るがずに神を尊ぶという意味の言葉だが、あの世とこの世の境界を分ける樹木のことでもある。
儂らはこの地球で肉体を失った魂を、正しいプラーナ・マルガの流れに返す手助けをしておるが、榊と共に境界に立つものとしてその名をいただいておるのだ。」
「鬼っていうと怖いイメージですけど、神様に近い感じなんですね。」
「そなたら日本人は得意稀な神性感を持っておるよな。まぁそもそも、日本に仏教が入ってくる前は人より強きもの、見定められぬものは全て神だった。仏教が入ってきて後、わかりやすい対立軸として仏と鬼が生まれたからな。我らは神の配下として鬼の名を使っておる。」
「神様そのものではないと…。ではトウガさんの神様って誰なんですか?」
「儂らが直接使えるのはヤマ様だな。ヤマ様も黄泉の国を治めるイザナミ様より命を受けている故、イザナミ様が我らの神ということになろうか。」
「イザナミ様は名前は知っています。日本を産みだした神様ですよね。ヤマ様というのは?」
「そうか、今の日本人にとっては閻魔大王と言った方がわかりやすいな。」
「え、閻魔大王!?地獄で人の舌を引き抜くっていう!?」
「はっはっはっ!そんなことはせんが、嘘つきを戒める説話として、そなたらはそんなものを作っておったな。
ヤマ様は魂の回復度合いを見て、魂が正しいマルガを進めるように見定めてくださる。我ら榊鬼は定められた道に魂を導く仕事をしておるのだ。」
そんな話をしているうちに社に到着。
「ここにはどんな神様が祀られているんですか?」
「こちらには、志那都比古様の分霊が降りてこられる。イザナミ様より生まれし風の神だな。」
「シナツヒコ様…。分霊…。」
「よし!ついにレベッカ様のパワーアップイベントよ!シナツヒコ!風の精霊を集めなさい!!」
……しかし何も起きなかった。
「レ、レベッカ?」
「お、おかしいわね。何か特別な儀式があるのかしら?」
「礼もなっとらんし、祈りもせんと力を貸してくれるわけもあるまい。この世界の神はかなり力を失っておるのだ。簡単には力を振るえんのだよ。」
「レベッカ、ちゃんとお祈りしよう。俺もレベッカに強くなって欲しいし!」
「っ!わ、わかったわよ。そう真っすぐ見つめるんじゃない!もう!」
コッチーはしょうがないにゃあと言わんばかりに、ニャアと鳴いた。
俺が祠の前に立つと、コッチーが俺の頭の上に登ってきた。一緒にお祈りするらしい。
レベッカも初めて見るような神妙な顔をして祈り始める。
トウガも儂も手伝うかと言いながら、俺の隣に立ち祈り始めた。
(シナツヒコ様、俺たちはもっと沢山の人たちを助けたい。そのためにもレベッカに力を貸してください。風の精霊をこの場に呼び寄せてください!)
祈ること数分、優しい風が吹き始め声が聞こえる。
『我が分ち扉を叩きし者よ。我を呼びし者よ。この世界は再び危機に見舞われようとしている。そなたらの勇ましき心に報いるべく、我が残りし僅かな力を貸そう。
そなたらの旅の風に幸あらんことを…』
シナツヒコの声だろうか。その言葉の後、社の周囲に何かの気配を感じ始める。
「集まってきたようだぞ。どうするのだ?」
トウガの言葉で目を開け周囲を見回した俺は、トウガに頷きを返し周囲に漂う光の塊たちに話しかけた。
「俺は高屋 穂織です。レベッカに力を貸して欲しいんです。」
「風の精霊たちよ、私に力を貸して!さらなる力を振るうための礎を!」
『風の神に導かれし勇ましき者どもよ。我らが力、安くはない。この壊れゆく世界を守るため、覚悟を見せよ!!』
光の塊は一つにまとまり、巨大な人型の上半身になる。淡い緑の光を放ち風を纏って襲い掛かってきた!
「これはちょうど良い鍛錬になろう。ホオリよ体に纏うプラーナを切らさぬよう戦って見せよ。それとこれは助言だが、炎の術は風によって大きくなり返ってくるやもしれぬ。気を付けて使えよ。」
「分かりました!やってみます!コッチーもやるんだ!」
ニャーー!と力強い鳴き声が返ってくる。さあ!やろう!!
相手は風を常に纏っているから、簡単には近づけそうにない。何が効果的かもわからないので、まずは牽制から入った。
トウガのアドバイスに従い、フレイムバレットではなく、通常のバレットを貫通力重視の高回転モードで数発打ち出す。
コッチーも牽制のイカヅチを複数本放って隙がないか探るようだ。
レベッカの衝撃波は風の精霊が発生させる風で完全に無効化されているので、攻撃参加は難しそう。
「回復をしながら、相手の隙や弱点を探ってくれ!」
「それしかないわね、悔しいけど!アイツの風はかなりの切れ味よ!気を抜くとあっという間に切り傷だらけになるわ!」
レベッカの言う通り、プラーナを鎧のようなイメージで体の周りに維持しているものの、少しでも制御が崩れ、甘くなった個所は簡単に傷がつく。
浅い傷ではあるが、これが増えてくると確実に体力が失われるし、痛みでプラーナ制御がもっと甘くなる。
傷が深くなる前にレベッカが回復してくれるが、早めに決着をつけないとジリ貧だぞ。
とは言うものの、コッチーのイカヅチや俺のバレットでは風に阻まれて、精霊本体に攻撃が届かない。
バットを振り回せば風をかき消したり、攻撃をはじいたりはできるが、すぐに風は再び吹いてくるので、本体に近づけないとダメージにはならない。
精霊の攻撃は広い範囲で行われるので、俺はもちろんのことコッチーでさえも完全に回避することが出来ず、俺たちは少しずつ削られていく。
「ホオリ!コッチー!このままじゃどうにもならないわ。一点突破するしかない!集まって!!」
レベッカの号令で、3人が集まる。
レベッカは俺の胸ポケットに入り、手と顔だけを出す。
「ホオリはコッチーを抱えて!」
俺はバットを置いて、コッチーを抱き上げた。
「コッチーはイカヅチで敵の攻撃を相殺、ホオリは防御重視で突っ込んで!私が回復しつつ、風を弱められるよう精霊の力に干渉するわ!近づいたら全員でドカンよ!」
レベッカが手短に作戦を伝える。
俺も腹をくくり、体中のプラーナを絞り出し、全員を守るように体にプラーナを纏う。
コッチーのイカヅチを合図に精霊に向かって突進した。
エンカウント:Lv?? 集合精霊 エアロス
志那都比古神はイザナギ・イザナミの子、もしくはイザナミの朝霧を吹き払った息から生まれた風の神とされています。山の中に祠があるのはご愛敬。
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