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プラーナの導く先へ ~崩壊した世界でネコとピクシーを仲間に、俺は英雄として生きていく~  作者: よろず屋


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第144話 個の力、群の力

『コッチー!!レベッカ!!』


 ヴォルディアの合掌による衝撃波で飛ばされる二人。コッチー飛ばされながらも空中で何度か回転しバランスを回復させてふわりと着地する。レベッカは風を操り衝撃を相殺することで飛行可能になった。


『集中攻撃でもダメなの?』


『何か、何かまだ手はあるはずだ!』


 折れそうになる心に言い聞かせるように声を張る。だが相手の方が体の大きさと言う質量も、戦場の全てのアクマを吸収し、更にマルガからも吸い上げた膨大なプラーナがある。


「私がマルガからプラーナを吸い上げて全員に供給し続けるわ。」


『そげなことができるんか?』


『いや、できたとしても駄目だ。長時間戦えたとして相手のプラーナが枯渇する前にレベッカの存在が消えてしまう。戦闘を引き延ばしても勝ち目はないだろ?』


 集中攻撃でえぐれた横腹を回復させたヴォルディアは攻撃を再開し始める。落ち着いて作戦会議もできやしない。一転突破も押し切れず、長期戦になれば確実にこちらが先に息切れする。


『俺が一人であいつを引き付けて、他のみんなは最大火力を出すためにプラーナを練りこむのはどうかな?』


『いくらなんでもホオリくん一人で受け持つのは無理だよ!』


 ニャニャ!コッチーも怒ったように声を上げる。


 その間にもヴォルディアはこちらを踏みつぶそうと足を振り上げ、触手で薙ぎ払い、水弾を放ってくる。それぞれ回避に必死で、妙案は浮かばない。そんな中、耳に着けていた通信機から声が入ってくる。


『高屋君…高屋君…聞こえますか?』


 少し音声は乱れていたが、秋田さんの声が聞こえた。


『はい、聞こえます。秋田さんですか?』


『はい、秋田です。これから戦力をまとめてそちらに援護に向かいます。戦況はいかがですか?』


『だ、駄目です!正直、自分たちの身を守るので精一杯なんです。皆さんのことまで守るのは不可能ですよ!ヴォルディアの攻撃は躱せないと一撃で殺されてしまうかもしれません!』


『やはり、相当厳しい状況だということですね。大丈夫です。近接戦闘を行うつもりはありません。蹴散らされて終わりでしょうからね。』


『では?』


『前線力で総射撃を行います。一発一発は軽くてもムスペルの戦士やダテンの皆さんもいます。200人以上の同時攻撃であればヴォルディアにも多少なりとダメージを与えられるかもしれませんし、攻撃の間に高屋君たちが最大の攻撃を放つための時間稼ぎになりませんか?』


「ホオリ!やってみましょう!足を止めてプラーナを練る時間があればやれるはずよ!」


『ホオリくん!わたし達はあそこから!』


 ミコトが指さすところを見る。なるほど、地球を味方に付ければ単純な俺達の力以上の破壊力を生めるか。俺はミコトに頷きを返す。


『じゃあ、俺達は足狙いだっど。』


『仕方がありませんね。』


「秋田!私の合図で攻撃を開始して。1分は持たせなさいよ!」


『レベッカさん、承知しました。我ら全員の全力をお見せしましょう!』


『ミコト!コッチー!一瞬だけでいいから気を逸らしてくれ!』


 コッチーの苛烈なイカヅチがヴォルディアを襲う。顔面付近を狙うことでイカヅチの光で視界を奪う効果もあるようだ。その隙にミコトはヴォルディアに接近し、ヴォルディアの体を登っていく。そして、目がくらんでいるヴォルディアの顎を強烈に蹴り飛ばした。人間と構造が同じかは不明だが、顎の芯を打ち抜かれたため脳震盪のような状態になったようで、足をふらつかせて膝をついた。


 俺は、両手を大地に着け、プラーナ検知で秋田さん達を含む全員の位置を把握する。そして大地に力を流すイメージですべての味方にバフを再度かけ直した。


『ホ、ホオリ君からのバフが来ました!』


 レンが通信機の先で叫んでいる。


『まるでMAP兵器だっど…』


『しかも敵味方識別式だっちゃ…』


 カイトさんとヤチホさんは若干引き気味の声を上げている。


『みんな!ここは頼む!!』


 バフをかけ終わった俺はヴォルディアの体から降りてきたミコトと一緒に都庁の中に向かって走る。


 ヴォルディアは一瞬膝をついたものの、すぐに回復したようで、一度頭を振り攻撃を再開する。地上に残ったコッチーやレベッカ、カイト、ヤチホは俺とミコトがいないことを悟らせないように激しく攻撃を開始する。


 俺とミコトはヴォルデイアに感知されないようプラーナを押さえ、エレベーターで最上階目指す。


「電力が生きていて良かったね。でも走って上った方が早かったかな?」


「プラーナをまき散らしながら移動したらヴォルデイアに検知されるかもしれないし、これが最善だと思うよ。」


「でもこの時間がもどかしいね。」


「あぁ。でも地上でみんなが頑張ってくれているんだ。信じて俺達がやるべきことをやろう。」


「うん!」


◆━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


「さすがに二人もいなくなると厳しいわね。カイト!前に出すぎよ!死にたいの!?」


『そいじゃっどん、こいくらいやらんといけんな!』


 コッチーやヤチホも高速戦闘を続けているため、若干息切れし始める。


『待たせた!こっちは準備できたよ!』


 そこでホオリから通信が入る。


「秋田!今よ!攻撃開始!!」


『了解!!全部隊攻撃開始!目標、敵巨大首領!!』


 秋田の声が通信機から響き、離れた場所から数百発ものバレットや火炎弾などがヴォルデイアに向かって放たれた。さらに続けて攻撃は発射され、その数は数えきれないほどの大雨となる。ヴォルディアはその攻撃に気付いていたが、一発一発の威力は大したことがないと判断し目の前の敵に集中することにした。


 そして、射撃の雨がヴォルデイアに着弾する間際。


「二度は失敗しないわよ。・・・・・崩魔!!」


 ヴォルディアが巨大化してから、攻撃と回避を続ける中、レベッカはずっとヴォルディアのプラーナの流れや癖などを観察し続けていた。そして、最初は失敗した崩魔を今度は成功させた。


 身体からプラーナの感覚が一瞬消えたヴォルディアは何が起きたのか理解できなかった。だが、次の瞬間、何の痛痒も受けないはずだった攻撃の雨が自身の肉体を削る痛打となる。


『グガァァァッァギャァァァッァァ!!!』


 攻撃の雨に打たれ、傷み苦しむヴォルディア。少し距離を取ったコッチー達はそれぞれにプラーナを練り始める。神にすら匹敵するほどの巨大な敵に必殺の一撃を放つために。


 カイトは黄金に輝くプラーナを纏う。今にもはじけんばかりの力がみなぎっている。ヤチホは反対に漆黒のプラーナを纏い、毛を逆立たせたオオカミのような姿に変わる。二人は同時に駆け出した。


 秋田たちの遠距離攻撃がやむ。


『初手は俺じゃーーーー!!神剣!分断撃ぃぃぃ!!!!!』


 カイトの神剣生太刀が太陽のごとく光を放ちヴォルディアの左足を膝の下から横に切り離される。


 ほぼ同時に漆黒の槍のようになったヤチホが右ひざを貫いている。


 両足を失ったヴォルディアは巨体を支えきれずに倒れ両手を地面についた状態となる。そこへはるか上空から小さな隕石のようなものが降ってくる。


◆━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


『よし行こう!』


『これで決めよう!ホオリくん!!』


 俺とミコトはヴォルディアが降りてくる時に破壊した壁から外に飛び出す。少しだけ外壁を走るという人間離れした動きを見せたが、二人同時のタイミングで壁を蹴り落下を始める。二人は両手を胸の前で交差させお互いの手を握った。そして足を下に向けて回転し始めた。


 体中を巡るプラーナが輝き、二人の力が更に倍増されていく。回転と落下による空気との摩擦で周囲の温度が急上昇し、赤から青、青から白へと二人の周囲の色が変わっていく。約240mの高さからヴォルディアの巨体に到着するまでおよそ3秒。


 ヴォルディアの背中を二人の体が貫通し、大穴を開けた。


 二人は地上に到達する際、プラーナをクッションのように展開し、着地の勢いを可能な限り殺そうとした。だが、隕石の衝突のような衝撃を殺しきることはできずに二人が落ちた先はクレーターのように陥没し、強烈な衝撃波が発生。


 胸よりやや下あたりに大穴を開けられ、ほぼ上半身と下半身がちぎれそうになったヴォルディアは、その衝撃波で空中に打ち上げられた。


「とどめはもらうわよ!コッチー合わせて!!」


「『神火雷震・風縛牢!!!』」


 上空に打ち上げられたヴォルディアの体を炎と雷が包み、更に嵐の牢獄が閉じ込める。牢獄の中は超高熱の炎と雷が嵐になって吹き荒れ、ヴォルディアの体を再生が追い付かない速度で消滅させていく。


 風縛が不意に消滅した後、そこには青空だけが広がっていた。

ある意味最終回です。次回、エピローグを投稿し本作は完結となります。


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