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プラーナの導く先へ ~崩壊した世界でネコとピクシーを仲間に、俺は英雄として生きていく~  作者: よろず屋


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第140話 はじめての

~~Side 玉乃井 美琴


 ニャニャニャニャーーーーーッ!


 コッチーが慌てた様子でミコトの背中に必死にしがみつく。約30mほどの高さから生身の人間が飛び降りたとき、ほぼ確実に即死する。そんな高さから何の躊躇もせずに飛び降りたミコトだったが、彼女には何とかできるという自信があった。


「アイキャンフラーーーイ!だとぅ!!」


 地上ではカイトが奇妙な叫び声をあげている。


 先に落ちたデミ=ヒュドラはその耐久力で地面に落ちた衝撃にも耐えたようだ。ミコトはおもむろに地面に向け拳を突き始めた。下から見ている人たちはいったい何をやっているのか分からなかった。だが、ミコトが目にも止まらぬ速さで拳を突き出すたびに落ちる速度が遅くなっているように見えた。


「あの娘…普通あんなこと考えるかしら。拳で起こした風圧で落ちる速度を落としてるなんて。脳筋ね…まぁ少し手伝いましょう。」


 レベッカがそうぼやきながら、落ちてくるミコトとコッチーを風で包むようにプラーナを展開する。それに気付いたミコトはレベッカの方を見てニコッと笑った。


 芸術点があれば満点だろう美しい着地を決めたミコトは唖然としているレンやカイトに向かって叫ぶ。


「ホオリ君を助けたいの!少しの間、ヒュドラと敵のボスを押さえられる!?」


 唖然とする面々だが、最初にカイトが頭を掻きながら応える。


「かーっ!無茶なことをいう姉ちゃんじゃ!だが、頼まれたとあっちゃあ断っちょれんど!雪丸!!」


「仕方がないですね。ここは貧乏くじを引きましょう。」


 ヤチホもカイトに釣られるかのように、肩をすくめながら同意する。


 どこかに隠れていた雪丸がぴょこんと顔を出し、カイトに向かって駆けていく。そして、さぁ来いと言わんばかりに構えるカイトに向かって飛び付いた。カイトの胸の中に飛び込んだ雪丸が吸い込まれていく。完全に雪丸がカイトの中に吸い込まれた時、黄金のプラーナがカイトから放たれ、光が止むとそこには白地に金の装飾が入った服を着たカイトが現れる。その頭にはウサギの耳が生えていた。


 同時に、カイトから今まで感じたことがないほど大きなプラーナが爆発したように発せられる。ヤチホは普段の優しげな雰囲気が完全に消え、闇がズブズブとヤチホを包み初め、形を変えていく。闇が固まると、カイトは真っ黒なオオカミのような鎧をまとった姿に変わる。こちらも表面に発せられるプラーナこそ抑えられているが、内に秘めたプラーナの強さはカイトに勝るとも劣らない。だが、少しだけ見る者を不安にさせるような不気味さがあった。


 ミコト、カイト、ヤチホがヴォルデイアに向かって駆け、コッチーとレベッカ、レンはデミ=ヒュドラに向かう。コッチーは即座にデミ=ヒュドラの体皮にはプラーナも刃も通らないことを伝える。攻撃は口の中から行い、頭を吹き飛ばすのだと教える。


「えげつないことしてるわねぇ。レンは牽制だけにしておきなさい。死ぬわよ。」


「は、はいぃぃ!」


 レベッカやコッチーがデミ=ヒュドラに対峙する。レベッカは爆裂風弾をデミ=ヒュドラに直撃させるのではなく、地面に当てることで動きを阻害しようとする。コッチーも噛みつきに合わせて雷身による突撃を狙うため、動きながら隙を伺う。レンは隙を作ることに専念し、バレットでの攻撃や、牽制の斬撃を行う。


 だが、すでに3つも頭を吹き飛ばされ、挙句に傷口を焼かれたせいで再生もままならないデミ=ヒュドラはその巨体を生かした叩きつけは行うものの、口を大きく開けるような噛みつきは控えている。


「学習しているじゃない。面倒やつね。」


「こ、このままだと消耗戦になります。なにか、さ、作戦を考えないと…」


「もう一枚欲しいわね…私がヒュドラを拘束するまでの時間稼ぎが出来れば…」


 一方、ホオリとヴォルディアが戦う場に駆け付けた3人だったが、激しく戦う両者を前に、上手く介入できずにいた。


『くっそ!どんな戦っちょっど!』


 カイトが悔しそうにつぶやく。ヤチホも忌々しいと言わんばかりの態度だ。ミコトは獣のように暴れながら傷ついていくホオリを悲しそうに見つめる。


『グゾッ、なぜ当たらない…全部、全部コイツのせいなのに“!!』


 ホオリの攻撃を躱しながら、少しずつ手に携えた双身刀でホオリを傷つけていくヴォルディア。ホオリは本能的な動きでヴォルディアの攻撃を躱しているが、隙が大きい攻撃を繰り返すため、躱しきれずに少しずつ斬られているのだ。


 それに苛立ち、さらに動きが硬直化していくホオリ。すでにその手にヒヒイロカネを芯に用いた棍は無く、素手で殴りかかっている。幾度かの攻防の際、ホオリの拳が地面を砕きヴォルディアの足元まで数十センチ崩れる。足を取られたヴォルディアが体制を崩す。それを好機と見たホオリは、拳にプラーナを集中させてヴォルデイアに殴りかかる。


「ダメ!」


 それを見たミコトは焦ったように飛び出した。


 隙をさらし、ホオリの拳を受けんとするヴォルディアだったが、拳が届く前にニヤリと口元を緩ませた。それは隙をさらしたと見せかけて大振りの攻撃を誘発するヴォルディアの罠だった。本来のホオリであればこの程度の釣りにはかからないが、怒りに暴走しているため、それにすら気付けなかった。


 カウンターで致命的な一撃がホオリに突き刺さる。


 かに思われた瞬間、ミコトの飛び蹴りがヴォルディアの肩に命中し、ホオリへ攻撃を押しとどめる。勢い余ったホオリはゴロゴロと転がり、数メートル離れた場所で立ち上がる。


『じゃま“をするな”ぁぁぁぁっ!』


 ミコトやカイトのことなど分からないかのようにヴォルデイアに向かおうとするホオリに対し、ミコトは正面に立って止めようとする。


 カイトとヤチホはヴォルディアに向かい攻撃を仕掛け始めた。カイトは自分とヤチホにバフをかけて強化。ヤチホは強化された素早さを使ってヒット&アウェイを仕掛ける。カイトはヴォルディアの双身刀を受け流しながら、ヤチホが攻撃するための隙を作ることに専念している。


 だが、ヴォルディアは触手も使って攻撃も防御も行うことで2対1であっても手数の不利はなく、むしろ二人を押し始める。そこでヤチホは切り札を一枚切る。


『ウォォォーーーーン!!』


 ヤチホの口からオオカミの雄たけびがとどろき、衝撃波となってヴォルディアを襲う。とっさに両手をクロスし防御態勢になるヴォルディアであったが、音の波は耳にも大きな衝撃となって伝わり、一瞬ヴォルディアの聴覚がマヒ。音が聞こえなくなった世界にヴォルディアがたじろぐ。


 その隙を逃すほどカイトは甘くなく、煌々と輝く神剣・生太刀をヴォルディアに振るった。


『神剣!分断撃ぃぃぃ!』


 カイトの必殺の一撃はヴォルディアの触手を2本斬り飛ばす。ヴォルディアは人間から初めて受ける大きなダメージに驚き、痛みに吠える。


『よっしゃぁぁぁ!』


『調子に乗るなよ!人間風情がぁ!!』


 ヴォルディアから数十発もの水弾が発射される。ヤチホは必死に回避し、カイトは躱しきれない弾は生太刀で切り払う。だが、その密度、威力はカイトの防御を飽和させ何度か体をかすっていく。かすっただけでも衝撃があり、皮膚を割いた。


『玉乃井!はよしてくれ!もうもちきらんど!!』


 ホオリを何とか抑え込もうと必死に組み合い、言葉をかけるミコトだったが、ホオリには届かない。ミコトは意を決し、ホオリを引き倒した。そして地面に打ち付けられるホオリ。その上に覆いかぶさり…。


「あーーーーーっ!!」


「あら、やるわねミコト。ってか何でレンがそんな反応なのよ。」


 ミコトの行動を目撃したレンの恨みがましい悲鳴と突っ込みを入れるレベッカ。


「きゃー!」


 恋する乙女のリコは嬉しそうにキャーキャー言っている。


「ちっ、リア充め。爆発しろ…」


 憎しみのこもった怨嗟を発するモテない男たち。


『あらあらミコトちゃんったら大胆ねぇ。でも後でゆっくりオハナシしないとねぇ。』


「こわっ」


 キズナの表情とは裏腹な恐ろし気な声色におびえるレベッカだった。

ここまで読んでいただけた読者の皆様はお気付きでしょうが、筆者はラブコメシーンが非常に苦手です。ご容赦ください。


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