第135話 空、晴れて
~~Side 皇居救助部隊
陽動部隊の行動で皇居周辺を警戒していたクトゥルヒや犬型アクマのインボカが北と南に分かれて移動していったのを確認した秋田たちのチームはは半蔵門に設置されているカメラに向かって大きく手を振ったり、救助に来た旨のプラカードを掲げ、内部にアピールする。
数分間、そう言った行動を繰り返していると、皇居の中から迷彩服を着た自衛隊と思しきものと、白い羽織もの、いわゆる狩衣と呼ばれる服装をした男たちが4人こちらに向かってくる。
「お前たちは人間か!?」
「はい!皇居に避難されている方を救出に参りました!私はこの部隊を任されている秋田と申します!」
秋田は皇居から出てきた男たちに結界の外から声を掛ける。すると男たちは一瞬力を抜いたが、お互いの顔を見合わせて、もう一度気を引き締める動作をした。
「お、お前たちがあの怪物たちの仲間までないことを証明して欲しい。この結界は人間には通り抜けられるから、こちらに来られるか試してみて欲しい。」
「えっ、この結界って人間は通れるのか?だったら最初から入ればよかったな。」
隊員たちはこそこそつぶやいていたが、秋田は彼らに目配せをして黙らせる。そして、慎重に結界をくぐろうとする。固唾をのんで見守る自衛隊員と陰陽師風の男たち。
「!?」
秋田は結界を通り抜ける瞬間、少しだけ抵抗感のようなものを感じたが、特にダメージを受けたり弾かれたりすることなく、結界を通り抜けた。それを見ていた隊員たちも次々に結界をくぐる。
「おお!本当に人間だ!!ようやく!ようやく助けが!!」
自衛隊員たちは大いに喜び、涙するものさえいた。
「遅くなってしまって申し訳ありません。それで天皇陛下などもいらっしゃるのでしょうか?」
「あぁ、そうだった。陛下も皇族の皆様もご無事です。高宮総理もいらっしゃいますよ。」
自衛隊員が嬉しそうに話す。秋田は皇族や総理大臣が無事であることに安心し、ほっと息を吐いた。しかし、敵を引き付けている者たちがいつまで持つか分からない。急ぎ状況を確認し、場合によっては本部まで避難者たちを連れていくことを考えなければならない。
「よし、誰か二人、本部に戻って状況を伝えに行ってください。このまま結界の中にいた方が安全である可能性もあります。都庁の状況なども確認する必要があります。」
「通信妨害の結界が無ければ…。いえ、失礼しました。よし、俺と中野で戻るぞ。急ごう。」
そういって部隊員が本部への連絡に戻ろうとした時、都心を覆っていた黒い結界が一気に消えさり、大空が視界全体に広がった。急に明るくなった空に驚く隊員たち。だが秋田はすぐに状況を察し、通信機で連絡が取れるかを確認する。
「こちら秋田。本部応答願います。」
『…こちら本部。秋田大隊長ですか!?通信が復活したのですね!!』
「はい、こちらでは何もしていないので、都庁側で結界を発生させていた物を破壊したのではないでしょうか?皇居の状況をお伝えします。」
秋田は皇居内に入ることが出来たこと、皇族や総理大臣などが無事であることを伝える。また、現在、大隊を2つに分けて陽動を行っているため、皇居に入った部隊は少なく、皇居避難者の護衛は難しい可能性がある。
そこまで伝えたときに、待ち伏せ部隊から通信が入った。
『秋田大隊長!こちら南側陽動部隊!クトゥルヒを押さえきれません!救援を!救援を求めます!!』
「分かりました!至急向かいます!
中野さんはここに残って本部や北側陽動部隊と連絡を取ってください。他のメンバーは至急南側に向かいます!」
秋田は自身の小隊員3名を伴って国会議事堂に向かう。しかしたった4人が加勢したとして、状況が好転するだろうか。だが見捨てるわけにはいかない。悲壮な覚悟を持って4人は走り出した。
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~~Side 司令本部
「通信回復しました!」
「よし!各大隊に状況を確認するっす!必要に応じて本部の部隊を援護に出す可能性もあるっすよ!急ぐっす!」
宮城は情報部の面々に指示し、情報収集を急ぐ。都庁攻略隊からは都庁を覆っていた五大菩薩の結界が消えたこと。ホーリーが都庁入口でクトゥルヒと戦闘を開始し、他のメンバーは都庁に捕らわれている人たちを救出に向かったと報告が入る。大隊は都庁に戻ってくるアクマ、インボカやディープレギオンと交戦を開始。各方角からアクマが都庁に集まってきているという。通信阻害の結界を破壊したのは都庁の中に入っていったメンバーだろうとのこと。
皇居救出部隊は皇居に入り、避難者たちとのコンタクトに成功。だが、皇居周辺にいたクトゥルヒやアクマを引き付けていた南側の部隊が苦戦しているらしく、大隊長の秋田さんが救援に向かっている。反対に北側で引き付けていた部隊の敵は都庁に向かうものが多く、すでに戦いが終わっているようだ。
「皇居救出隊の北側陽動部隊に連絡。国会議事堂で陽動している南側陽動部隊の救援に向かうよう伝えるっす!」
「了解!」
「奈良司令!本部から皇居の避難者救助の部隊を出しましょう。状況によっては国会議事堂に向かうことも考慮します。」
「承認する。至急、3チームを向かわせるんだ!」
「都庁攻略隊の中村から連絡!捕虜救出の際に新たなアクマが出現。今までにない強力なプラーナを発しているそうです!八つの頭がある巨大な蛇のよう形状をしているとのことです!」
「新手っすか!?状況は?」
「玉乃井、コッチーの2名で応戦。他のメンバーで人質を救助するようです!」
「むぅ、厳しい戦いだな。」
「センゲより通信。都議会議事堂で結界を発生させていたと思しき物体を破壊したとのこと。この通信回復は彼らのおかげのようです!」
「うむ、よくやってくれた。センゲ君には高屋君のフォローに向かってもらおう。」
一難去ってまた一難。戦況は決して余談を許さない。
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