第133話 罠
~~Side ヴォルデア
5大菩薩による都庁封じ込め結界が張られた後。
『7階にヴァジュラパーラを発見しました。しかし結界が貼られており突破できません。』
5大菩薩は都庁の外に4柱、中に1柱でヴォルディアにさえ突破できない結界を張り巡らせていた。結界を破壊できずにいら立つヴォルディア。
『おのれ!何故突然現れた。なぜあれだけの力を持って顕現できたというのだ!』
『階下で結界を張るヴァジュラパーラですが、人間を依り代にしている可能性があります。また、周囲の人間たちも真言を唱え、全体で異常なほど大きなプラーナを発しているのです。』
部下が怒りで周囲に殺気をまき散らす中、部下のクトゥルヒが恐る恐る報告する。それを聞いたヴォルディアは少し考えてからつぶやき始めた。
『共鳴させて無理やりマルガからプラーナを引き出しているのか?そんなことをすれば人間たちの肉体が持つはずがない。…忌々しい奴等だがそう長くは持たんはずだ。よい、せいぜい数日で力尽きるだろう。放っておけ。だが、このタイミングで菩薩たちが仕掛けてきたということは、人間どもがこちらに攻めてくるということだろう。この時間を使って迎撃準備を整えるぞ。』
『はっ!』
『あれをヴァジュラパーラの結界の前に用意しておけ。』
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~~Side 玉乃井 美琴
「7階だよね!階段がある、あそこから上がろう!」
「!?」
『レベッカ、どうしたの?』
「向こう側、何かしら…」
「僕も向こうになんぞある気配がしますけん。レベッカさん達は7階ん救出にいってください。僕が向こうに何があるか見てくるわい。」
ヤチホがレベッカが気になるという都庁正面の奥側、東京都議会議事堂がある方向の違和感を調べてくると言って、自分のチームを率いて向かって行く。
「ありがとう、ヤチホさん!わたし達も行こう!」
階段からは人の頭が複数くっついた宙に浮く怪物が数体降りてきている。アクマデバイスによるとディープレギオンという名称のようだ。ミコトは手甲にプラーナを込め、殴り飛ばしながら進む。続いてカイトが負けじと生太刀にプラーナを込め光り輝かせながらディープレギオンを斬り裂く。レギオンは吹雪のような凍てつくブレスを放ち攻撃してくるが、レベッカが風を操りブレスを逸らす。コッチーはカイトのチームが遅れないよう、殿で敵を警戒しながら進んでいく。
7階に着くと、クトゥルヒが4体襲い掛かってくる。人質を監視していた者たちだろう。ミコトは3体の攻撃を捌き、一番奥にいた個体に攻撃を仕掛けた。ミコトに続いて7階上がったカイトはミコトが残した2体の攻撃を受け止める。続いて登ってきたレンがカイトと相対している1体に攻撃を仕掛け、ヘイトを受け持つ。残りの一体はカイトのチームメンバーが3人がかりで攻撃を防いでいる。リコは後ろで回復に備えた。カイトの近くを飛んでいたレベッカはカイトを飛び越し、ミコトが攻撃している個体にプラーナの鎖を伸ばして動きを止める。
「ナイス!レベッカ!」
動き止まったクトゥルヒにミコトは飛び回し蹴りを2回転分首に叩き込み更に胸に押し蹴りを放った。頭を粉砕しレベッカの鎖すら引きちぎって吹き飛んだクトゥルヒは壁にぶち当たり黒いシミを作って消えていった。
「なんじゃあれは…」
カイトは奥で起きたことを目を見開いてみていた。相手しているクトゥルヒも一瞬後ろに目線をやり、驚愕と恐れを抱いたようだった。
「隙っど!」
そんなクトゥルヒの1体に必殺の剣を放ち、首を飛ばす。残りの一体はコッチーが放った白熱火球で燃え尽きた。
「うおっ!あっちぃぃ!!」
近くにいたカイトはコッチーの火球の熱で熱がっていた。レンはコッチーの火球が飛んでくる瞬間に大きく距離を取っていた。
相手を粉砕したミコトは触手でカイトのチームメンバーを攻撃していた個体に後ろから迫り、踵落としでこれをまた粉砕し、アッと驚くチームメンバーに向かってVサインをしている。緊張した様子だったリコがはぁっと大きく息を吐いた。
「さぁ人質を助けるわよ!」
レベッカの声で気を取り直した面々は一般人にしては大きなプラーナを発する会議室に向かって駆け出した。
会議室の前まで来た時、コッチーが何かを感じたように、ニャッ!と普段では聞かない大きな声で鳴いた。
「さ、下がりなさい!」
レベッカが焦ったように指示する。だがその声に反応できたのはコッチーとミコトだけだった。コッチーは大きく後ろに飛び退いたが、反応できなかった面々を守るためにミコトは手甲に大きな岩の盾を発生させてガードする。
その時、ドゴッ!と大きな音を立てて、扉を含めた壁が吹き飛んだ。かろうじてカイトとレンは障壁によるガードが間に合い、他のメンバーはミコトの盾によって飛んできた壁の破片から守られる。そして、壁を破壊して出てきたのは太い蛇の体を軸に更に7つに枝分かれした体が伸びそれぞれに頭がついた異形の怪物だった。
『ヒュガアァァァァァッ!!』
えも言えぬ音で叫び声を上げる怪物。通常のアクマとは完全に別格の存在であるかのように、アクマデバイスには何も表示されない。
「なんじゃぁぁっ!こいつはぁぁ!?」
カイトが驚きを声に出す。だが彼のチームメンバーは完全に声を失って微動だに出来ずにいた。完全に格の違いを感じ、死が間近に迫っている感覚に襲われ、ただ汗を流すだけだ。
「ま、まさか…ヒュドラ?」
「レベッカさん、ご、ご存じなのですか?」
「邪神の眷属のヒュドラに似ているわ…でもサイズもプラーナの大きさも全然小さいから、その出来損ないか何かかも。」
「こ、このプラーナで、ち、小さい…です…か…。」
レンも動けないほどではないが、ヒュドラもどきが発するプラーナには圧倒されていた。ホオリ達と行動したことによって大きくレベルが上がっていたことと、格上と戦ってきた経験が彼を少しだけ冷静にしていたにすぎない。
そんな中、ミコトとコッチーが前に出る。そして気合一閃、巨大なプラーナが二人を包んだ。ミコトの頬に伸びる線が緑に発光し、その目は金色に輝いていた。
『ここはわたしとコッチーでやるよ。みんなは人質を救出して!』
エンカウント:Lv35 ディープレギオン / Lv40 クトゥルヒ / Lv65 デミ=ヒュドラ
籠め最後のミコトのセリフが『』なのは神魔人としての力が強まっているためです。
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