第14話 不穏な影
ボス戦開始!
神社川に沿って進んでいくと、単発的にピアレイが襲ってきた。多くても2体しか同時には現れず、1体で出てくる方が多かった。比較的余裕もあったので宮城さんに送るようにピアレイの写真をスマホで撮影しておいた。
さて、この先には河川敷公園があったはずだ。もし、ピアレイを集めている奴がいるとすれば、そこかもしれない。
今もまた単体で出てきたピアレイを倒し、そこで一度足を止めた。
「この先が河川敷公園になっていて、結構な広さがある場所に出るんだ。集まっているとしたら、そこなんじゃないかと思う。」
「なるほどね。あり得そうな話だわ。数も分からないところに突撃しても無駄死にするだけだから、私が先に見てきてあげるわ。」
「危険じゃないか?」
「私を誰だと思っているの?忍ばせたらロカ・プラーナ一と言われるスーパースパイのレベッカ様よ!」
(なんでスパイを知っているんだよ。一週間前にアッシャーに来たばかりのくせに。)
「なによ?」
「イエ、ナンデモ ナイデス。」
レベッカは少しだけ高度を上げて河川敷に向かっていく。なんだかレベッカの姿がぼんやりして見えるような。本当に隠密能力が高いのかもしれない。
俺は偵察をレベッカに任せ、コッチーと一緒に少しだけ川から離れ、草が高くまで伸びている場所に腰を下ろした。バックパックからペットフードを出して掌に乗せるとコッチーがカリカリと食べてくれた。俺も水を少しだけ飲む。
レベッカを待つ間、コッチーと休憩しつつ、俺は思いついたプラーナの使い方を試していた。今回、ピアレイには炎がよく効いていたと思う。であれば炎に変換したプラーナを上手く使うべきだ。
しかし炎というのは殺傷力が高いようで、ただ炎をぶつけたり、炎であぶったりするのでは少々効率が悪い。炎が相手を完全に包むような攻撃なら大きなダメージも与えられるだろうが、俺のプラーナではそこまで大きなものを生み出したり維持することが出来ない。
であれば、火矢のように相手に刺さるのはどうか。刺さるには先がとがっている必要があるが、実は秋田さんに教わったバレットは銃弾をイメージするだけあって、刺突力が高い。
つまり、バレットと火球を合体させ、炎の弾丸を打ち出せばいいのだ。
手のひらの上に生み出した炎を細く弾丸のような形にし回転させる。それをバレットの要領で打ち出してみた。
かなりイイ感じなのではないだろうか。相手に突き刺さり燃やす。回転速度を上げれば貫通力も見込めるかもしれない。使い分けしてもいい。これならピアレイにも十分なダメージを期待できるはず。コッチーのイカヅチと合わせて、多数を相手にする際の強力な武器になる。
我ながら上手くいったと嬉しくなっていると、レベッカが戻ってきた。
「ホオリの予想通りね。河川敷公園にピアレイが15体くらい集まっていたわ。問題なのは集まってきている、じゃなくて、生み出されていたってこと。
で、生み出しているやつなんだけどアクマっぽくないのよ。少なくともロカ・プラーナから来た奴じゃない。ニンゲンの体の上にタコを乗せてるような。タコが頭になっているのよ。」
「アクマじゃない…。人間ってことでもないんだよね?」
「ええ、ニンゲンじゃないわ。あんな禍々しいニンゲンがいるとは思えないもの。でも、プラーナの制御が甘いのか、ピアレイを生み出しても、統率が取れているのは15体までで、それ以上生まれると勝手にどこかに行ってしまっていたわ。」
「でも、ピアレイに時間をかけすぎると、無限に生み出されちゃうってことになるよね?」
「そうね、だから作戦は絶対に必要。どうにかしてタコ頭がピアレイを生み出すのに集中させない必要があるわね。」
「レベッカがタコ頭を牽制し続けるのは?」
「それでも良いけど、あまり長くは持たないわよ。私は戦闘に向いていないし、火力もないからホオリとコッチーがさっさとピアレイを全滅させる必要があるし、もし障壁とか持っていたら詰むわ。」
「そうか…。じゃあ、俺とコッチーで数を減らして、タコ頭に近づく道が出来たら俺が突撃してピアレイを生み出されないようにする。レベッカはコッチーのフォローをしてもらって、二人がピアレイを全滅させたら、俺に合流してもらって3人で叩くってのはどうかな?」
「そんなところかしらね。」
ニャニャ!とコッチーも同意していくれているようだ。
「コッチー、初手はコッチーの全体攻撃と俺のフレイムバレット乱れ撃ちでできるだけ数を減らそう。」
コッチーはニャッ!と力強く答えてくれる。やってやろうぜ、相棒!
「じゃ、まずは隠ぺいの術を使って近づきましょう。器用な私に感謝しなさい!」
さあ、戦闘開始だ!!
まずは、フレイムバレットの射程内まで走る。敵はまだ気付いていない。
「コッチー、行くぞ!
フレイムバレット!!」
コッチーから15本ものイカヅチが飛ぶ!俺もフレイムバレットを連射!
5体くらいは今ので倒せたんじゃないか?
続いて俺はひるんだピアレイに接近しバットを振るう。倒したのを確認すると、少し離れたピアレイに対してフレイムバレットを撃ち込む。そしてまた接近してバットで殴る。
コッチーのイカヅチも継続して飛んできている。残り6体か?
タコ頭までの道が見えた。コッチーなら感じ取ってくれると信じ、俺はタコ頭に向かってダッシュする。
途中で強いプラーナの気配を感じ、右に転がった。
俺がいた足元から水の柱が3本突き出ていた。
「貴様、何者だ。ニンゲンではないな?」
「お前こそ何者だよ。それに残念ながら俺は人間だ!」
「ニンゲンごときが我の操りし邪念どもを倒せるだと。いったいこの国は一体どうなっている。
まあよい、我に歯向かったことを後悔するがいい。貴様を喰らってニャミニャミの社を落とす前祝いとしてやる。」
「後悔するのはそっちだ。俺は高屋 穂織。名前ぐらい名乗りやがれ。」
「くくっ、小僧のくせに言いよるわ。よかろう、ここまで来た褒美として名乗ってやる。
我はヴォヴォル。偉大なるディープワンが一柱、ヴォルディア様の配下よ!」
名乗りを上げたヴォヴォルは、一気にプラーナを高め、バスケットボール大の水の塊を撃ち出してきた。
俺はもう一度右に転がり何とか水球を避ける。水球がぶつかった地面は大きな岩が落ちたかのようにえぐれていた。
コッチーとレベッカが来るまで時間を稼がないと。だが、水球をいつまでもかわし続けるのは難しそうだ。
俺は牽制のフレイムバレットを打ちながら、ヴォヴォルに近づこうとする。ヴォヴォルはバレットを鬱陶しそうに弾きながら、首辺りにあるタコの足を鞭のように振るってくる。
躱せない鞭は、盾を使って逸らすが、かなり衝撃がある。何度も受けると腕がしびれて使えなくなりそうだ。
フレイムバレットも当たらないし、バットが届く距離まで近づけない。ヴォヴォルの攻撃も回避するのが難しくなってきている。このままじゃマズイ…。
「グフフフフ、終わりにしてやろう!」
今までより小さい、テニスボールくらいの水球がばらまかれる。水球が地面に着弾するたびに小さな爆発のように水がはじけ、俺は身動きが出来なくなった。
そこに電柱ほどに太い水の柱が打ち出されてきた。
(か、躱せない!!)
エンカウント:Lv8 ピアレイ / Lv18 クトゥルヒ ヴォヴォル
戦闘シーンを臨場感を出して描くのが難しいです。
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