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プラーナの導く先へ ~崩壊した世界でネコとピクシーを仲間に、俺は英雄として生きていく~  作者: よろず屋


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第130話 決戦前夜

 ついに明日は都心攻略作戦を開始する。事前に秋田さん達が都心を囲む黒い結界への出入りについて確認していた。ハリティー様から出入りは自由にできるとの情報を得て、実際に人間でも同様に出入りが可能かを調べてくれたのだ。これまでに、物と昆虫では試してみていたが、人間だけを阻害するということがあっては取り返しがつかないため、試すことが出来なかった。ハリティー様の情報と明日の攻略に向けた決意の表れでもある。

 結果は無事に出入りが出来たということで、最悪撤退することも可能である点は安心材料の一つとなった。


 作戦には日本各地から戦力を集め、総力戦を行う。すでに鹿児島からカイトさんや出雲からヤチホさん達も集まっている。カイトさんは新たな力を得たと自信をみなぎらせていた。ヤチホさんは少しだけ暗い顔をしており、依然あったときのさわやかさが薄れていたように思う。俺達が進化した姿を見て少しだけプラーナが揺らいでいた。ちょっと心配になったが、聞きづらい雰囲気だったので、聞くことはできなかった。


 他にも大阪や名古屋など、俺達が辿ってきた各都市から部隊が集まっており、モールは前夜祭の様相を醸し出している。


「さすがに緊張しますね。」


「秋田さん…秋田さんでも緊張とかするんですね。」


「それはもう。年を取ると顔に出さないようになるだけで、内心はそれほど変わりませんよ。誰も経験したとこがない、今までに戦ったことがない強大な敵と戦うわけですからね。」


「そうですね。でも日本をこんな風にしたやつがいるはず…」


「攻略できれば一つ、何かが進みそうですね。でも高屋君、君は確かに戦闘力では誰も敵わないほどの力があります。突出していると言っていい。でも一人では限界があります。必ずね。今回もし攻略しきれなくても、生きて戻ればまた挑むことが出来るでしょう。命大事に、ですよ。」


「ははっ、それってゲームのやつですか?大丈夫です、命を懸けるようなことはしませんよ。大阪ではみんなに怒られたし、何より心配をかけてしまいましたから。」


 秋田さんはそれなら大丈夫ですねと笑って決起会会場に戻っていった。


「ようホーリー。」


「カイトさん。福岡ではお疲れさまでした。もう大丈夫ですか?」


「はっ、当たり前だ。あの後、雪丸と更に修行しちょって合体技も普通に使えるようになったんど。お前だけに活躍はさせんど。」


「雪丸と合体って…アクマデバイスを使う訳じゃないんですよね?神身一体とは違うんですか?」


「よくはわからん。デバイスは使わんど。神と一体になるのは以前見ているが、少し違うな。俺と雪丸の絆の力だっど。」


「無理してリコちゃんに心配かけないようにしてくださいね。」


「なんでそいでリコが出てくっとや。あいつは関係ねっちゅど。」


 そんなことを話していたら案の定リコちゃんがカイトさんを探していたらしく、私とも話しましょうといってカイトさんを連れて行った。明らかにリコちゃんはカイトさんのことを想っているんだよなぁ。中学生と大学生か…いや、4月になったから高校生になったんだっけ。こんな状況だから学校は始まっていないけど。多分5歳くらいの年の差。まぁ大人だったら普通の年の差か。カイトさんは口は悪いけど面倒見は良いし、正義感も強い。でもちょっと抜けているところもあるから、リコちゃんみたいなしっかりした女の子が合うのかもしれないな。


 そんなことを考えながら歩いていたら、ぼんやり外を見ているヤチホさんがいた。社交性が高い人だから、みんなの輪の中でバランスを取っている姿を見ていたせいか、一人でたたずんでいるのは少し不思議に思った。


「ヤチホさん、一人でどうしたんですか?」


「あぁ、高屋君か…」


 妙に暗い表情だ。秋田さんじゃないけど緊張しているのかな?あまりヤチホさんらしくない気がするけど。


「出雲の方はどうですか?生存圏が広がってきました?」


「そうですね、クトゥルヒとは遭遇してませんし、大きな問題はおきておらんけん。」


「かなり強いアクマと遭遇したって聞きましたけど。」


 ヤチホさんはフッと笑って、あれが強い?と自嘲気味な笑みを浮かべた。そして君たちなら瞬殺できるレベルのアクマでしたよ。と少しだけ不機嫌な雰囲気を纏って去っていった。そう言えばオッキーというオオカミを連れていたと思うんだけど、今回モールに来てから一度も見ていない。アクマデバイスに仕舞っているのかな。カイトさんは雪丸と常に一緒にいるからヤチホさんも同じかと思っていた。ちょっと暗い雰囲気と合わせて不安になってしまう。


「坊ちゃん、少しおかしいですよね。」


 後ろから声を掛けられた。振り向くとヤチホさんのチームの女性が立っていた。


「皆さんも何か感じているんですか?」


「西部の、島根の西部の方に探索を広げていった時に、人間を食べているアクマに出会ったんです。デバイスには魔王って表示されていて、私たちはアクマのプラーナの大きさに圧倒されて、一歩も動けなかった。でも坊ちゃんは一人で向かって行って、そいでやられてしまったんです。私たちはそれでも助けに行けなくて…そしたらオッキーが坊ちゃんに吸い込まれていったんです。そして坊ちゃんは黒い刺々しい鎧をまとって立ち上がって、あっという間にアクマを倒してしまいました。それから坊ちゃんは一人で行動することが多くなって…」


「オッキーってどうなったんですか?こっちに来てから見てないなって。」


「分かりません。坊ちゃんに吸い込まれた後、誰も見ていないみたいです。坊ちゃんの中にいるのかもしれません。」


「その黒い姿にはもうなっていないんですか?」


「はい…それほど強いアクマと交戦することがなかったからかもしれませんが…」


「何があったんでしょうね…明日は俺もできるだけ気にかけてみます。」


 ありがとうございますと頭を下げて女性は会場に戻っていった。その背中は悲しみに包まれているようだった。

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