第129話 神魔人
一部三人称視点での表現があります。
ミコトと目を合わせ頷き合う。
「王よ。欺くつもりでいたわけではありません。そして覚悟はすでに決まっています。なので、ここで俺達の進化をお見せします。」
『人間ニとっての初メテの進化ダロウて。余興トして考えていたワケではナイが、覚悟ガ出来ているナラ見せてモラウとしようか。』
奈良さんとレンが心配そうにこちらを見ていた。俺とミコトは二人に頷いて見せる。レベッカとコッチーは俺達の覚悟が決まっていることを知っていたのか、特に気にした風もない。二人は俺達が進化して外見が変わったとしても気にしないだろう。
建物内だと広さが足りない可能性があるため、俺達は王を伴って外に出る。スルト王は立ち上がると俺達の倍以上の背丈があるようだ。4mはありそうだ。他の巨人たちは2m半から3mと言ったところなので、更に一回りは大きい。
「この広さがあれば大丈夫でしょう。」
俺とミコトはスマホでアクマデバイスを起動。そして、進化の項目をタップする。
【神魔人への進化には人魔結晶をすべて使用します。進化すると元の種族には戻れません。】
注意文言が表示される。改めてミコトを視線を合わせ、どちらかともなく頷く。そして進化のボタンをタップした。
俺とミコトを人魔結晶が宙を舞い取り囲む。それぞれの結晶が光の柱に変化。天に向かって光が伸びる。そして周囲が暗くなり風も音も消える。
光の柱はホオリとミコトの周囲を回転し始め、徐々にスピードを上げていく。柱と柱の隙間がないほどの速度になり、一つの大きな円柱状になった時、強大なプラーナが大地から天に昇って行った。
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「こ、ここは…?」
俺達は光に包まれた後、真っ白な何もない空間に浮いていた。どこまでも白く端が分からない。見えているのはミコトだけ。
「何にもないところだね。」
ミコトの言葉にうなずく。すると後ろから声を掛けられた。
『まさかこんなに早く進化に至る者がいるとは、少し驚きましたよ。これもまたプラーナの導きでしょうか。』
振り向いた先には、黒いスーツ上下に白いシャツ。銀のネクタイをした銀髪の男性が浮かんでいた。顔は…なぜかはっきりと認識が出来ない。知っているような気もするし全く見たこともない気もする。そこにあってそこにない、そんな感じを受ける不思議な男性だった。
「あなたは…?」
『フフフ、僕はニャルラトホテプ。世界の中心たるアザトースの代弁者。プラーナの行く先を見守る者だよ。君たち人間が進化の果てに生まれたとき、少しだけ手伝ったことをと昨日のことのように思う。そしてまた新たな進化に立ち会えることが嬉しいよ。』
「ニャルラトホテプ?」
『まぁ僕のことは気にしなくていい。どうせここから出たら忘れてしまうよ。下手に覚えていられると、あの知識の泉とも言える妖精女王ちゃんに察せられちゃいそうだしね。』
レベッカのことか?何と言うか、非常に胡散臭い感じなのだが、同時に無条件で信じてしまいそうな妙な雰囲気を持った存在だ。こんなところに現れるくらいだから神と言うことなのだろうが、どうも今まで会ってきた神々とは様子が違う。しいて言うなら、“この星の神ではない“ような気がする。
「ニャルさんはどうしてここに居るんですか?」
『フフフ、君たちの進化を見届けようと思っただけさ。でも少しくらいなら要望を聞いてあげよう。なにか進化にあたって望むことはあるかい?』
望みか…特にはないんだよな。今より強くなれるならそれで良いんだが。
「わたしは、姿があまり変わらないようにして欲しいです!」
「あ、確かに。角とか尻尾とかは無しでお願いしたいです。」
『はっはっはっ!まぁ確かに見た目が大きく変わっちゃうと他の人間たちと一緒に生活しづらくなるよね。分かったよ。どうしても必要な部分はあるけれど、角や尻尾はやめておこう。さあ、君たちから新しい世界が始まるんだ。最初の神魔人。始まりの二人よ。プラーナに導かれ、新たな道を進むがいい!!』
ニャルラトホテプがそう叫ぶと、強大なプラーナが押し寄せ俺達の中に入ってくる。そして視界が真っ白になり何も見えなくなった。そこで俺達の意識は遠のいていった。
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『光中で何が起きているんだろう。ホオリちゃんたちは大丈夫かな?私たちの進化とは少し違う気がするよ。』
「そうね。でも心配だろうけど、大丈夫よ。あの二人ならおかしなことにならずに力を手に入れて戻ってくるわ。」
レベッカとキズナが少し心配しながら待っていると、徐々に光が薄らいでいった。そして光が完全に消え、空も元の明るさを取り戻した時、光の中心に二人の姿が見えてきた。
「ただいま、みんな。」
「無事、進化しましたー!」
コッチーが二人の元に駆け出し、ホオリの胸に飛び込む。レベッカとレンも二人に近づいていった。
「どうかな?どのくらい外見は変わった?」
「中であった人、あれ?誰だったかな?確か角とか尻尾とかは無しにしてくれるって。うーん思い出せないや。」
『もう、二人とも。心配したんだよ。でも変わらないようで安心した。変わったところは…』
姉さんによると俺達の外見はほとんど変わっていないらしい。体は少しだけ筋肉量が増えたのか、何となくがっちりしたかな?くらいで身長は変わらず。奈良さんの方が変わらず体は大きいみたい。あとは、俺は左目、ミコトは右目の下から線のようなものが伸びていて、俺は目の下からあごまでの直線が、ミコトは頬骨の下くらいから耳に向かって直角に曲がっている線になっているらしい。
『見セテもらっタぞ。それがお前タチ人間の進化カ。サテ、折角だ。力を見セテもらおうカ。』
「力を見せる?」
『なに、大したことではない。儂ノ攻撃を受ケルことと、儂に一撃入レルこと。この二ツだけだ。どうだ?』
「良いですよ!でもわたしの蹴りは痛いですよ!!」
と言うことで、スルト王の攻撃を受け、その後に一回攻撃することになった。進化してより分かるようになったが、スルト王は他の神さまと違って何と言うか上限が見えるような気がする。俺達が進化したから、そう感じるようになったのか、それともスルト王には他の神さまとは違う何かがあるのか。
『デハいくぞ。』
スルト王が拳を構える。俺は全身にプラーナを巡らせ、攻撃を受けられるよう力を込める。それを確認したスルト王は立った一歩で距離を詰め、俺の胸にその巨大な拳を叩きつけた。
ドウッ!と鈍いが強い音がしたと思う。全身をバラバラにされるような衝撃を受けながら、俺は全身の力で踏ん張ったが、3mほど後退させられた。足元は少しだけアスファルトが削られた跡が残った。
『ククク、耐エるか…面白イ…』
「次はわたしがいきますよ!!」
今度はスルト王が全身にプラーナを張り巡らせ攻撃を受ける体制になる。ミコトもまた今までにない強いプラーナを練り、スルト王と同じように一歩で距離を詰め回し蹴りを放った。
ドゴッ!と重い音を響かせ、スルト王の巨体が一瞬宙に浮き、2mほど吹き飛ばす。ダメージは入っていないか?スルト王は涼しげな顔をしている。さすがに巨人の王だけあって防御力もすさまじいのだろう。
『お主ラの力…見せてもらった。ククク、面白いニンゲンが現れたものダ。』
どうやらスルト王には認められたようで、都心攻略の際には北側から攻撃を仕掛けてくれることになった。俺達は目的をほぼベストとも言える形で達成することが出来たのだった。
エンカウント:Lv∞ ニャルラトホテプ
ニャル様の銀髪はニャル子さんイメージです。さすがに女体化はしませんでした。どちらかというと暇王ルイ・サイファーのイメージ
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