第122話 神と仏
若干の伏線回収
レベッカとコッチーが進化したため、俺達は実践訓練としてデミ=ニグラスまで来ていた。前に来た時と同様にデミ=ニグラスのプラーナ吸収と送信は止まったまま。クトゥルヒが再稼働させに来ていないのが少し疑問に思う。
「ねぇレンさん。クトゥルヒはなんでデミ=ニグラスを放置しているんだろう。邪神復活のために必要なんじゃなかったっけ?」
「そ、そうですね。ボクも正直不思議に思っています。宮城さん達情報部の見解を聞いてみたのですが、な、何かしらの事情で戦力をこちらに向けられないのでは?と言っていました。」
『少し希望的観測って気もするね。』
「そ、そうですね。世界崩壊直後は日本中で、特に自衛隊施設を中心にクトゥルヒの攻撃があったと見られています。しかし、その後、クトゥルヒが新たに攻めてきたという話が全く出てこないことからも、て、敵側にそこまでの余力がないのでは?と考えているようですね。」
「実際のところはどうか知らないけど、意外に当たっているかもね。確かに邪神は強力な存在よ。それこそ、この星の神が総出で封印したくらいには。しかも眷属たちも一緒にルルイエっていう邪神の拠点の都市ごと封印して海に沈めたの。かなりの年月が経っているから、弱い奴らから少しずつ封印を抜けて、長い年月をかけてこんな大それた計画を実行したと思うわ。万全を期したつもりだったんでしょう。でもこの島だけは計算外だったんじゃないかしら?」
「計算外?日本だけ特別なことってあったかなぁ?」
レベッカの言うことは納得感がある。だがミコトの言う通り日本だけの特別なこと。何だろうか…特に情報発信が全くないアメリカやヨーロッパ…。
「か、神の多さでしょうか?」
「そ、レンの言う通り。この島は神の集まり方がおかしいのよ。確かにこの島ってイザナギとイザナミがわざわざ自分たちの力を使って生み出した島だから他とは出自自体が違うわ。プラーナの流れも強力よ。だからアクマや神が集まるのはわかる。」
そうだったのか。確かにニャミニャミ様やヒュギエイア様って日本の神様じゃないけど、自分の土地に人間がいなくなっていたから日本に来た、みたいなことを言っていた気がする。それにオオヤマツミ様を始めとして人間に協力的な神様がたくさんいるのも事実。
「それでもオオヤマツミみたいに古代神の中でも上位の奴が当たり前のようにいたり、ムスペルヘイムの巨人たちが自分たちの領域を作ったり、邪神の眷属たちからすると想定外のことが複数おきているんじゃないかしら。」
『それでも追加戦力を送ってこないことの理由はちょっと分からないような気がするよ?』
「ほ、本拠地が何かしらの攻撃か妨害を受けているとか?でしょうか?」
「本拠地ってどこか分かっているんだっけ?」
「お、恐らく都心だと思います。こ、皇居の地下って超強力なシェルターになっているという話をご存じですか?」
皇居の地下にシェルター?そう言えば、そんな噂がどことなくあるっていう話を与太話レベルで見たことがあるような。
「それって都市伝説なんじゃないの?マンガの世界ではありそうかな?」
「も、もちろん事実はわかりません。ですが柴田府知事は天皇陛下たちが生きていることを妙に、か、確信しているような雰囲気があるんです。この状況で皇居の地下にシェルターがあったとして、邪神の眷属の攻撃を防げているのであれば、そ、それは神の力がかかわっていると、お、思いませんか?」
確かにレンの言うことも、あながち妄想じゃない気がしてきた。
『仮にシェルターがあって、神様の力が守っているとして、敵が攻撃されていることにどうつながるのかな?』
「ボ、ボクたちがほとんど出会っていない神様の種族?というか日本にはものすごく馴染みがあるのに、出会っていない神様がいます。」
出会っていない種族?そもそも出会った神様って、ニャミニャミ様、ヒュギエイア様、勢至菩薩様、バサンはどうだろう?神って言うか神の眷属か。サクヤ様とイワナガヒメ様、オオヤマツミ様、ヤマトタケル様、ホンダワケノミコト様、ネコショウグン、フツヌシ様、タケミカヅチ様、炎弧、ヒノカグツチ様、鍛冶神のゴブニュ様、ハリティー様、シーヴァル様にヴェルディ様…カイトさんの話だとオオナムチ(大国主)様とニニギノミコト様あたりかなぁ。ミコトはオオワタツミ様に、レベッカはティターニア様とオーベロン様にも会っているか。
「ん?仏様?仏様が全然いないような…」
「あ!確かに!神様って言うとちょっとイメージ違ったから気付かなかったけど、仏様って金南寺で勢至菩薩様に会っただけで、他の土地にはいないね。」
ミコトも気付いたようだ。
「そう、そうなんです。に、日本といえば仏教と神道が歴史的にも文化的にも関わりが深いはず。も、もちろんオタク文化の醸成で、か、海外の神様もたくさん認知されていますが、神社もお寺もたくさんあるんです。でも、仏様というくくりだと勢至菩薩様とハリティー様だけなんです。さすがにおかしいですよね。」
『実は仏さまっていなかったという話だったりはしないの?』
「仏ってマハースターマプラープタとかハリティーとかでしょう?もっと沢山いるわよ。すっごく沢山いる。戦闘メインのヴィディヤラージとか言うのもいたわね。」
レベッカが記憶を探るように言う。確かに日本って神様も多いけど仏さまも凄い沢山いるんだよな。お寺に行ってもどれがどの仏さまなのかよく分からないことも多い。
「ヴィ、ヴィディヤラージ…たしかサンスクリット語で明王様のことだったかと…」
『明王様って腕がたくさんあって武器を持っている武闘派の仏様、だったかな?』
そう言えば、奈良とか鎌倉の大仏様と違って剣とか独鈷杵?とかいう刃物を持った仏さまも色んなお寺に祀られていた記憶がある。姿のまま戦闘に特化した仏さまってことか。仏さまってお地蔵様とか優しいイメージだから戦っている印象って無いんだよなぁ。
「つ、つまりですね。ボク達が出会っていない仏様も実際は顕現していて、結界の中で皇居を守るために、じゃ、邪神の眷属と戦っているのではないか?という予想を立てています。」
なるほどなぁ。確かにそう言われるとそんな感じがしてきた。おっと、本来の目的は進化した二人の強さを確認するための戦闘訓練だった。デミ=ニグラスの周りはプラーナ吸収が収まった今でもアクマがいない地域になっているので、もう少し奥まで行ってみよう。
一応、狙って日本神話の神を多めに登場させていました。都心サイドの描写が全然できていないので、突然感があったかもしれません。この辺りからラストに向けてどんどん進んでいく予定です。
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