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プラーナの導く先へ ~崩壊した世界でネコとピクシーを仲間に、俺は英雄として生きていく~  作者: よろず屋


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Extra Story8 求むるは力か

大阪編に登場した出雲の守護神センゲ ヤチホのショートストーリーです。

若干鬱展開かもしれません。

~~Side 千家 八千穂


「はぁ…」


「どうしたんですか?坊ちゃん。ため息なんてついて。」


「あぁ、カイト君から連絡があってね…ちょっと…」


「ふぅん、まぁ何かあったら言ってくださいね。」


 まったく、少し会わなかっただけなのに、いろいろと状況が動いている。特に高屋君…また強くなったって?大阪で会った時でも十分すぎるほどにレベルの差を感じたというのに、カイト君が剣を合わせるまでもなく大きな力の差を感じたというのだから、その成長速度にはあきれるしかない。


 だが、それ以上にカイト君の身に起こったことだ。今までにない力を発揮した?歌として発せられたプラーナが見えた?更にそれを斬り裂いた?確かに神に授かったという生太刀は強力だったし、雪丸というウサギの強化術もかなりのレベルだった。攻撃の気迫も素晴らしい。だが、戦闘技術は粗削りだったし、視野もあまり広くなかった。正面対決であれば互角だったかもしれないが、何でもありの戦闘であれば僕の方が上だったと思う。


「はぁ、それが、雪丸と合体した?いったいどげなになっちょーだらか?」


 つい声に出してしまう。神の力を体に宿すことは禁忌だということが既に知られている。むしろ鹿児島からの情報だ。鹿児島で神の力を身に宿した女性は光になって消滅してしまったという。レベッカさんの話だとプラーナ・マルガという魂が流れていくプラーナの川のようなところに還っただけなので、またいつか転生するとか言っていた。だが、今世では死んだと同じ事。


 名古屋でアメノムラクモの剣を使ってヤマトタケル様を身に降ろした男性はまだ目覚めていないという。大阪で高屋君が神を降ろした時は彼の仲間とコノハナサクヤ様の力があってこそ生きて戻れたはず。


 それをたった2日寝ていただけで日常生活に戻れるなんて…。神ではなくアクマならば人間の肉体でも耐えられるということなのだろうか。


 なぜこんなにも僕より優れた人間が現れるのか。僕は子供のころから大概のことは何でもできた。出雲大社の神童と呼ばれ、それが当たり前の環境で育ってきた。上京するつもりはなかったので大学こそ島根大学に進学したが、医学部でトップ入学だ。模試でも東大はA判定だった。幼少から続けている薙刀術もすでに皆伝を受けている。


 少しだけモヤモヤした気持ちを抱えながら今日の探索任務に赴くのだった。


◆━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


「この辺のアクマはぼっけー強いだにゃー。坊ちゃん。」


「ええ、そうですね。あまり(とお)まで行かん方がええかもしれんね。」


 少しだけ今までより遠くまで探索を行ってみたが、徐々にアクマが強くなってきている。今のアクマはホァーポーとデバイスには表示されていた。背中に羽を持ち赤い顔をした60cmくらいの女性型のアクマで炎を操っていた。他にもピシャーチャという縦に避けた体にも尖った歯が生えた不気味なアクマもいた。


 僕はまだ戦えるが、チームメンバーはそろそろ厳しいだろう。僕たちの任務はあくまで探索。アクマを狩って制圧することではない。ここまで強いアクマが出るということは生存者がいるとは思えないし、引きどきだろう。


「坊ちゃん!さらに奥の方から人の声が聞こえました!」


「まさか!こげな場所に生き残りがいるわけないだら!」


「万一、本当に生き残りがおったら助けんわけにはいかんだら。慎重に進みましょう。」


 僕たちは声が聞こえたという方に向かってさらに進むことにした。しばらく進むとオッキーがグルルと警戒する声を上げる。近いのか…。


「みんな止まっちょーだら。あそげに何かおる。慎重に近づきましょう。」


 何か大きな影がある。そして確かにすすり泣くような声が聞こえる気がする。建物に隠れがら進む僕らが目にしたのは、おぞましい光景だった。


『グッグッグ、愚かなニンゲンどもめ…ほらほらもっと泣け、そして人間どもを呼び寄せよ。』


 大きな二本の角が生え、大きな鼻、牙が生えそろった口、5cmはあろう白いあごひげ、浅黒い肌に尖った耳…悪魔と呼ぶにふさわしい外見をした存在が、人間を喰らいながら、すすり泣く数人の人間たちにそう話していた。


 どのくらい動けずにいただろうか。止まっていたことにハッと気づき他のメンバーを見やる。誰もが目を伏せ汗を流し、体を震わせながら声を出さないよう必死に耐えていた。これはまずい。どう考えてもあのアクマには敵わない。撤退すべきだ。冷静に考えたらその選択肢しかない。援軍が必要だ。だが、あのアクマと戦えるのは?高屋君か?カイト君か?


「!?」


 そう考えた瞬間、頭の中が怒りで覆われる。いつから僕はそんなに弱くなった。子供の時から出雲大社の宮司の孫として生まれ、神に仕える者として修行してきた。世界崩壊後は出雲の守護者と呼ばれ、この地域で誰よりも多くの人を救った。僕がやらなければ僕の価値は無い。


 ふらりと立ち上がる僕をオッキーが服の裾を嚙んで止めようとする。オッキーお前も神獣として誰よりも強くあるべきだ。ついてこい。この僕に!


「坊ちゃん!いけんだ!!」


 仲間の止める声も聞かず、薙刀を手に禍々しいアクマに対して向かっていった。


 ◆━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


『グッグッグ、ニンゲンよ、やはり愚かだ…その程度の力で向かってくるとは。どれ、他に仲間はいないのか?ニンゲンをもっと喰らってやらねば余の恨みは晴れん。』


「復讐だら…」


『ああそうだ。あの忌々しい外神!そして外神にそそのかされ、余を神ではなく悪魔だと貶め力を奪っていった!だがもう外神はおらぬ!だが外神の下僕に成り下がったニンゲン共には余が!ペオル山の主神たる余が!裁きを下してやるのだ!』


「お前を貶めた人間はここにゃおらん…」


『余が収めた土地には誰もいなくなっていたのだ…愚かしくも外神を信じて死んでいったのだろう。だがこの島はどうだ!まだ沢山のニンゲンがいるではないか!あぁ素晴らしい!もっとたくさん喰らってやろう!』


 駄目だ、復讐だの言っているくだらないアクマすら僕には倒せない。力が…力が欲しい…誰もがうらやむ力が…


 オッキー…隠岐…いるのか…お前はマカミ…大口(おおくちの)()(かみ)だろう…僕に力をよこせ…お前の神の力を…雪丸にできてお前にできないはずがない…よこせ…よこせ…


 オッキーが悲しそうに鳴いた気がした…


◆━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


『グググ、まさか神の力を使えるとは…だがその姿…余のようではないか…漆黒の体…鋭い牙と爪…禍禍しいプラーナ…お前の中に闇が見える…見えるぞ…グッグッグ…余の憎悪も分けてやろう…』


 四肢を斬り飛ばされ、地面に転がりながらアクマが何かを言っている。弱ければ死ぬ、それは神だろうがアクマだろうが同じだ。貶められた?もとは神だった?くだらない、くだらない。お前は僕の力に敗れた。そう、それだけだ。そして僕は誰よりも強い。


 アクマから何か黒いものが流れてきたのを感じたが、その後すぐに僕の意識は遠のいていった。

エンカウント:Lv31 カハク(ホァーポー) / Lv31 ピシャーチャ / Lv44 魔王 ベルフェゴール


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