第118話 和菓子は好きですか?
「さて、武蔵野に戻ろう。」
シーヴァル様たちもすぐに次の目的地に向かって発つそうだ。空を飛んでいくとか言っていたから俺達より早そうだなぁ。まぁヨーロッパに向かうのかアメリカに向かうのかは分からないが。
「そう言えば、長崎院長が途中で寄って欲しいって言ってたんでしょう?」
「あ、そうそう。なんだかよく分からないけど、健康診断を兼ねて一通り調べさせて欲しいってさ。」
『ホオリちゃんとミコトちゃん二人とも?』
「うん、一応ね。あとレンさんもだよ。姉さんやレベッカも診てもらう?」
「私は興味ないわね~。二人が検査に行っている間、ヒュギエイアのところでスイーツでも食べているわ!用意しておくよう言っておいてね!」
『そろそろ、お菓子も減ってきてそう。さすがにこの状況だと新しいものは作れていないんだよね?』
「そ、それが、そうでもないようですよ。も、もちろんお菓子工場なんかは、か、稼働していませんが、砂糖や大豆はあるので、わ、和菓子なんかは生活に潤いをなんていって作っている人も少なからずいるそうです。」
なるほどね。確かにカカオは輸入ものだからチョコレートって新しく作れないんだよな。一応、沖縄や小笠原諸島などの南方の地や三重県や石川県で栽培に成功した例はあるらしいけど、生産量が限られていることと、現在、生存圏が確立していない場所なので確保は難しそう。
「チョコレートは難しいんだよね?」
「そ、そう言えば、ゴボウをカカオの代わりにしてチョコレートを作っている、か、会社がありましたね…」
『ニャッ!?ゴボウでチョコレート!?色は…いやゴボウは白いよね…でもカカオが無くてもゴボウで作れるなら、そのうちチョコレートもまた食べられるようになるかな?』
「チョコレートは腐らないんだから、まだまだ沢山お店に残っているでしょう?回収できていないところは沢山あるんだから、私たちが回収してきても良いわよ!」
おいおい、お菓子のためなら苦労もいとわないってか?まぁレベッカらしいけどさ。そんな話をしながら、途中、大阪で一泊して俺達は東京に戻るのだった。
長崎病院では俺とミコトがレントゲンや採血などの検査を受ける。詳しい検査結果は後日と言うことだ。まぁ最近は風邪もひかないし、プラーナのおかげなのか体は丈夫になっていると思うから心配はしていない。
むしろ、随分と筋肉がついたなぁと我ながら自分の肉体に驚きを感じたし、腹囲などを測定する際の看護師さんの驚きの顔が少し印象的だった。まぁ格闘家みたいな体になっているよなぁ。レンも結構筋肉質ではあるけど、やっぱり俺の方が体は大きい。レンの視線がちょっとだけ怖かった。
検査が終わってレベッカたちと合流する。少しずつ流通し始めた和菓子を堪能してだらけ切っている姉さんとレベッカを見て、少しだけムカッとした。まったく…。
「二人ともちょっとダラケ過ぎ!さぁモールに帰るよ!」
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~~Side ??
そいつは厳重な警備を潜り抜け、突然現れていた。この地を制圧して以来、何度か邪神の手のものが攻撃を仕掛けてきたが全て撃退している。我々に勝てないことを理解したのか、最近ではちょっかいをかけてくることもなくなった。だが、決して警戒を怠っていたわけではない。プラーナの感知と兵士たちによる巡回により十分に足りる警戒体制であったはずだ。それなのに、どうしてこいつらはここにいるのか。
『貴様ラハ何者ダ?』
『なに、旅のものだ。懐かしい気配がするので寄ってみたにすぎん。王は顕現しているのか?』
本当にこいつらは何者だ?プラーナを全く感じない。確かに今のアッシャーはプラーナを知覚できず、プラーナとは無縁の生き物が生活していた。だが、ロカ・プラーナとつながって以降、ニンゲンたちもプラーナを吸収し扱うようになっているはず。虫や木々なども少なからずプラーナの影響は受けているであろうことを考えると、プラーナを持たぬ存在など考えられない。だとすると、目の前にいる二人はプラーナを察知できぬレベルまで完全に抑えることが出来るということだ。
『ソレヲ答エル必要ガアルノカ?』
目の前の存在が恐ろしいと感じたのは王を前にしたとき以来だ。本当に何者なのだ。だが、王に仇なすものであれば命をかけてでも止めねばならぬ。
『なに、王の古い知人だ。シヴァが来たと伝えてくれ。それで会わぬというのであれば構わんよ。』
『私たちは争いに来たわけではありません。そう硬くならずに…王はこの方の名をご存じでいらっしゃいますよ。ご安心ください。』
シ、シヴァだと!?まさかあの破壊神なのか?しかし目の前の男が、邪神との戦いにおいて、味方のはずの神々やこの星の大地に配慮もせずに破壊の限りを尽くした破壊神とは思えない。もし本当に破壊神であれば、ただ歩いて通るだけで我らなどが止められるわけがない。
努めて冷静な振りをしながら部下にこの場を任せ、王にシヴァという来客について伝えに行く。声が震えなかっただけ自分を褒めてやりたい。
王にシヴァの来訪と告げると、少し嫌そうな顔をしながら、王座まで通せとのお達しだった。
『王ガ会ウソウダ。付イテコイ。』
王の間に来客二人を通す。あまりに不穏な空気が漂っているため、急いで王の間を離れた。
『久しいナ、破壊神ヨ…何ノ用ダ?』
『お久しぶりでございます。スルト王よ。お目通りいただき感謝いたします。』
『まぁそう警戒するな。何もせんよ。ただ、そう遠くないうちに人間がこの地にやってくるだろう。恐らく敵対ではなく話し合いを求めてくる。話くらいは聞いてやってくれ。』
『ナゼ人間如きの話を聞イテやらねばならん。』
『邪神が敵なのは同じだろう?』
『我ラの領土を奪おうとスルならば容赦ハせん。』
『その時は戦えばよかろう。恐らくそうはならんだろうがな。』
『何故ダ?』
『この国の人間はその数を大きく減している。お主らと争って更に数を減らすリスクを取るくらいなら、この土地くらい取り返す必要は無かろうよ。』
『この国の民たちはあまり好戦的ではないですしね。皆様が領土欲をかかなければ共存できましょう。』
『先のことはワカラン。ダガ、この島はプラーナの巡りガ他と少シ違うな。』
『イザナギとイザナミが二人の力を合わせて産んだ島だからだろう。この星が再生の過程で出来上がった大陸とは違うのだ。』
『ソウカ、奴らの島カ…』
エンカウント:Lv?? ムスペル / Lv?? スルト
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