第117話 進化
改めてアクマデバイスの表示を確認する。
【高屋 穂織の進化条件を満たしました。高屋 穂織は神魔人に進化しますか?】
ん?あれ、追加で通知が来ている?
【センリの進化条件を満たしました。】
【マハーピクシーの進化条件を満たしました。】
「姉さん、レベッカ、二人も進化できるみたい…」
「あー、女王様の修行の最後にもらったアレか…。まぁ私の場合は魔人と戦って進化に必要なプラーナ量を超えたってことだから気にしないで良いわ。」
『私もロカ・プラーナで修行した時にいただいていた力があるから、レベッカと同じで福岡で強くなったからだと思う。ホオリちゃんとミコトちゃんの方を先に考えよう。』
そうなのか。二人とも進化のため必要なものを修行でもらっていたのか。俺達とは違って心の準備はできていたということだ。まぁ何度か進化しているしね。
「シーヴァル様、俺達は神魔人というものに進化できるらしいのですが、何かご存じでしょうか?」
『この機械…いや、このアクマデバイスという仕組みを作ったものは分かるか?』
「いえ、発行者が【AIAN】…アイアンって言うんですかね?ということしか分かっていなくて、恐らく全世界の生き残った人全員のスマホに勝手にインストールされていたみたいです。」
『そのようなことが可能な存在はわかるか?』
「うぅ~ん、そんなことが出来るのかなぁ。レンさん、何か思いつくことはありますか?」
「宮城さん達も、ア、アクマデバイスについては調べているそうですが、全く情報がないようです。ア、アプリ開発の経験者が解析しようとしたらしいですが、全く分からなかったという、は、話もXitterで確認されているそうですが…。神とかアクマみたいな人間より上位の存在なのでは?という噂程度の話はあるみたいですよ。」
『恐らくだが、これを作ったのは邪神に関係のあるものだろう。』
「「「!?」」」『ンニャッ!?』「や、やはり…」
ん?レンだけ反応が違う。何かを察していたということか?今まででそんな情報あったかな。
「と言うことは、アクマデバイス、ん~ん、進化は危険ってことですか?」
ミコトの疑問はもっともだ。
『いや、進化自体に邪神の思惑は関わっていないだろう。邪神の関係といっても必ずしも邪神の仲間、いや味方ではないと考えている。』
「根拠は?何か知ってるってことかしら?」
『プラーナは世界の中心から発せられ、世界を広げようと外へ外へと向かっていることは知っているな。邪神はその世界の中心から来たと考えられている。そしてそこには邪神と同じかそれ以上の存在が複数いるであろう、というのが儂らの考えだ。』
邪神と同等かそれ以上…そんなのがもし地球にやってきたらどうにもならないんじゃ…いや、何十億年も邪神以外は来ていないなら、今さら来ないのか?邪神が封印されているのに助けにも来ないし。だから邪神の味方ではないってことだろうか。
「世界の中心、アザ…『レベッカさん、名は唱えない方が…』っとそうね。でも人間にちょっかいをかけそうな存在って言うと…アレだって考えているってこと?」
『はい、私たちはそう考えています。かの方は何を考えているか分からないところがありますが、このように器用なことが出来るのは誰か、と考えれば、かの方でしょう。何のために、誰のために、ということは全く分かりませんね。愉快犯、という可能性すらありますし。』
レベッカが何かを言おうとしていたがヴェルディ様に止められている。邪神の名前も口に出さない方が良いって話を聞いているし、世界の中心に居る神々って相当ヤバいんだろうな。でもかの方って誰だろう。世界の中心に居る神々の一柱なんだろうか。出会わないことを祈りたい。
『話を戻す。そなたらの進化についてだ。進化してもそなたら自身の精神性が急に変わるということは無いだろう。あくまで全く違う精神性の存在にはならない、という意味だが、そして肉体的な変化は正直わからん。ほとんど同じような外見なのか、大きく見た目から変わる可能性もある。』
「角が生えたり、ですか?」
『あるだろうな。だが一番変わる部分は限界値だろう。今の肉体はアッシャーで生きるためのもので、もともとはプラーナを知覚することすらできないものだった。だが、プラーナを使った進化となれば、アクマもしくは神に近づくと考えるの自然。今のままであれば、早晩、そなたらが保有できるプラーナは限界を迎え、それ以上増えなくなる。だが進化することで神に近づき、無限にプラーナを保有できるようになるだろう。』
「た、単純にこれ以上強くなれるって、こ、ことなんですね…今でも十分すぎるほど、つ、強いと思いますが…」
レンが少し引いているな。確かに今のところ、俺達より強い人間には出会っていない。鹿児島では最強のカイトさんだって、正直に言って俺達よりはプラーナの量も少ないし、戦闘力も低いと思う。連絡は取っていないけど、出雲のヤチホさんも同様だろう。世界にはもっと強い人がいるかもしれないけどね。
『ホオリちゃんたちがこれ以上強くなる…か…』
「強くなりすぎると、人間の社会で生きていくことに支障が出るかもしれませんね。でも魔人には、特にトランペット天使には苦戦したしなぁ。」
『故に、“何を成し遂げたいのか”を再度考えてみるが良い。想像の域を出ないが、この島を攻撃している邪神の眷属くらいであれば人の身でも倒すことが出来るだろう。だが、それ以上の存在は難しい。この島にはムスペルヘイムの炎の巨人も顕現していると聞いているしな。王がいれば、人の身のままでは対抗できまい。』
日本は救える…か…。
「日本は…ですか…その先というと…」
「世界…」
俺とミコトのつぶやきに首を縦に振るシーヴァル様。先のことって考えていたけど、日本を邪神の侵攻から救ったら、次は世界に目を向けることもあるのか。一介の高校生には想像できないことだし、誰かほかの大人たちが考えて、行動してくれればいいんじゃないか、という気持ちも無いではない。
『今すぐに進化をしなければならない訳でないと思います。少し時間をかけて考えてみてはいかがでしょう。他の人の意見も聞いてみるのも良いですよ。』
『ただし、急に目の前に必要性が迫ってからでは遅いこともある。よくよく考えるのだな。』
『ミコトちゃんはお父さんと話し合ってみたら?』
「はい、そうします。ホオリくんも、いや、みんなも意見を聞かせてね!」
「な、奈良さん達大人の考えを聞いてみるのも、い、良いかもしれないですね。」
よし、俺達の進化については色々と意見を聞いてみよう。もしかしたら世界中のどこかで同じような境遇の人もいるかもしれない。宮城さんに聞いてみるのも良いだろう。ということは、まずは東京のナイン&Jモールに戻るとしよう。
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