第114話 目的
外神関連の説明回
とりあえず、人間の魂が次の世界に渡っていって、たどり着いた世界でまた人として生活しているということは分かった。日本人は比較的、輪廻転生の感覚を持っている人が多い民族なので、嫌悪感や違和感は特に感じない。仏教だと六道輪廻から解放されることを目指すんだったかな?おっと思考がそれた。
今現在、判明している世界は4つ。4つ目は最近になって観測された世界であり、まだ詳細は不明。ヴェルディ様のお姉さんであるウルディ様が何人かの人間を連れて調査を開始したところらしい。人間と言っても“トリーニ”の人間なので、俺達とはかなり異なっているみたいだ。
シーヴァル様たちは長い間、先の世界に進むことを阻んでいた“外神”と呼ばれる存在と戦っており、少し前に“トリーニ”で外神たちを打ち倒し先の世界に進んだ。“トリーニ”での決戦では“エカム”で暗躍していた外神も世界を渡って参戦し、大決戦だったらしい。シーヴァル様たちは“エカム”で外神をけん制していたが、現在、連絡が取れなくなっているヴェルディ様の妹のスクルディを探しに来たそうだ。
『エカムから外神がいなくなったので妹もその役目を終えたはずなのです。ですが、エカムの外神がトリーニ大戦に参戦する少し前から連絡が取れなくなっていまして…』
「死んだんじゃないの?」
おい!レベッカ!言い方ってものがあるだろう!
『私たち三姉妹は本来三柱で一つの女神なのです。なのでもし妹が死ぬ、つまり消滅していたら分かります。しかし、どこにいるのか検知が出来なくなっているのです。恐らく、封印されているのではないかと。』
「つまり、この世界に来られた目的は、封印されていると思われるスクルディ様を解放しに来たということですか。」
「そもそも外神って何なんですか!?神様とは違うんですか?」
「それは私も聞きたいわね。確か大阪の悪魔も外神がどうとか言っていたような気がするし、私たちがロカ・プラーナに移った間に“エカム”で何があったのよ。」
『外神の正体は恐らく積み重なってしまった人間の負の思念がプラーナによって人格を得た哀れな存在です。存在としては私たち神に近いものがありました。かの者たちは先の世界に魂が導かれることを阻もうとしており、プラーナの導きのままに先に進むべきとする私たちと対立していたのです。』
『怨念みたいな感じなのかな?』
「ニンゲンの思念にそこまでの力があるとは思えないわねぇ。プラーナを知覚できない存在なのよ?」
『何者かの介入があった可能性はある。』
「何者か、ですか。」
『邪神のような、な。』
外神の出現に関しては誰も確かなことは分からないらしい。長年、“ドーヴェ”と“トリーニ”でシーヴァル様たちと戦ってきた存在だが、“トリーニ”で人間が増え、繫栄し、さらに先の世界に進もうとしたところで侵攻してきた。古代神にも匹敵する力を持った存在が突然現れるというのは完全に未知の事象であり、未だに詳しいことが分かっていない邪神と関係があるのではないかという説が有力。
「なぜ人間の思念の集合体だと分かったんですか?」
『“ドーヴェ”で外神を一体倒したのだ。その時に外神からあふれ出たものが人間の邪心だった。』
「マルガに流れたニンゲンの邪悪な心が溜まりに溜まったものってことか…でもそれを集めて神にしたものがいるかもしれないって事ね。」
『そうだ。あくまで可能性だがな。』
うーむ、壮大な話だ。というかよくわからない部分も多い。みんなも完全に理解しているって訳でもなさそうだよなぁ。まぁ俺達に直接関係があるかと言われると、なさそうだけれども。
「こ、この世界、“エカム”にいた外神は、な、何をしていたのでしょうか?役割と言うか…」
『エカムの外神は「マーセマエル」という名だ。こやつの役割の前に、エカムの役割を知る必要があるだろう。』
シーヴァル様によると、それぞれの世界には魂を先の世界に進めるための役割があり、外神もその世界の役割に関係して動いていた。“エカム”の役割は、「魂を癒す」こと。先の世界は“エカム”程優しい世界ではなく、厳しい環境であるらしい。その厳しい環境で戦うと魂が傷つき、最悪の場合消滅する可能性すらある。そのため、酷く傷ついた魂はそれぞれの世界で生まれ変わるのではなく、“エカム”に戻ってきて生まれ変わり、その傷を癒すのだそうだ。
ちなみに“ドーヴェ”の役割は魂の鍛錬、“トリーニ”の役割は魂の拡張とのこと。
“エカム”の外神「マーセマエル」は魂が癒えて“ドーヴェ”に向かわないよう、魂を弱らせる役目を担っていた。
「魂を弱らせるって、具体的にどうやっていたんでしょうか?」
『詳しいことはスクルディに聞かないと分からないのです。でも、自分を崇める集団を作って精神を誘導したり、エカムの神を邪悪な存在として迫害することで、神の力を削いだりして加護を消したりしていたと思います。例えば神は一柱しかいない、他は邪悪な悪魔だ、のような教えでしょうか。』
「そ、それは唯一神をあがめる宗教がまさにそれ、な、なのでは…」
「レンさん、どういうこと?」
「て、天神にいた天使、つまり、ト、トラータ教ですよ。世界最大の、しゅ、宗教組織ですし…日本の宗教のように、敵対する勢力があがめる、か、神を神として取り込むのではなく、悪魔として貶めて迫害するという手段をとってきた、れ、歴史があります。」
「でもエカムには外神がいなくなったんだよね?天神にいた天使たちは人間だったはずだよ?」
そうだ、ミコトの言う通りだ。外神がいないのに人間が天使になっていたのはおかしいような気がする。どうもしっくりこない不整合のようなものがあるが、スクルディ様ならば分かる可能性があるとのことで、今時点の情報では判断が難しいということになった。
そんな話をしながら鹿児島に向かっていたのだが、シーヴァル様が途中で、霧島神宮の方に向かって欲しいと言われた。どうやら日本の神様にスクルディ様がどこで封印されているか情報を得たいらしい。もともと鹿児島市まで一緒に行く予定はなかったので、霧島神社でシーヴァル様たちと一度分かれて、カイトさん達の状況を確認してから、俺達も霧島神社に向かうことで話がついた。
「では、明日にでもこちらに戻りますので、お待ちいただけますか?」
『うむ、急ぐ旅でもない。慌てず仲間とゆっくり話してから来るがいい。だが、いくつか助言できることもあるだろう。必ず来るのだぞ。』
「分かりました。」
もしかしたら進化についても何か知っているかもしれない。流れ的に聞き損ねたけれど、天使との戦闘の最後に敵の動きが鈍ったのはシーヴァル様が何か手助けしてくれたのかもしれないし、聞きたいことはまだあるな。
『とりあえず、カイトさんの容態も気になるし、鹿児島に向かいましょう。』
「はい。う、運転は任せてください。み、皆さん乗ってください。」
「私とキズナは前に乗るから、ホオリとミコトは後ろの席で仲良く隣に乗りなさいな。」
レベッカ!そういうのは良いから!
クトゥルフ神話に出てくる神々を”外神”と評することがありますが、本作では別の存在を”外神”としています。
もし混乱を招いていたら申し訳ございません。
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