第12話 レベリングそのに
適正レベルまで上げましょう
防具は重要という話
次の日、宮城さん・福島さん・秋田さんと共に改めてレベリングに来ていた。オンモラキは危険だが、スライムや餓鬼は何とかなる。まれに好戦的なピクシーに遭遇することもあったが、レベッカが話をつけてくれたおかげで戦闘になることはなかった。
ピクシーは小さいので攻撃が当てにくいだろうし、衝撃波を放つこともでき、回復までできる。正直、このメンツで戦ってもコッチー以外まともに戦えそうになかったので助かった。
明日には俺が西側にある八幡小学校に向けて出発する。その下見を兼ねて今日はモール西側でレベリングを実施中だ。
スライム、餓鬼は問題なく倒すことが出来ている。人数も多いので、アクマが複数体いても俺やコッチー、レベッカのサポートで宮城さんたち三人も余裕を持って対処できている。
練習したプラーナ知覚と操作によって、吸収できるプラーナ量も確実に前回より増えているようだ。秋田さんなんかは目に見えて動きが良くなっているのが分かる。
本人曰く、20代の頃より体が自由に思った通りに動いてくれるというのだから、この人実はすごい人なんじゃないかな?
レベリングも順調のため、さらに先に進んでみることにした。この先はオンモラキとの遭遇の可能性が高まる。不意打ちだけは受けないよう、全員神経をとがらせて進む。
すると、少し道路が開けた場所にオンモラキ4体が漂っているのを見つけた。
「あれ、どうしますか?不意打ちできれば何とかなりそうではありますけど。」
「そうですね。遠距離攻撃ができるのはコッチーさんだけですか?」
「レベッカもできるみたいですが、基本的に戦闘には参加したくないみたいなので、コッチーだけだと考えていていいと思います。俺も火球は飛ばせますが、オンモラキ自体が火を操るので効果が薄いかもしれないですね。」
そんなことを話していると、コッチーがウニャッと気合を入れた顔をしている。策があるから任せろと言っているように見えた。
「コッチーに策があるようです。やってみましょう。コッチーが牽制のイカズチを放ったら、俺たち四人が接近戦でしとめる。どうですか?」
「グフフ、まかセロリ」
福島さんがニヤッと笑う。いや、ものすごく駄目そうな気がしてきた。が、コッチーはやる気だ。俺も気合を入れ直す。
コッチーの額の前にプラーナが集まったと思ったら、4本の筋を描いてイカヅチが飛んだ!同時攻撃かよ!コッチーすごすぎだろう!!
コッチーの秘策に驚いているわけにもいかないので、俺たちも全力でオンモラキに突撃する。プラーナをバットに纏わせることをイメージしてオンモラキの頭めがけてフルスイングした。
確かな感触!オンモラキは吹き飛びながら青白い光となって霧散する。他の三人が向かったやつらはどうか?
福島さんは両手それぞれに持ったバールで滅多打ちにして、反撃を許していない。もう倒せるだろう。秋田さんは木刀を使って、圧倒。ちょうどオンモラキが霧散していくところだった。
宮城さんは少し苦戦している。何度かバットが空を切っていて、距離を取られてしまっていた。あれはマズイ!火球が飛んでくる!
俺は急ぎ、宮城さんが相対しているオンモラキに向かうが間に合わない。
「宮城さん!」
オンモラキの火球が宮城さんに迫る。宮城さんはとっさに左腕に装着していた盾で火球を防いだ。体制を崩されてはいたが、ケガはしていないと思う。
俺は再度バットにプラーナを纏わせてオンモラキを殴った。すぐに青白い光となって霧散した。その時には福島さんが滅多打ちにしていたオンモラキも光になって消えていた。
4人がふうっと息を吐く。何とか無事に倒すことができた。
「右から2、左から1、追加で来たわよ!」
レベッカの怒声が飛ぶ!ほおけている場合ではない、まだここはアクマが跋扈する戦場だ。気持ちを切り替えて左右を見る。
その瞬間、太いイカヅチが右にいる2体のうち1体を貫いた。確実に数を減らす作戦だ。コッチーの意図を瞬時に理解した俺は、右からくる残った1体に突撃、手のひらを広げ、腕を前に伸ばしプラーナを光に変える。目くらましはどうだ!
成功だ!オンモラキは明らかに視界を失っている。俺はもう一度プラーナを纏わせたバットの一撃をお見舞いした。
左の1体はどうなった?
そこには驚きの光景が広がっていた。秋田さんが何か言葉を発した途端、手のひらから回転する光の弾のようなものが飛び出したかと思うと、オンモラキに直撃、オンモラキがひるんだ隙に木刀で殴打、うまく後ろからくる福島さんの方に押し出し、福島さんが両手バールでとどめを刺した。
「プラーナを回収して!いったん引くわよ!」
レベッカの号令で俺たちは安全圏まで撤退した。
「秋田さん、あの弾みたいなの、何なんですか?いつの間にあんなことを…」
「実際に使ったのは、先ほどが初めてです。私はプラーナがエネルギーそのものだとしたら、炎や雷などに変化させなくとも、そのまま打ち出せば十分に武器になるのではないかと思いまして。距離もあったので、試してみたら上手くいきました。」
とってもいい笑顔でそんなことを言う。あれ?この人落ち着いた常識的な大人かと思っていたけど、案外ギャンブラーなのか?
「ちなみに名前はあるんですか?あの技。」
「見たままですが、『バレット』と名付けました。言葉に出した方がコントロールしやすいみたいですね。」
なるほど、プラーナを使える人が増えると、その分発想の幅が広がって色んなことがわかるのかもしれない。バレットは使い勝手が良さそうなので、俺も練習しておこう。
宮城さんと福島さんは盾について話しているようだ。俺がオンモラキに左腕を焼かれた話をしたので、福島さんが併設のホームセンターにある金属板を加工して腕に固定する小さめの盾を作ってくれたのだ。
オンモラキの火球を防いでいたし、俺もあの時、盾をつけていたらケガをすることもなかっただろう。取り回しの言い防具というものは重要だと思った。
その後も、まだ余裕があるということで、西側の探索を進め、小学校までは行かなかったが、近くにある公園まで足を進めることが出来た。公園には数本の大きな木が立っていて、木の近くでは白くて薄っぺらい人型のようなアクマが出てきたが、コッチーを含めた5人の連携で危なげなく倒すことが出来た。
宮崎さんは木霊かなぁと言っていた。コダマって昔のアニメ映画に出てくる木の精霊みたいな存在だったと思うけど、人に襲い掛かってくるような奴だっただろうか。
アッシャーにつながってしまったことで狂暴化しているアクマなのかもしれないなと思った。
学校につながる道の手前に川が流れているんだけれど、レベッカがちょっと嫌な感じがするということで、これ以上は危険を冒さず帰ろうということになった。
「学校に近づくにつれてアクマの数が減ってませんでした?」
「そうですね、オンモラキと立て続けに戦闘になった交差点辺りが一番多く、学校に向かうにつれて数が減っているように感じましたね。やはり八幡小学校も土地の力が強い場所である可能性が高まりましたね。」
川のことは気になるが、小学校が避難所になっていれば、人が生きているということ。何とかたどり着いて連絡が取れるようにしたいと、俺は気持ちを改めた。
その日は、奈良さんにオンモラキくらいまでなら、宮城さんら3人の力を合わせれば何とかなりそうなこと、盾はかなり有効であろうこと、明日は俺たちだけで八幡小学校まで行ってみることを報告した。
ただし、宮城さんたちが強くなったとはいえ、レベッカのおかげでピクシーとの戦闘を回避できているので過信は禁物であることも付け加えておいた。
さて、明日は旅立ちだ。福島さんが、いろいろと用意をしてくれるそうだし、それを楽しみに今日はもう休もう。
エンカウント:Lv1 スライム / Lv3 餓鬼 / Lv4 陰摩羅鬼 Lv6 木霊
戦闘センス:ホオリ≧コッチー>>秋田さん>福島さん>宮城さん
秋田さんは剣道の有段者説
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