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プラーナの導く先へ ~崩壊した世界でネコとピクシーを仲間に、俺は英雄として生きていく~  作者: よろず屋


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第111話 終末を知らせるラッパの音

ネタバレタイトル

 踏みぬいた道路に放射状のヒビが入る。ヒヒイロカネに増幅されたプラーナが光を放つ棍が真っすぐに蒼騎士の胸に吸い込まれようとしている。


 その時、大きくトランペットが鳴り響いた。その瞬間、ガクッと体の力が抜けて突きの態勢のまま倒れこむ。蒼騎士はレンの刀を受けた鎌を振り抜きレンを吹き飛ばす。かろうじて受け身はとったようだが、ゴロゴロと転がり道路に投げ出されるレン。


「い、一体何が・・・」


 そして、コッチー、レベッカ、ミコトもまたそれぞれ対していた騎士たちに吹き飛ばされ地面を転がる。俺の頭を踏み抜こうと迫る蒼騎士の乗馬の蹄を重い体を何とか動かして、無様に転がる形で回避する。棍を杖にして立ち上がり、みんなのもとに向かう。それぞれ、ダメージこそ多くないようだが、体が思うように動かない様子だ。


 場違いなトランペットの演奏がまだ続いていた。


「何が起こったんだ?体が重い。」


「あの音よ…あの音でプラーナの流れが大きく阻害されているわ…」


 歌天使の強化版か?四騎士たちの後ろに7体のトランペットを持った天使たちが宙に浮いていた。


『『抗うな。邪なる悪魔に魂を売った罪人どもよ。すでに終末は訪れんとしている。トラータの神の下に人は救われるのだ。我らに身をゆだね、ハデースにて裁きを待つが良い。』』


 7体の天使たちが重なっていく…そして1体の3対の翼をもつ天使が現れた。手には変わらずトランペットを持っている。体に力が戻っていた。トランペットが吹き鳴らされている時だけプラーナが阻害されるのか。そこは歌天使と同じだ。だが威力が桁違いだった。


「ト、トランペットが鳴っていない、い、今なら!」


 レンがバレットを五月雨式に放つ。そうか、天使の歌は放たれた攻撃はかき消せない。トランペットを吹かれる前に攻撃すればいいのだ。俺はミコトに視線を送り、レンの攻撃を追いかけるようにバレットを放つ。バレットの大雨が天使たちを襲う。6枚羽の天使はゆっくりとした動作でトランペットを吹き鳴らした。


「ぐっ!な、なんだと…」


 ザァッと音が鳴るようにバレットがかき消される。更に俺達の体のプラーナも制御を失う。そこに攻撃を加えようと殺到する4体の騎士たち。


「くっ!くぅぅぅぅっ!やらせないわよ!!」


 レベッカが乱されるプラーナを無理やり制御してプラーナの塊を放つ。それは風弾に変換することすら難しいようで、純粋なプラーナの弾でしかない。だが、騎士たちではなく、その足元に着弾し道路を破壊、騎士たちの足を止める。その間にトランペットの音がやむ。体に力が戻った俺は急ぎ土槍で騎士たちを牽制し、肩で息をするレベッカを手で包みながら後退し距離を取る。


「あのトランペット、強すぎるよ!」


「こ、効果時間が短いのが、せ、せめてもの救いですね。」


 だが全く打つ手がない。あちらは自分たちの有利なタイミングでこちらの動きを完全に阻害できるのだ。騎士たちを迎え撃つことすらできない。レベッカで何とかプラーナを制御できるレベル。他の誰にもトランペットの音の中ではプラーナを練ることが出来ない。


「わ、私があのラッパ持ちのプラーナを阻害するわ。」


「そんな無茶だ!」


「やらないと全滅するわよ。私に任せなさい。力の匠たる妖精女王の末があんな新参の出来損ないにプラーナの扱いで負けたとあっては名が廃るわ。行くわよ!」


 悲壮な覚悟を決めたレベッカが飛び出す。クソッ!行くしかない!


◆━━━━━━━━━━━━━━━━━◆


~~Side 日照ニッショウ 海斗カイト


 天使の数を減らせなくなってきている。待ち伏せで削れる数より集まってくる数の方が多いのだ。引き付けるという目的は達成できているが、こちらの限界が近い。


「これっきゃもう持たんぞ。まだねーや、ホーリー!」


 先ほど捕まった人たちを救出してきたチームが合流。捕まった人たちを無事に助けることが出来たと報告を受けた。ホーリーたちは馬に乗った西洋の騎士のような天使たちと戦い始めたようだと言っていた。どれほどの敵なのかは分からない。だが男がやれるといった以上やってもらわねば困る。


「最悪、お前は逃げっせ。リコはまだ中学生じゃっど。」


「アホなこと言わんで。あたしだって戦える。最後までカイト君と一緒よ。」


 中坊が何を偉そうなことを。それにオレはもう誰かを守れないなんて絶対に許せん。あんなことはもう御免だ。英雄になれなくとも守り抜くのだ。もう、ここまできたらアレをやるしかないか。


「お前ら、ここからはオレ一人ですっで。全員、安全圏まで後退しろ。」


「だから、あたしも!」


「だまれ、リコ!隊長はオレだっで!おい、リコを連れていけ!!

 雪丸。すまんが付き合ってもらうど。」


 雪丸が俺の覚悟を感じ取ったように頷いた。リコが叫んでいるが知ったことか。お前は生きろ。なんでそんなに俺になついていたのか知らんが、子供を守るのは大人の役目なんだよ。今は守られていろ。その覚悟はお前が大人になったときのために取っておけ。


 手に握った生太刀に全プラーナを注ぐ。オオナムチノミコトよ。もう一度力を貸してくれ。あの時、クトゥルヒを葬った力を。オレの全てを賭ける!


 オレと雪丸が天使の群れに向かって走り出す。不思議と悲壮感はなく気持ちが晴れていた。あの時、彼女もこんな気持ちだったのか。生太刀を握る手に力がこもる。名も知らぬ誰かのために、沢山の人を守るために、オレは戦う!


 天使の歌にプラーナがかき消されそうになった時、何かがオレの中に入ってきた。熱い思いが、願いが、そして少しだけ呆れたような苦笑いが。


 オレの中からあふれ放たれた光が天使の歌をかき消す。何が起きたか分からないが、体が軽い。軽く前に進むと、10歩は離れていたはずの鎧天使が目の前にいた。自然に体が動き鎧天使の首を飛ばす。移動したのはオレか。


 その後はただひたすらに群れとなっている天使を斬っていく。どこを見ても敵、敵、敵。どんだけ集まったんだか。だが、飛んでくる矢も魔術もすべて見える。いや、感じる。歌として放たれるプラーナの波動すらも。


 少しだけ遊び心で歌の波動を斬ってみる。ピンと張った糸が切れて落ちるように波動も散り散りになる。そうか、ホーリーたちの見ている世界はこんな感じなのか。そして矢を打ち払い、魔術を躱し、槍を受け止め首をはねる。


『敵の動きが…見える…』


 いつも雪丸から受けるバフとは比べ物にならない。これは雪丸がかけてくれたバフの力ではないのか。それともいつの間にか雪丸の力がオレの想像以上に強くなっていたのか。だとすると、今までは雪丸が手を抜いていたということか?いや、雪丸は言葉こそ話さないが、思いは伝わってくる。そんなことをするような奴じゃない。いつだってオレがうっかり忘れることをフォローしてくれたり、戦闘力がないのにいつもオレのそばで戦ってくれもする。


 雪丸のバフではないが、それでも雪丸が近くで力を貸してくれていることだけは確信できる不思議な感覚だった。


 それからはひたすらに目に映る天使を斬っていく。


 しばらくして動くものがなくなり、斬られた天使たちが光になって消えた後、体からガクッと一気に力が抜けた。そのままオレは倒れこんだ。


「なんだ…力が入らんがよ…」


 視線の先には同じように倒れこんでいる雪丸が見えた。

エンカウント:Lv58 トランぺッター

カイト生存ルート。彼がどういった状態だったのかはこの先の話で説明があります。

ちなみに雪丸はカイトが連れている白ウサギのアクマです。可愛いやつです。


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