第110話 貫け!
同時系列複数視点
「ハッ!」
「ヤァッ!」
俺とレンの攻撃を空中に飛び立つことで回避する蒼騎士。すかさずバレットで追撃するも、障壁で防ぎきられる。空に逃げることが出来るのはかなりのアドバンテージだ。こちらはジャンプすれば届きこそすれど、空中で自在に動くことはできない。下手に飛び上がるとそれが隙になってしまう。
「せ、攻めきれませんね…こちらは二対一なのにっ!」
今、俺達は一人ひとり分かれて四騎士を相手にしている。コッチーと白騎士、レベッカと黒騎士、ミコトと赤騎士、そして俺とレンで蒼騎士だ。二対一で一気に決着をつけ、さらに数的有利を狙っていく作戦だったが、良いところまで追いつめても空中に逃げられてしまい決め切れない状況が続いているのだ。
「そ、空に逃れようとすることを前提に、さ、策を考えましょう。」
「それが良さそうですね。俺が土槍からの木縛で下から攻める。空に逃れようとしたところをレンさんが頭を押さえてください。受けられても構いません。それが隙になりますし。」
「わ、分かりました!」
俺達が作戦を話しているところを隙と見たか、蒼騎士は青緑のプラーナを帯びさせた鎌を横なぎに払った。鎌自体が届く距離ではないことから何かしらの遠距離攻撃か。
ドドッと音を立て、鎌から青緑色の弾が複数飛び出す。色からして少し嫌な感じだ。
「レンさん!大きく躱して!」
俺も棍で弾いたりせず、大きく距離を取って回避する。弾が当たった道路や電柱が薄い煙を上げて溶けているのが見えた。強力な酸か…えげつない攻撃をしてくる。俺は接近戦の方が分があると判断し、蒼騎士に突撃。棍での突きや払いを放つ。蒼騎士は時には受け、時には躱し、俺の棍を捌いていく。
「俺の攻撃は棍だけじゃないぞ!」
受けに回っている蒼騎士に対し、俺は足からプラーナを伝わせ土槍で攻撃。思わず飛び上がろうとする蒼騎士に、土槍の先から木の根を伸ばして拘束しようとする。蒼騎士は鎌を振り回し木の根を斬りながら空中に逃れようとする。
「たあぁぁぁっ!」
そこをレンが飛び上がり大上段斬りで上から斬り下ろす。蒼騎士は何とか鎌を持ち上げ、柄でレンの刀撃を防ぐ。ここだ!俺は地面を強く踏み抜いて全力の突きを放った。
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~~Side レベッカ
「術師同士、どちらがプラーナの扱いに長けているか勝負しましょう。」
天秤が先に付いた妙な杖を持つ黒い騎士に半包囲弾道で小さな風弾を多数放つ。さて、どう対処するか。氷の術や純粋なプラーナの弾といった術は見ているが、他にも隠し玉があるか、防御はどうか、戦い方を見せてもらうとしましょう。
『!!』
黒騎士は乗馬を含む全身を完全な球の障壁を発生させて風弾を防ぐ。風弾が次々に障壁を直撃するが全くゆるぎない。防御はなかなかのようだ。
「お次はこれよ!」
ホオリ達人間が使うバレットをより鋭く、より高回転で3発、複数方向から迫るように撃ち出す。さぁ防御してみなさい。今度のは痛いわよ。黒騎士は変わらず障壁での防御を行おうとするが、高密度高回転バレットを見て慌てたように回避しようとする。
「そんな簡単には避けられないわ!」
2発は何とか回避したようだが、最後の1発は障壁に突き刺さりビィィィと甲高い音を立てて障壁を貫通する。黒騎士は器用にも突き破ってきたバレットの先端に合わせて小さいが高密度の障壁を複数張ることで何とか耐えきる。
「そんな隙は許さないわよ!」
バレットを耐えている間にプラーナを練って爆裂風弾の全方位攻撃を追撃として放ち、乗馬ともども連続爆発の嵐に飲み込む。爆風の中からかなりの勢いでこちらに突撃してくる黒騎士。ダメージは入ったようだが動きの速さは変わらず切迫。杖の先端の天秤が傾くと同時に、超重力のハンマーが頭上から降ってくる。
何とか強風を自分に向けて発生させることで直撃を避けるが、危ないところだった。ちらりとホオリとレンを見るが、あちらも決着がつきそうにない。それにこいつらは…。お互い決定打に欠けるまま魔術勝負が続く。
そんな中、ホオリのプラーナが大きく高まり勝負を仕掛けていることがプラーナの動きから察せられた。ここで決まれば!
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~~Side コッチー
ニ“ャッ!
10本の束に分かれたイカヅチが白騎士を襲う。白騎士は弓で光の矢を引き、放つ。矢は30にも分かれてイカヅチを迎撃し、残った分はコッチーに向かっていく。コッチーは下がらず、むしろ前に向かって駆けることで光の矢を回避し、さらに飛び上がり、接近戦の雷爪で白騎士を攻撃する。白騎士はとっさに乗馬と共に空に駆け上がりそれを回避。
『滅びよ。』
さらに空中から逃げ場のないほどの矢の雨を降らせる。コッチーも負けじと大量の枝に分かれたイカヅチで矢の雨を迎撃。はじけ合う矢とイカヅチの間を縫って火球を放つ。白騎士は強固な障壁で火球を防ぎながら乗馬を突進させて、光の玉のようになってコッチーに体当たりを仕掛ける。
あわや直撃という所でコッチーは雷身でそれを回避。だが崩れた態勢で雷身をつかったため、電柱に引っかかり、道路を転がる。大きな隙をさらしたコッチーだったが、白騎士はコッチーを捕捉できておらず追撃は来なかった。
その様子を見たコッチーは白騎士が雷身についてこれないと判断するが、攻撃に使うことを躊躇する。万一カウンターを貰うようなことがあれば、白騎士がフリーになり、拮抗している戦場が不利になる。だがどこかで勝負をかけねば天使たちを引き付けているカイト達に危険が及ぶかもしれない。
ホオリが蒼騎士を制し、数的有利を作ってから大きく攻めるべきか、判断がつかぬままお互いの攻撃を撃ち落とし合う戦闘が続く。
そんな中、視界の端でホオリが蒼騎士に対し決定的なタイミングで渾身の突きを放つところが見えた。
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~~Side ミコト
「ハッ!ヤァァッ!!」
赤騎士の大剣を躱し懐に入り込む。手甲に岩のトゲを発生させ連続突きを放つ。固い!突きは完全に入ったはずだが赤騎士の鎧はかなり強力なプラーナの防御が働いているらしく、何とか大剣をかいくぐって放った突きは、赤騎士を少し後退させるだけでダメージが通った様子がない。
フーッ
息を大きく吐き、気持ちを集中させる。水穿破ならばあの鎧の防御を抜くことが出来るだろうがプラーナを溜める隙が無い。赤騎士はすでに馬から降りているため剣撃をかいくぐれば接近戦には持ち込める。だが突きや蹴りだけではあの防御を突破できない。攻め手に欠けるなぁ。
そっか、良いことを思いついた!
再度赤騎士の剣を回避しながら懐に潜り込む。ここだ!道路にひびが入るほど強く足を踏み込み赤騎士のみぞおち付近に地面スレスレの位置を通る軌道でアッパーを放つ。打撃自体は鎧の防御で防がれているが衝撃は防ぎきれない。赤騎士の重たい体が大きく空中に打ちあがる。
『!!』
驚いた様子の赤騎士をよそにプラーナを集中する。
「空中なら躱せないでしょう!水穿破!!」
宙を舞う赤騎士に向かって直進する水のレーザー。これが直撃すれば大きなダメージを与えられるはず。ここの中でガッツポーズを取ろうとした時、横から赤騎士をかっさらう存在があった。降りていたはずの乗馬が空中の赤騎士を助けたのだ。馬のことを忘れていた。まさかこんな形で助けに入るとは。
そんな時、ホオリくんの方からプラーナの高まりを感じる。さっと視線を向けた先で、ホオリくんが蒼騎士に対し輝くほどにプラーナを込められた棍で突きを放っていた。あれは決まる!心の中で降ろしかけていたガッツポーズをさらに強めた。
エンカウント:Lv50 ホワイトライダー レッドライダー ブラックライダー ペイルライダー
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