第108話 天神攻略戦 後編
アクマデバイスに名前が表示されない敵・・・その理由は・・・
「思ったより弱い?」
『歌を歌うって言う天使はすごく弱いね。イカヅチなら結構な数を薙ぎ払えるかも。』
「コ、コッチーさんが凄すぎるのでは、な、ないでしょうか?」
敵戦力の把握のため、天神に向かって進行した俺達。天神駅まではまだ数キロあるらしいので、中心街がどうなっているかは分からないが、天使たちは自分たちのエリアを守るように巡回しているようだ。
一部隊は前衛の鎧天使が2体、弓もしくは杖持ちが1体、歌うのが3体と6体ひと塊で動いていた。なにか通信手段があるのか、一部隊と戦闘になると、数分もしないうちに他の部隊が集まってくる。強さとしては、歌→弓→杖→鎧の順で強くなっていく。
「やっぱり前衛の天使は戦いづらいなぁ。水穿破を打つ溜めの暇はなさそうだし。」
「ボ、ボクのバレットだと、け、牽制としても通じづらいですし…」
「コッチーのイカヅチに合わせて接近するのが良さそうだね。俺とミコトは前衛で連携するのが良いかな。レベッカ、歌についてはどう?」
先制でコッチーがイカヅチを放てば後衛にいる歌の天使も薙ぎ払えるので、歌を歌わせずに戦うこと自体は可能だと思う。だが敵陣に乗り込むとなると確実に守りを固めているだろうし、さすがに先制攻撃で倒しきれない可能性が高い。対策は必須ということで、あえて何度か歌を受けている。
「3体で歌う程度なら私一人で相殺できるわね。でも、6体以上になってくると簡単ではないかも。大部隊なら無理でしょうね。私たちのプラーナならそこまで阻害されないけれど、戦闘中ずっとあの状態だと厳しいでしょ?」
「ボ、ボクはほとんどプラーナを練れなく、な、なります…」
まだレンのレベルだと厳しいみたいだ。俺達も戦闘に大きな支障が出るほどの阻害は感じないが、強い奴が出てきたり、大軍で来られたりすると無理があると思う。さてどうしたものか。歌に対抗する手段を見つけるのは難しそうだな。
「戦力が分かれば力押しでも行けるかもしれないし、もう少し深くまで調べたいわね。私が空から偵察するから、ここらで隠れて待っていて。プラーナを極限まで抑えれば目視以外では見つからないと思うわ。」
「天使は空も飛べるから気を付けてね!」
俺達はレベッカが偵察に行っている間にカイトさんたちに連絡。状況と戦闘の手ごたえを伝える。
リコちゃんが少し引き気味のレスをくれたが、レベル差があるから仕方がないと思う。それに初見で歌を受けたら、俺達だって連携が崩れていただろうし、情報があるのとないのとでは違う。
「天使ってことはトラータ教の教会とかが本拠地だったりするのかな?」
「そ、そもそもあの天使たちってどこから、き、来たのでしょうか?」
『確かに。アクマとも戦っているってことは、天使はロカ・プラーナからきたアクマじゃないんでしょう?』
「レベッカが知らないってことはロカ・プラーナから来たアクマじゃなさそうだね。」
レベッカが帰ってきた。少し怒っている?妙な雰囲気を出しているな。
「アイツら、かなりヤバいわ。早く対処しないとニンゲンにとっては脅威になるかも。」
レベッカが見たのは、天神駅の近くの大きな協会で行われていた恐ろしい行為だった。教会の中では天使たちによって生きた人間が天使に変えられていたという。
「わたし達が倒したのは人間だったってこと?」
ミコトが少し震えながら問う。
「もとはニンゲンだけど、今は完全にアクマと同じ存在ね。倒した時に魂がマルガに還っていくのを感じたし、体が完全にプラーナなでできていたわ。どういう術なのかはわからないけど、人間を天使というアクマに作り替えているのよ。」
「大阪のベリアルたち魔王とは違うの?人間の体に完全に憑依しているような感じだったけど?」
「あれはニンゲンとは完全に別の存在として魔王が存在していたわ。その分霊が人間の体を乗っ取っていた。だから女神の術を使ってマルガに還したでしょう?あいつらは完全にアクマに変えられてしまっているから倒してあげるしか救う手立てはないわ。」
「もしくは、て、天使に変えられる前に助けるか…」
ということだな。であれば急がないと被害が拡大してしまう。
「天使の数は?力押しで攻めてでも急いで何とかしないと被害が増える一方だ。」
「100以上はいるわね。」
「捕まっている人の人数はどれくらいか見えた?」
「さすがに数えていないけど50人くらいはいたんじゃないかしら。」
「き、危険ですが、鹿児島の部隊によ、陽動をかけてもらって、ボ、ボクたちで教会を落とすのは、ど、どうでしょう?」
陽動部隊が持つかな…。レンって結構リスキーな作戦を立てるんだな。合理的ではあるのかもしれないけど。いずれにせよいったん戻って作戦を立てなければ。
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「なんごっな!い、生きた人間だど…」
「はい、なので早く対処しないと犠牲者が増えていく一方です。」
「天使に変えられる速度はそこまでじゃないわ。一人一人作り替えられている感じだった。」
「だどしても!クソッ!!」
教会で行われていることを説明するとカイトさんの怒りはすさまじいものだった。いや、彼だけではない俺達だって許せないと思っている。だが怒りに任せて特攻するわけにはいかない。俺達が失敗すれば誰も救えないから。
「ホーリー、お前なら止められるんだな?」
「止めてみせます!」
カイトさんが俺を睨み殺すかの如く詰め寄る。ここで顔をそむけるわけにはいかないと、俺も気持ちを強く持ってカイトさんに答える。ミコトやレンも気持ちは同じみたいだ。いや、姉さんもか。
「リコ、部隊を集めろ。悔しがオレたちは陽動だ。教会はこいつらに任せる。」
カイトさんの気迫に押されたリコさんが慌てて部隊を集めに行く。結局、歌の対策はごり押ししかないが、時間はかけられない。無茶な作戦だがやってやる。
「カ、カイトさん、歌の天使は、そ、それほど強くありません。か、カイトさんなら先制で倒すこともできると、お、思います。そ、それと、歌はボク達の体のプラーナは、そ、阻害しますが、放たれたプラーナ、つまりバレットなどを、か、かき消したりはしません。なので…」
レンがカイトさんに何かを伝えている。陽動の際の戦い方かな?確かに雪丸のバフを貰ったカイトさんなら一気に3体の歌天使を倒すこともできると思う。問題はどんどん増えていくから、最終的には歌を阻害できなくてジリ貧になるってことか。
「よし!いくど!」
カイトさんの号令で鹿児島の部隊と俺達も出発。一チームだけは救出した人たちを安全圏に避難させ、守るために俺達についてくる。さすがに教会までは一緒にこれないが、安全圏近くで待機してもらい、俺達がそこまで連れていくことになる。殿は俺だろうな。
「こっから陽動ばしかけっど。お前たちは向こうの通りから隠れっち進め。」
カイトさん達が天使たちに攻撃を仕掛け始めた。
エンカウント:Lv18 エンジェル(歌) / Lv25 アークエンジェル(弓) / Lv28 プリンシパティ(杖) / Lv35 パワー(鎧)
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