第101話 黒い仔山羊
うじゃうじゃ
「な、なんですかぁ、あ、あれは…?」
「アクマデバイスに表示がでないぞ。どうなってるんだ?」
2階の通路の奥から現れたのは俺達の腰の高さくらいの大きさで、全身が黒く、4本足、動体にギザギザの歯がついたいくつもの口があり、胴体の上には木の根のようなうねうねした触手なのか髪の毛なのかわからない妙な物体が乗っているアクマだった。探索チームの一人がスマホを見ながら名前がわからないと不思議がっている。
「どのような能力があるか分からないので、俺達が一当てします。いくぞコッチー!」
ニャ!!
俺は棍にプラーナを込めて黒い物体に向かって突撃する。まずは一番近くの個体に突きを放つ。コッチーもイカヅチを一体に絞って放っている。
突きを受けた個体は一撃で粉々になった。イカヅチを受けた個体も一瞬で灰になっている。あまり強くないのか?さらに俺は横なぎに棍を振るい複数を攻撃。跳ね飛ばした個体にフレイムバレットで追撃。直撃した個体は燃えて消えていった。
「うわあああ!」
背後でレンの叫び声が聞こえる。俺はとっさに振り向き状況を確認。そこには10体ほどの黒いアクマがレンたちに襲い掛かっていた。一体どこから湧いた?
『ホオリちゃん!上から!』
天井を見え上げると黒いアクマがボトボトと降ってきていた。天井から発生しているのか?コッチーのイカヅチが幾筋にも分かれて放たれる。前方からやってきたアクマ達を薙ぎ払ってくれたようだ。
「コッチー!前は任せる!俺は後ろを援護しに行く!」
レンや探索チームたちもかなり戦えているが、数が多い。回復役を中心に配置し、前後を守るように陣形を組んでいるが、防ぐので精一杯のようだ。一体一体は弱くても数で押してくるタイプか。無限脇だったらこっちの体力が削られて押し切られる可能性がある。正面を突破して進んだ方が良いかもしれない。
「大切断!」
俺は横なぎに刃を発生させた棍を払い、一気にアクマをせん滅。瞬間的に空白が出来、前衛がほっと息を吐く。
「敵の数がわかりません!前方を突破して進みましょう!行ってください!コッチーが道を切り開きます。レンさんは最後だ!上を警戒しながら全体をフォローしてください!」
「分かった!」
「ま、ま、任せて!」
俺は先に進む仲間を通し、後ろからくるアクマ達をバレット乱射で足止めする。全員が前に進んだことを確認し、俺も振り向いて追いかける。
黒いアクマを蹴散らしながら、進むと階段が見えてきた。ミコトたちは来るか?
「ホオリくん!来てる!?」
ミコトの声が聞こえる。
「ミコト!こっちは階段に着いた!先に上がるよ!」
俺は味方を追い越してコッチーと一緒に階段を駆け上がる。3階も2階と同じように左右に通路。まだ敵の姿は見えないが、同じ構造で同じ状況なら全員同じ方向に進んだ方が良いかもしれない。
「レベッカ!秋田さん!3階も2階と同じ構造に見えます!まとまって行動しますか!?」
俺は階下から上がってきたレベッカたちに声を掛ける。黒いアクマ達はいつの間にか追ってきていないようだ。少しだけ休憩が出来るか?
「そうですね。まだ先は長そうですが、通路の内側、つまり大樹の中心側に部屋があったりする様子もありませんし、全員で進んだ方が良いかもしれません。」
「中心側はプラーナを吸い上げるために空洞になっている可能性が高いわね。秋田に賛成よ。」
今度は全員が一緒に進むことにする。一番前はコッチーで続いてレベッカ。プラーナ探知に優れた突破力もある二人を先頭にして先に進むことを優先。ミコトは中衛で天井からアクマが降ってきたときに分断されないようにする。秋田さんの部隊は最後尾で、さらに俺が一番後ろにつく。バックアタックを防ぐ役目だ。
3階も進んでいくと黒いアクマが発生し戦闘になる。天井からも現れ、後ろからも追いかけてくる。同じように正面突破で前進することに注力する。
「少しだけ2階に出た個体よりも手強くなっています。上に上がるほど強くなるのであれば上層階は厳しくなりそうですね。」
なるほど、俺はあまり感じなかったが徐々に強くなっていく方式か。何階建てかにもよるが、進めば進むほど体力のプラーナも消耗するし、どんどん厳しくなっていくってことだ。どこかで撤退を検討すべきかもしれない。
「撤退の判断も必要になるかもしれませんね。俺達のペースに合わせると探索部隊のみんなが厳しいかもしれないので、秋田さんにその辺の判断はお願いしたいです。」
3階は負傷者も出ずに進むことが出来た。だがゴールが不明なマラソンは精神をむしばむだろう。4階に上がった俺達は一息つきながら、進むか否かを考える。もっと早く階段にたどり着ければいいのだが。
「ハッ!」
そんなことを考えていたところで、ミコトが内側の壁を全力で殴りだした。
「ミ、ミコト!なにを!?」
「えー?真ん中を通った方が早いかなって。」
「いやいや!レベッカが空洞だって言ってたじゃない。」
「そうだけど、見てみないと分からないでしょ?でも、この壁かたすぎぃ。わたしが全力で突きを入れてもビクともしないよ。」
ミコトの突きでも傷一つ付けられないか。空洞なら壁は薄いのかもと思ったがそんなことは無いのか。いや、今のミコトなら金属の板だってへこませることはできるだろう。木のように見えて何か別の物質なのかな?
「玉乃井さんの攻撃で傷もつけられないということは、この大樹は破壊不可能なのでしょうか?」
「正直、こんなものは見たことが無いのよ。ただ、破壊は限りなく困難かもしれないわ。正直、一番いやなものに雰囲気が似ているのよね。」
『それって…邪神ってこと?』
「あまり言いたくないわ。でも本体とかそんなんじゃなくて、何て言うか、知っているもので一番近いのが、ってことかしらね。」
「クトゥルヒが守っているってことは邪神関連なのは間違いなさそうだよね。プラーナを吸い取って何に使っているかにもよるけど、切り倒せないなら機能だけでも停止させないと。」
「やっぱりぐるぐる回りながら進んで上を目指すしかないね!わたしはまだまだやれるよ!」
秋田さん達もまだ大丈夫だということで、俺達は再度進み始める。黒いアクマは数こそ多いが、特殊能力は無いようで、攻撃はもっぱら噛みつきか、蹄のついた足での蹴りだった。リーチはあまりないので、数に押されなければ何とかなる。だが、コッチーの消耗が激しい気がする。
「コッチー。次の階は私が変わるわ。少しプラーナを回復させなさい。その次はホオリとミコトがバレットで道を切り開くのよ。さすがに交代していかないと持たないかもしれないわ。」
レベッカの提案で交代しながら道を切り進む。俺達は消耗しながらも黒いアクマを退け上階を目指して走り続ける。いい加減、何階まであるんだと、それぞれが思い始めたところで10階への階段を上った。
「ようやく一番上に着いたのかしらね。」
階段を上った先には、中心部に向かう壁に両開きの扉がついていた。部隊員から安堵のため息が漏れる。膝をついている者もいた。さすがに連戦で厳しかったからな。だが、ボス部屋っぽいからあまり油断すると危険な気がする。
「強いのが居そうだね。」
「ボス戦って感じがするよ。どうするの?みんなで入る?」
「高屋君たちのチームが先に入る方が良いかもしれませんね。もちろん罠には気を付けて。」
「分かりました。何かあったときは秋田さんの判断に任せます。」
俺は扉に手を当てて押してみる。それほど力を必要とせずに扉は奥に向かって開いた。
エンカウント:Lv28~38 黒い仔山羊
�ャ・�å繧手§「フフフ、さすがに表示させたら譁ュ?さんに怒られそうですね。読者の皆さんにだけお知らせしておきましょう。」
出番がすくない有名なアレ。日本編では登場させづらくて申し訳ねぇ。
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