第1話 目覚め
初投稿です。最初のみ4話同時投稿します。それ以降は週に2~3話ペースで投稿予定です。
シリアス展開多めの作品になる想定です。
一人でも多くの方に読んでいただけると嬉しく思います(*‘∀‘)
リビングを除いた先にいる存在…あれは何だ。
背丈は小学生…120cmくらいか。青白い肌。服は着ておらず、下腹が異様に膨らんでいる。
そして…人をむさぼり喰っている…
助けられなかった。間に合わなかったのだ。だがどうする?見たことがない怪物と戦うのはリスクが高い。ここはいったん引いて状況を報告するほうが賢明なのかもしれない。
だが…喰われているあの人を待っている人は納得できるだろうか。信じられないと自らがここに来ようとするだろうか。そうなれば、その人まで死んでしまうだろう。
「相手は一体だ。やろう。そして遺品を持ち帰る。」
足元にいるコッチーにささやく
声を出さずウニャッという顔で応えるコッチー
次の瞬間、コッチーの額の前でイカヅチがきらめき怪物に飛ぶ!
同時に俺は飛び出し、イカヅチにひるんだ怪物をバットで殴り飛ばした。
そして壁に激突した怪物を油断なく追撃。3打したところで怪物は青白い光となって霧散した。
コッチーは周囲を警戒している。他の怪物は集まってきていないようだ。
俺は急ぎ死体の髪をまとめていたバレッタを取り、リビングに落ちていたスマホを拾ってポケットにねじ込んだ。
使い込まれたキッチンやダイニングテーブル。リビングにはバッグとコートがソファの上に置かれていた。ローデスクにはノートパソコンが開いたまま。
帰ってきてからもよく仕事をしていると母親が言っていたっけ。
ベランダの窓が割れて、屋内にガラスが散乱しているので、怪物はここから入ったのだろう。
帰宅し、仕事の続きをしようとしていたのだろうか。母親は自身の仕事帰りに買い物をしていたため、彼女一人だった。
昨日は、国が推奨するノー残業デーだ。どこの企業もこの日だけは定時退勤が主流となっていた。
母親は運が良かったのか、それとも一人残されることのほうが不運なのか。答えの出ない疑問がグルグルと頭を回る。嫌な気持ちで仕方がない。
「コッチー。急いで戻ろう。」
気を紛らわすようにコッチーに声をかける。
ナーとコッチーが柔らかく鳴く。今にも吐いてうずくまってしまいそうな気持ちが少しだけまぎれた気がした。
帰り道には、来るときにはいなかった怪物が目に付くようになった。あいつらどこにいたんだ?
女性を喰っていた青白い背の低いやつ、小鳥くらいの大きさの羽が生えた女性のようなやつ、たまねぎのような形をした頭のフワフワ浮いているやつ。昨日、何度も遭遇したスライム…。
俺たちは見つからないよう慎重に、でも急ぎながらショッピングモールに戻った。
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「助けられませんでした…」
持ち帰ったバレッタとスマホを母親に手渡す。
血が付いたバレッタとスマホを受け取った母親は崩れ落ちた。
「あああぁぁぁぁぁ…………」
母親に付き添ってくれている女性が小さな声で、
「ありがとうね…」と声をかけてくれた後、母親を休める場所に連れて行ってくれた。
やりきれない…
あの母親は娘と二人暮らしだと言っていた。夫は娘が就職した翌年に亡くなったそうだ。娘さんは母親を心配して、家を出ずに一緒に暮らしていたんだとか。
娘と連絡がつかない、どうにか探したいと熱心に訴えていた母親を思うと、少なからず仲が良い親子だったのだろう。自分だけが助かってしまったのだ。大丈夫だろうか。早まらないでくれればよいと思う。
俺にはまだ子供はいないから、子を持つ親の気持ちはわからない。
しかし、今回の災害で親も姉も家族全員をなくしてしまった俺には一人残されるつらさはわかる。生きる気力なんてわかないことも…
ナーとコッチーが鳴いた。
「あぁ、お前はまだいてくれたよな。ありがとう。」 コッチーを抱き上げた。コッチーの温かさが凍り付いた心を溶かしてくれるようだった。
「どんな様子だったんだ?」
このショッピングモールに集まっている人々のリーダー的存在になっている男性に声をかけられた。
「ああ、奈良さん、お疲れ様です。」
「戻って早々にすまない。今、話を聞いても大丈夫か?」
全然知らない人たちをまとめられるだけあって気遣いもできる人だと思う。
体は少し疲れているが、それ以上に心が沈んで仕方がないけれど、誰かと話していたり、何か作業をしているほうが気が紛れるかもしれない。
「はい、大丈夫です。外の状況ですよね?」
「ああ、あの地震からひとまず夜が明けたが、どのくらいインフラがやられているのか、外に出ても大丈夫なのか。ネットも電話も通信制限がでているのか、ほとんどつながらないんだ。とにかく情報が欲しい。
実は北側の様子を見に行って帰ってきたのは君だけなんだ。」
「えっ?誰か外に出たんですか?変な生き物に襲われてたから逃げてきた人だっているのに。自殺行為ですよ。」
「そうだな、俺も止めたんだ。だが、君が行った後、子供が行くのに大人がやらないのは駄目だろうと押し切られてね。
君とその猫に特殊な力があることは説明したんだがな…わかってくれなかったようだ。」
「コッチーはともかく、俺はそこまで特殊な力ってわけでないですよ。少しだけ人より感覚が鋭くなっているというか、体が軽いというか。
その人たち、探しに行ったほうがいいですかね?」
「いや、万一君まで帰ってこなかったら手詰まりになる可能性が高まる。薄情だと思われるかもしれないが、ここにいる人たちだけでも守らないとな。
リスクを負える状況ではない気がしているんだ。」
「奈良さんの言うとおりだと思います。今はたくさんではなかったですけど、見たこともない怪物のようなやつらが結構いるんですよ。獲物を探している感じでした。
あの、お母さんの娘さんも見たことがない怪物に…」
「ああ、すまん。思い出させてしまったか。」
「いえ、大丈夫です。あれって何なんですかね?人間に太刀打ちできるようなものなのか。」
「君は倒したんだろう?ならば人間の力で倒せるはずだが?」
「俺にはコッチーがいるので…。いなかったら1対1だってやれないですよ。どんな力があるのか全く分からないし。人間を簡単に喰うようなやつらなんです。」
「そうだな。我々はコッチー君がいてくれたことが僥倖だったな。ありがとう、コッチー君」
「一応、メスです…」
「すまんすまん;コッチーさん、ありがとう」
コッチーが気にするなと言わんばかりにナーと鳴いた。
「ああ、で外の様子ですが、怪物は少しだけどいます。ただ、おかしいんですが、あれだけ大きな地震があったはずなのに、建物はほとんど崩れていないんです。
娘さんを探しに行った家の中も、今思えば食器が散乱していたりもしていませんでした。
でも、ネットってつながらないんですよね。基地局が被害を受けている感じはしないんですけれど。」
「維持する人間がいなくなったか…」
「インフラ関係は全自動化がかなり進んでいると聞きますが、一日くらいで使えなくなりますかね?電気や水道なんかは大丈夫なのに。」
「さすがに情報が少ないし、専門家でもないからわからんな。ネットがつながらなければググることもできん。
そういえば、怪物たちがいるという話だが、ここを襲ってきそうな動きはあったか?」
「どうでしょう。見つからないように移動していたので、そこまで注意深く観察はしていないんですよ。ただ、組織だって動いているという感じではなかったです。でもいろんな種類がいるっぽいんですよね。スライムみたいなドロドロしたやつとか、小鳥くらい小さい女の子?みたいな飛んでいるやつとか、玉ねぎみたいな頭がついてフワフワしているやつとか。娘さんを襲っていたのは青白い120cmくらいの細いやつでした。下腹がボコンとでているような。」
「完全にファンタジーだな。とりあえず、みんな集まってもらって外の様子を共有しよう。幸い、ここは大型商業施設だ。食料や日用雑貨は大量にある。家具もあるから休むのにも問題ないし、数日ならトラブルも起きまい。」
エンカウント:Lv3 餓鬼
お読みいただきありがとうございます(∩´∀`)∩
第1話は時系列的期には2日目にあたります。続く2~4話が1日目にあたり、ストーリー的には2→3→4→5→1話の順で続いています。6話以降は他者視点が入らない限り、時系列通りに進みます。




