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ある鍛冶屋の悲劇~元公爵令嬢と生意気ネクロマンサー シーズン2~  作者: そら・そらら


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3.金鉱山開発が始まりました

「新興貴族とかは、新しく鎧を作ることもあるわ。鍛冶屋さんにお願いしてね」

「儲かるだろうな、鍛冶屋は」

「ええ。お金に糸目はつけないからね。だから力のある鍛冶屋さんとかは、新しく爵位を賜った貴族や、兄弟が多い家に営業をかけることもあるわ」

「馬鹿馬鹿しい話だな」

「彼らも生活のためなのよ」

「ふうん。……なあ、重装歩兵が今もあるならさ」

「なに?」

「竜騎兵もいるのか?」

「いるはずないでしょ。そもそも竜がいないわよ」


 別の駒。翼を持った竜に乗った騎士を持ったレオンに突っ込む。


 大昔戦争してた魔族には、そういうのがいたそうだけど。人間は竜を使役したことはないし、今となっては魔法と同じく過去の記録にしかないもの。


「そっかー。いたら友達になれるかなって思ったけど」

「……そう」


 彼もまた、魔族戦争の時に存在していたネクロマンサーだ。お金持ちの自慢よりは、竜の方に親近感が湧くのかな。

 それとも、単に強い物に対する憧れかな。


「ねえレオン。博物館に行ったことはある?」

「博物館?」

「魔族戦争の時の資料があるのよ」

「あー。行ったことあるけど、あんまり長くは見なかった」

「そうなの?」


 自分で訊いておいてなんだけど、こいつのことだから定期的に通ってると思ってた。

 図書館には足繁く通ってるらしいし、知識欲がある子だ。博物館くらいなら平気で行くだろう。


「一緒に行ってくれる人がいない」

「ん?」

「俺が一人で行くとな。他の客が勉強熱心なお子様がいて可愛いとか同行者とヒソヒソ話したりするし、職員が迷子だと勘違いしたりして話しかけてくるし。落ち着かない」

「あー」

「あげく、職員は勉強熱心な俺に感銘を受けて、展示物の解説をし始める。子守のつもりなのかも。俺は落ち着いて見たいんだ。わからないことがあれば、後で本で調べるし」

「ええ。レオンはそういう人よね」

「ニナもニールも、博物館そんなに興味なさそうだし。エドガーも同じ」

「周りの大人には恵まれてるけど、博物館に一緒に行ってくれる人はいなかったのね」


 ニナとかなら、お願いしたら引き受けてくれそうではあるけど。遠慮してたのかな。

 仕方ないわね。


「今度、一緒に行く?」

「行く」


 あ。すごく嬉しそうだ。



 そういうわけで、今度のお休みを揃って取るべく、翌日から仕事を頑張ることになった。

 その日はいつにも増して忙しかった。元から繁盛している人気店だけど、今日は特に客足が途切れない。


「なんかね。王都の北部で大きな仕事があるらしくて、大勢が雇われたんだって」


 食べ終わりの皿を持ってきたニナが、噂レベルの理由を話してくれた。


「しばらく北部に泊まり込みの仕事をするから、その前に好きなだけ酒を飲もうとか、家族と一緒に食事とか。そんなお客さんが多いよ」

「仕事ってなにかしら」

「山を切り開くんだって。木を切り倒して穴を掘る。掘った後の土を運んだり、切り倒された木を運んで木材として加工したりする人員もたくさん」


 客が多いから、お喋りしてる暇はない。ニナは料理を持つとすぐにホールへ向かって行った。


「金鉱山の開拓が本格的に始まるんだな」


 入れ違いにレオンがやってきた。


「あー。あれか」


 私が、あの馬鹿王子と婚約したことの間接的なきっかけ。私の家とマーガレットの家が対立した原因。

 王子が婚約破棄した後に廃人となっても、事業はつつがなく行われたようだ。


 王都の北部の山で見つかった金鉱山の採掘事業は、私の実家である公爵家で行われている。

 どういう契約になってるのかは知らないけど、働く人員は王都民から雇用するらしい。公爵領から大量の人員を入れるよりは、こっちの方が楽なのだろう。


 王都で雇用が発生して、賃金を得た労働者たちが王都の中で金を使う。まだ働く前なのにヘラジカ亭をここまで忙しくさせているのだから、金が入ったらもっと浪費する。

 こうやって王都の経済が回り、税収が増える。鉱山自体の儲けの大半を公爵側がふんだくったとしても、王都は潤うわけだ。


 結構なことだ。私も、お店が儲かるのは嬉しい。嬉しいのだけど。


「忙しすぎないかしら!?」


 元々、体力自慢たちが来店する傾向にある大衆酒場だけど、今回来てるのは鉱夫や木こりなどの、本物の肉体労働者。


 食べて飲む量が多くなるのは必然だった。


「まだ仕事する前でしょ!? なんでここまで気前よくなれるのよ!」


 洗っても洗っても減らない皿の山を見ながら、私の嘆きが洗い場に響く。


「お客さんに聞こえるから、静かに。これもお願い」

「はいユーファちゃん! 承りました!」


 年下の女の子に窘められた。いつものことだ。


 普段は無口で無表情な狩人も、忙しい店内で少し疲れを顔に出していた。

 それでも彼女も給仕係。ホールに向かう際は完璧な無表情に戻った。いや、客商売なのだから、もう少し愛想が必要なのでは?

 しかしユーファは、クールな女の子として一部のお客さんに評判らしい。どこに需要があるのかわからないものだ。


 そんな風に、忙しい一日は過ぎていった。



 流石に明日からは、労働者たちは山に向かうから客足も落ち着くと思ったのだけど。


「ねえ! 昨日より忙しくなってない!?」

「なってるな。これ洗ってくれ」

「はい! じゃなくてレオン! なんで忙しいのかわかる!?」

「国の大事業だぞ。追加の労働者が出るんだろ」

「国のじゃなくて公爵領! あと、山をちょっと切り開くだけでしょ!?」

「そうだけど。大人数が動くのは変わりないし」


 だとしても、ここ以外にも酒場はたくさんある。労働者がこんなに集まるのはおかしいのではないだろうか。

 ヘラジカ亭が評判のお店だとしても!

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