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ある鍛冶屋の悲劇~元公爵令嬢と生意気ネクロマンサー シーズン2~  作者: そら・そらら


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26.変装をしよう

「森に詳しい人と、少し話がしたい」

「わかった。現地に行ってから探そう。他には?」


 無口な狩人は、黙って首を横に振る。


「わかった。次は」

「私の正体を隠す方法ね」

「そうだな。仮面でも被るか?」

「顔を隠すには役立つけど、めちゃくちゃ目立つわよ」

「そうだな」

「眼帯とかどうかな? 片目だけでも、隠すと結構印象変わるよ?」


 ニナが仕事の手を止めながら、面白そうだと会話に混ざってきた。いや、せめて仕事はやりながら話しなさい給仕長。


「駄目。森を歩くのに、目を隠すのは良くない」

「そうだな。片目だけでも見えない状態だと、森を歩くのは難しくなる」

「そうなの?」


 ちびっ子ふたりが即座に却下した。


「ルイ。試しに片目を瞑って店の中を歩いて見ろ」

「うん……え、何これ。めちゃくちゃ気持ち悪い。なんか変な感覚なんだけど」

「遠近感が狂うんだよ」

「へー」


 これは確かに、足元の悪い森の中を歩くのは無理だ。下手に転んだら、それが霊の仕業なのか判断がつかなくてレオンを困らせることになるし。


「んー。でも眼帯ってアイディアはいいと思うんだけどなー。ほら、仮面と違って、怪我してるなら顔を隠すのは仕方ないってなるじゃない?」

「そうね。ニナは仕事をしましょうか」

「目が見えればいいんでしょ? 粗めの布を使えばいいんじゃないかな。向こうが透けて見えるみたいなの」


 怪我の治療ではなく変装が目的だから、眼帯が眼帯の役目を果たしてなくてもいいわけだ。


「……それで視野があまり変わらないなら、やってもいいかもな。でもそんな都合のいい布ってあるのか?」

「さあー。あのメイドさんに訊いてみたら? 布とか詳しそうじゃん」


 おいこらニナ。都合のいい時だけリリアに頼るな。というか、頼る根拠が雑すぎる。



「はい! ございますよルイーザ様!」

「あるのかー」


 翌日、リリアを訪ねたところ、あっさりと肯定の返事が来た。何事も試してみるものだな。


「眼帯とは眼球だけではなく、その周りを保護するものでもあるので! 目の機能を活かしたい時は、見えるようにする眼帯もあるそうです!」

「そうなの。ちなみに、なんでそんなこと知ってるの?」

「ラングドルフ領のさる貴族が、そういう怪我をした時に見える眼帯をつけていたので!」

「ふうん。その貴族はどんな怪我を?」

「奥様がいるのに、他の女性に手を出そうとしたのがバレて、目を殴られたそうです! 濃い青痣ができて、それを隠すために眼帯をしてました!」

「ふうん」


 情けない理由だ。そうでもないと、使用人たちの噂話に流れてこないのだろうけど。


「当て布に細かな穴を開けていけば見えるようになりますよ! 少し待っててください! 用意しますので!」


 さすがリリア。仕事が早い。意見を聞きたかっただけなのに、必要なものを用意してくれるなんて。

 当て布に太めの針で穴を開けて、あっという間に見える眼帯が完成した。


「あとは髪型を変えれば雰囲気が出るかなと思いますけど!」

「髪が短いから、変える余地はあまりないと思うのだけど」

「そこはそれ。髪留めをつけるなり縛るなりして……そうだ、サイドテールにしましょう! ショートヘアでも似合いますよ!」

「似合うのかしら」

「はい! ルイーザ様は元がかわいいので、お似合いになられます!」

「そのかわいい顔を眼帯で隠すのだけどね」

「自分がかわいいことを否定しないの、さすがルイだよな」

「事実だしね。眼帯程度では隠せない可憐さなのよ」

「見つかりたいのか? 公爵領の知り合いに」

「いえ。そういうわけでは」


 危ない。本来の趣旨を忘れるところだった。


 私の可憐さは公爵領でも評判で、すれ違う人みんなが私に見惚れるくらいだったのだけど、それは完璧に隠さないといけない。


「なんか、自分に都合よく記憶を改竄してないか?」

「なんのことかしら。レオンだって私が美しすぎて、絶世の美女すぎて、こんな美人はこれまで見たことがないくらいだったから、見惚れてたでしょ? 出会った時」

「そこまでは言ってない。リリア、この馬鹿の正体を隠すには、あとはどうすればいい?」

「狩人の格好になってもらいましょう!」

「なるほど。格好で職業を判断されれば、そういう人間だって思い込むものだしな」

「はい! 顔よりも服装が目立ちますし!」

「うん。狩人らしく、ある程度着古した服がいいかな。用意できるか?」

「はい! 街の服屋さんで探してきますね!」

「古着ってこと? 私、そういうのはあまり着たくないのよね。根がお嬢様だから」

「いえ! 新品を買って汚します!」

「それなら……まあ、ちよっとだけ抵抗はなくなるわね」

「本当は、顔とかも汚した方がいいんだろうけどな。森で土に汚れました、みたいな感じで」

「うー。そこまでするのは……てか、森に入ったからってすぐに汚れたら、それはそれで不自然じゃない?」

「それもそうか」

「レオンだって、私の顔が汚れるのは嫌でしょ?」

「それは今考えてない」


 こいつ。



 とにかく、格好を用意するのに、もう数日必要。

 エドガーの調査の結果も聞きたいしね。


 その数日の間にも、鉱山では死者が出ているらしかった。

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