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正直な悪役令嬢は婚約破棄を応援しています~殿下、ヒロインさんを見てあげてください!私を溺愛している場合じゃありません!  作者: 伊賀海栗


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第22話 こんなものが図書館に!


 ダンスでふいに投げかけられた謎かけは、私にはわからないままでした。

 どうしてあんなに寂しそうな顔をしていたのかしらとか、ひとりで踊ってるってどういう意味かしらとか、それを考えてばかりで夜もあんまり眠れなくて。


 何か本でも読もうかしらって考えたときに、私、気付いてしまったんです。借りた本を返してなかったって!

 まずいですよコレは。完璧人間エメリナにあるまじき失敗です!


 本を抱えて図書館に急ぎました。ごめんなさいって謝罪しつつ、いつもの司書の先生に本を渡すと彼は一瞬だけこちらを見ました。一体どういう感情なんでしょうか、アレ。またアーサー様に報告するのかしら?


 せっかくなので面白い本はないかと文芸の棚のほうへ向かいます。いつも図書館で手にとるのは学術書ばかりですから、ちょっとワクワクします。まさかロマンス小説みたいなものは置いてないと思いますけど。


 あった、ありました。恋愛小説と思われるものが。読みたい……でも読んだら報告されるかしら。んー……。

 いえ、私ったら何を躊躇してるのかしら。報告されて困るようなことじゃないですものね。恥ずかしがるような趣味じゃないですし。そうよそうよ、堂々としてればいいんだわ!


 何の気なしに手に取ったタイトルをペラペラとめくっていくと、途中で違和感を覚え手が止まりました。普通の小説ではあまり目にしない擬音が見えた気がしたのです。ページを少し戻って文字を追ってみます。


『ヒルケスは強引にセブリーの唇をふさぐ。両手を壁に押さえつけられ、両足の間にはヒルケスの筋肉質な膝が割り込んで来た』


 んん……?


『空気を求め喘ぐセブリーの口中にヒルケスの舌が強引に――』


 きゃあああああああああ!

 これ、これ、エ、エロティカってやつですね!


 いいですか、ロマンス小説には様々な小ジャンルが縦横無尽にあります。まずは歴史モノ(ヒストリカル)現代モノ(コンテンポラリー)か。加えて吸血鬼や悪魔、または人狼のような変身モノ(シェイプシフター)を扱うパラノーマルかそうでないか、異世界かそうでないか、とか。そういった複数のコンセプトの中にエロティカがあります。濃厚な官能シーンを含み、もはやポルノ!


 私は前世において、こういった官能的なシーンの少ないものを好んで読んでいましたから、耐性がありません。いけません、こんなの学院の図書館に置いておくなんて駄目です。風紀が乱れます! 不道徳です!


 思わず腕を伸ばして本を持つ手をグッと遠ざけ、顔を背けてしまいました。ああびっくりした。どどどどどうしましょうか、教育委員会に訴え……あら、この世界に教育委員会なんてあったかしら。


「言葉とは裏腹に、セブリーの腰は蛇のごとく」


「きゃあああああああ!」


「シッ」


 口を抑えられました。ホガホガ言いながら声の主を見れば、それはもちろんアーサー様で。静かにしますと目で訴えたらやっと手を離してくれました。あと、本も取られました。


「驚いたな。こういった本も読むんだね」


「読みません」


「恥ずかしがることじゃない、むしろ君がこういったことに興味を」


「内容を知らなかったんです」


「そういうことにしておこうか」


 本当なのに! いえ、そりゃあ興味くらいはありますけども!

 アーサー様がニコニコといい笑顔で本をこちらへ差し出したので、ぷいと顔を逸らして見なかったことにしました。ちょっと子供じみた行いですが、私の主張を信じてくれない腹いせです。フン。


 彼はクツクツと笑いながら本を棚に戻しました。


「アーサー様も本をお探しでしたか?」


「ん、いや。君がここへ来るのが見えたから」


 私に用があったのでしょうか?

 首を傾げて真意を問うと、彼はスミレ色の瞳を片方だけパチリと閉じました。


「今夜も満月だそうだよ。教務棟の屋上に続く扉の鍵を開けておくから、日が落ちたらおいで」


 一瞬、何を言われたかわからなくて何度か瞬きをしました。


「お月見ですか」


「そ。ひとりで見たって、どうせ君に会いたくなるからね」


 そう言ってアーサー様は図書館を出て行ってしまいました。足が長いせいか、あっという間に姿が見えなくなります。

 私ももう本を読むような気分ではなくなってしまったので、ゆっくりと図書館を出ました。


 なるほど、お月見。以前もワインを持って一緒に見ようって女子寮に侵入していらっしゃったことがありましたね。また同じことをするよりはマシ……なわけないですよねっ?


 うわ、びっくりした。あやうく騙されるところだった。

 普通、屋上は立ち入り禁止ってどこの学校だって決まってるんです。いくらなんでも王族の権力振り回しすぎてませんか、まったくもう。それに日が落ちてから男女が密会なんて破廉恥です、破廉恥!


 ……でも、ちょっとくらいなら規則を破るのも青春には大事、ですよね。きっと。

 あ、そう言えば昨日、侍女がまたお菓子を持って来てくれたんでした。服はどうしましょう、制服だともしかしたら汚してしまうかもしれないし。何かちょうどいいドレスがあるといいのだけど。


 でもでも、それだとなんだか浮かれてると思われてしまうかしら。

 やっぱり制服のままでいい? どうしましょう、わからないわ。招待なさるならせめてドレスコードくらい伝えてくれればいいのに!


 と、ブツブツ独り言を言いながら歩いていると、前方で誰かが足を止めました。


「エメリナさま? どうかしましたか?」


 マリナレッタさんです。よかった! 制服とドレス、どちらにすべきか意見を聞いてみましょう。

 




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― 新着の感想 ―
[良い点] 何だ、普通のエロ小説か。 健全ですね( ˘ω˘ ) サブタイトル見た瞬間、「これはBL小説やな! エクストリームヘブンフラーッシュ!」って思ってしまった私は重症。 まさきさんのせいや。
[一言] 男と女、屋上、お月見。何も起きないはずがなく……( ˘ω˘ )
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