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吟遊詩人ローラ・レイ

第1話 吟遊詩人ローラ・レイ


 バレミア。古代の都市。バレミア王家が大戦後に支配した国にバレミア家の名をそのまま国名にした。

 王都もそう呼んだ。この物語は。そのバレミア国が滅ぶ少し前の話である。


  ポロロン。


 鎧を着たような大きなネズミみたいな動物に乗った吟遊詩人が、たまに訪れて子供たちに伝説やおとぎ話を聞かせてくれる。

 酒場や公会堂と違い広場の子供は無料だった。

 その人は女性で。荒れ果てた大地を通ってこの村に来るのにいつも綺麗な白いドレスで現れる。

 名前をローラ・レイと名のった。

 それは綺麗な女の人だった。


「今日のお話しは、ここの村が昔栄えた王都だった頃の話よ」


「えーこんな貧乏な村が昔は王都だったの?」


「そう千年くらい大昔。その頃は人間だけじゃなく、魔物なんかも一緒に同じ土地に暮らしていたのよ。その王都は、国と同じバレミアと呼ばれてたの。その王都であった事件のお話」


「王都の入り口には戦争の時に作られた砦がありました。その砦には四将軍がいて、戦後に作られたバレミア王国を守っていたの。彼らは百年、バレミアを守った。百年現役だった彼らはもちろんヒト族ではありません。その彼らはいつしかゴーラン砦の四凶将と呼ばれ、王都都民におそれられていました」


 王城バルコニー 深夜。


 バレミアの老ロードン公とフードかぶった剣士らしき一人。


「で、私の仕事は?」

「おぬしも、噂には聞いているだろう。奴らの事だ」

「奴ら……とは、あのゴーラン砦の四凶だな」


「ああ、そのとおり。奴らは大戦の時はおおいに活躍し、このバレミア建国につくした。そして、百年あまり我が国を守護した。までは良かったのだ。しかし、世が平和になるにしたがい、奴らは荒れてきた。王都では、好き勝手にふるまい、今は都民の脅威となってる。しかも王家を狙っているという話も……」

「なるほど。奴らを殺れと。相手が、相手だ。少々値ははる」

「かまわん。いくら欲しい」

「一人、100フラゼッタだ」

「なるほど400フラゼッタか、よかろう」


「奴らの首、3日以内に」


「期待してるぞ、レイ・ハリーオ」


 レイ・ハリーオ。あの有名な殺し屋が、あんな娘だとは。

 本当に殺れるのか?



「翌朝、王都に入ってきたのは、ノノとロッシュよ」


「ノノとロッシュって、前に話してくれた。雪男退治した?」


「そうよ、二剣の短剣使いの少女ノノとパナ族の少年ロッシュよ」


「パナ族って銀髪で白い大きな丸い目で瞳がないのよね」

「そんで、ロッシュの背はノノより低い」

「雪虎の毛皮を着て雪大牛の毛皮のブーツ!」


「そうよ。覚えてたのね」


「オレ、二人の冒険が好きだ。とくに雪男退治の話が」


「ノノは、黒髪でパープルの目だ」

「短めの白いワンピをベルトで締めて黒いタイツに黒短ブーツ!」


「みんな、よく覚えてるね、前来たのは1年前だよね」


「ノノとロッシュの冒険はね、みんな大好きなんだ!」


「まあ話は最後まで聞こう。みんな」



 ∇

 王都のある食堂。


「あたしは、パカパカのステーキにモコサラダ」

「おいらはタイコシカのスープ、あとパンコ、ニ人前」


「ハイよ!」


「まともな食事は、コレが最後かもね」

「え、雪男の賞金もうないの?」

「だって、あの後で町でパァっとみんなで飲み食いしたじゃないの」

「アレは店の奢りじゃなかったの?」

「半分はね」

「セコーっ!」

「ここでなんか、仕事をさがそう。宿代はないわよ」


 すると外で何か騒ぎが。


「何かしら?」

「見にいく」


 店先の噴水広場で、水ブタみたいな顔の大きな、ヒト族とは異族の女性が血だらけで倒れていた。

 それを大剣を背負った大男が足蹴にしてた。 


 男は頭巾に黒マントを羽織っていてギラついた目しかわからない。その目は、明らかにヒト族の目ではなかった。

 その男の先に似たような姿の連中が三人。


「ナニがあったの? 誰か……」


「あの奥さんが旦那の仇を討とうと刃物で。返り討ちさ。あの四凶を殺せるわけないよ」


「昔は国のために戦ったというけど、平和になったらあのとおりさ。くわばらくわばら。関わりたくないね」


 何事もなかったように。去っていくゴーラン砦の四凶たち。


「ノノ、まだ息が」


 ゴーラン四凶の一人に返り討ちにされた女のトコにかけよるノノとロッシュ。


「ハァハァおねがい、娘を」

「娘?」


 ロッシュが、周りを見回すと食堂の入り口前に女と似た顔の小さな子が唖然として立っていた。


「娘をお願いと言われても……」


 王都外にある墓地。

 牧師と葬儀屋に頼んだ金は娘が持っていた。

 仇討ちの前に母親が娘に渡した全財産という。


 ノノとロッシュと殺された母親の娘の寂しい埋葬だった。


「君はどうするの?」

「王都内の叔父さんのとこに。かぁちゃんが、何かあったら行けと」

「そうか、じゃコレはお母さんの葬儀代の残りだ」

「ねぇあたしがお母さんの仇をとるから、100フラゼッタ取っていい」


 と、ロッシュが残金を渡そうとした金袋にノノが手を入れて言った。


「ノノ、ナニ言ってんだ」

「おネイちゃんが、かぁちゃんの……」


「あたしら、こう見えて強いんだ。マヤーラの雪男を倒したんだよ」

「えっ、マヤーラの雪男を、凄い!」


「だけど、ノノ、あいつら100フラゼッタで殺る仕事じゃないよ。少なくても、この4倍は」

「まて、ロッシュ。まだ依頼は出てないよ」


「100フラゼッタって、残りのお金の……」

「半分以上だ。後はあんたの物よ」

「それで……かぁちゃんの仇を」


               つづく

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