6話 心配な幼馴染
ラフィネの話です。
一方その頃、ロアの幼馴染のラフィネはというと……。
一緒に住んでいた宿にて、ロアの帰りを待っていた。
「あの子、ちゃんと帰ってこれるかしら……」
心配そうな顔で、ロアの帰りを待つラフィネ。
それはまるで、初めてのお使いをする子供を持つお母さんみたいな気持ちだった。
ラフィネとロアは幼馴染である。
そしてラフィネはロアのことを愛していた。
「あの子には私がいないとダメだし、私にはロアがいないとダメなんだもん……」
ひ弱な少年、ロアは昔からそうだった。
目を離せば、村長の娘である姉妹にいじめられていて、その度に毎回自分が助けてあげていたのだ。
ロアには親がいなかった。
ロアを殺そうとした罪で、牢獄に収容されているから、ロアは一人暮らしだったのだ。
だから、自分がよくロアのお世話をしてあげていた。
泣いていたら抱きしめてあげたし、一緒にお風呂に入って綺麗に体を洗いっこした。
ロアは自分の全てだった。
そして、自分はロアにとって姉のような存在だったのだ。
だから、ロアのために、ラフィネは鬼になることにした。
「あの子は、私が強くしてあげないと……!」
その結果が、今回のダンジョンへの置いてきぼりだった。
今頃、ロアはダンジョンから必死で帰ってこようとしているだろう。
ラフィネは信じていた。ロアがちゃんと帰ってきてくれることを。
そして、帰ってきたら、いつものように自分に甘えてくれることを。
ロアは甘えん坊なのだ。
「そんなロアのためにも、美味しいご飯を作って待ってなきゃ……」
ラフィネは、ロアのことを思いながら、ご飯の準備をすることにした。
ロアは、卵焼きが大好きだ。
だから卵をたっぷりと使った甘い卵焼きを作ることにした。
コンコンとたまごの殻を割って、黄身と白身を分けて、丁寧にかき混ぜて。
砂糖を大さじ一杯で入れて、熱々に熱したフライパンでその卵焼きを焼き始める。
じゅわ……っ。
一滴だけ、卵を垂らすと、いい音を鳴らしてくれた。
準備万端だ。
ラフィネはいつものようにフライパンで卵焼きを作りはじめ、数分が経つ頃には、半熟でふわふわな卵焼きを完成させて、ロアがいつも使っているお皿へと盛り付けて余熱を取ることにした。
「たくさん作ってあげるんだから……っ」
フリルがついたピンク色のエプロンを揺らし、うっとりとした表情で追加の卵焼きを作るラフィネ。
ズレていた。いろんなことが。
しかし、ラフィネは一生懸命に、ロアのことを愛しており、今もロアの帰りを心待ちにしているのだった。