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4話 オマエを男の娘にシてヤる

 

 ニュルニュルと……絡まってくるものがある。

 触手だ。ヌメヌメとベタついている触手が、ひ弱な僕の体に巻きついている。


 びゅるびゅるびゅるびゅる。


「うわぁぁぁぁぁん……””””」


 僕は情けない声で泣くことしかできない。

 悲しみの泣き声だ。


 ちなみにラフィネはというと、とっくにこの場からいなくなっていた。

 彼女は涙ぐみながら、転移の魔道具を使用すると、一瞬で僕の前からいなくなったのだ。

 別れ際のラフィネは、悲しそうな顔をしていた。僕と「離れたくない」と言って苦渋の決断みたいな顔だった。彼女も望んでこういうことをしたわけではないと言った感じだった。


 そして謎の粘液によって溶けていく僕の姿をたっぷりと最後まで目に焼き付けた後、いなくなってしまったのだ。


 それによって、置き去りにされてしまった孤独な僕。


 蠢く触手。


 香りたつ悪臭。


 思った以上に触手は強烈で、今まさにその真価が発揮されようとしていた。


 ニュルニュルニュルニュル……。


「うわぁぁぁぁぁんんんん……”””!! だめぇぇぇえええ……””””っ」


 触手の数は8本。

 それが僕の細い手足を絡めとり、それぞれ2本ずつの触手が絡みつくように僕のか弱い手足を締め上げた。


 その状態のまま、僕はモンスターの真上で拘束される。


 下を見れば、モンスターの体がぱっくりと割れていて、まるでイソギンチャクのようなものが、僕のことを見てよだれを垂らしているように見えた。


「ああ……ああ……っ」


 震える僕。まるで釣り上げられた、可愛らしいチワワのようだ。


 あのねっちょりとしたもので僕の体を食べられたら、一体、どうなってしまうだろうか……。


 考えただけでも恐ろしい。


 じゅわ……っ、じゅわ……っ。


「あぁぁ……っ、やめてよぉ……っ、あったかいよ……っ」


 何やら、ほかほかの湯気が魔物から出てきていた。


 生暖かいそれは、まるで炊き立てのご飯みたいだった。


 じゅわ……っ、じゅわ……っ。


『オマエを……男の娘にシてヤる……』


「なんでしゃべれるのぉぉぉぉ!?」


 じゅわ……っ、じゅわ……っと、魔物が僕と意思疎通をしようとしてきた。


 僕は、泣いてしまいそうだった。


 ここには、血も涙もない。

 あるのは、ほかほかの湯気と、ヌメヌメの液体だけだ。


 そんな涙ぐむ僕の目尻を、触手がねっちょりとぬぐい始めていた。


 ……そんな時、足音が聞こえた。


 一瞬、ラフィネが戻ってきてくれた! と思ったものの、そうではなくて……。


「! 神秘!」


「うわああああああああぁぁぁん……”” 。知らない人だ……ぁぁぁ””」


 赤い髪をした綺麗な女性がやってきて、触手に絡みつかれて、服を溶かされる僕のことを凝視していたのだ。


 僕は咄嗟に溶けたズボンの下を隠そうとしたものの、手を動かせないから隠せない。


「待ってくださいよぉ〜、グローリアさぁ〜ん」


「!」


 と、もう一人、少女が現れた。

 その少女は小さな歩幅で駆け寄ってくると、赤い髪の少女の元へと到達し、そして……見てしまったようだった。


「あ! 触手が……9本!!」


「一本、違うよぉぉぉぉお””!」


 触手の数は8本なのに……一本、別のものまで数えてしまった彼女。


 その触手は色違いの触手で、彼女は「亜種だ!」と僕の下半身を見て目を輝かせていた。


「「でも、どうしてひ弱な男の子が一人でこんなところに……」」


 二人は腕を組んで、まじまじと僕を観察するように、首を傾げていた。


「うう”……うう””……っ」


 一体、何が間違っていたのだろう……。


 裸で触手に絡みつかれている僕は、二人に観察されながら、涙を目にいっぱい溜めて、啜り泣くことしかできない。


 そして、危機が迫っていた。


「……これは人に擬態している魔物かもしれません。ちょん切ってしまいましょう」


「うわあああああああ”””ん……死んじゃうよぉぉぉぉおお……”””」


 彼女が剣を抜いていた。


 狙いは、僕の下半身にある色違いの触手なのだった。


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