13話 妹にしてあげるっ。
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ロアが住んでいた村には、美少女が3人もいるとして有名だった。
まずは、ラフィネだ。
ロアの幼馴染だ。
黄金の髪はまるで太陽のように眩しくて、美しさと強さを兼ね揃えた彼女は、魔導剣士パラディンのスキルまで手に入れた。
そんな彼女は、王女様のように思われており、逆に周りからは近づきづらい存在だと思われていた。
それで、残る2人の美少女といえば、村長の娘の姉妹だ。
その姉妹は、小さい頃から可愛がられて育った姉妹で、実際に見た目も可愛らしく、ラフィネほどではないものの、貴族令嬢のようだと言われるぐらい美人だと思われていた。
愛嬌もあったため村人全員から好かれていたし、年頃の男子たちはみんなその姉妹に好意を寄せていた。
要は、ラフィネよりもその姉妹の方が親近感があって、少し理想は高めだけど、十分魅力的だと思われていたから、彼女たちはモテていたのだ。
村長の家ということもあり裕福な生活をしている彼女たちは、どことなく余裕もある性格をしていた。
しかし……。
彼女たちはどう頑張っても、ラフィネの格下でしかないのだ。
それをコンプレックスに抱いていたのか、それとも別の理由なのか、それは分からない。
だけど、彼女たちは何か物足りなさを感じていた。
そして、その正体を、知ることができた。
「もう1人、妹が欲しい……」
「三女が欲しいわ……。私たちを恐れ敬う三女が……ッ!」
その結果、選ばれたのが、ひ弱な少年ロアだった。
男の子だけど、ひ弱なロアは、妹にするにはうってつけだったのだ。
だから彼女たちは、村に住んでいたひ弱な少年ロアを妹にするために、いろんなことをした。
まずは、分からせてあげないといけない。
「妹にならないのなら、パンスト被せて引き摺り回してやる……!!」
「脱ぎたてのパンストよ……! 嬉しいでしょ!? ほら! 嬉しいって言って、泣きながらお礼を言いなさいよ!」
「いやだよぉ……”””! くさい……! くさいよぉ……! くさくて死んじゃうよぉ……”””!」
「「誰が臭いですってッッ!?」」
ずりずりずり……ッッッッッ!
それは、パンスト引きずり回しの刑だった。
そして、結局はラフィネと共に村を出たロアのことを妹にすることができなかったその姉妹は、数年が経ち、村から奉公に出されることになり、現在、冒険者の新人講習を受けるために、冒険者ギルドにやってきていたのだった。
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……縮こまっている。
僕の体と心が。
ど、どうして、あの姉妹がここに……。
忘れもしない。あの、姉妹が冒険者ギルドにいるよ……?
そして、姉妹は四人組の冒険者と一緒に新人講習を受けるとのことで、受付のバニラさんに手続きをしてもらって、準備をすることになるそうだ。
あの2人は僕の存在には気づいていない。だから今のうちに早くここから逃げないと……またいじめられてしまう……。
「新人講習は四人組パーティーで行います。だから、ルーキーの『七色の輝き』の皆さんはそのまま4人でパーティーを組んでください」
「「「「はーい!」」」」
元気に返事をする四人。
「それで、村から出てきた姉妹の子達は、メンバーを探すとこから始めましょうか」
「「いいわね。望むところよ」」
強気な姉妹。当たり前だけど村にいた時よりも成長していて、自信に満ち溢れた雰囲気を感じる。
「でも、メンバーは簡単に見つからないかもしれません。その場合は、また後日、日を改めて新人講習を受けることになりますが……」
難しい顔をする受付のバニラさん。
姉妹は、できれば今からすぐに受けたいといった様子だった。
「私、待つのは嫌いだわ」
「待たせるのは好きだけどね! 私の告白を返事を待ってる男なんてたくさんいるのよ! ほんと、私ったら罪な女っ」
「お二人は美人さんですもんね」
「「もちろんよっ」」
バニラさんの言葉に、二人が腕を組んで胸を張った。
二人は村にいた時から、いろんな人に美人だと言われていた。
だけど、僕はそんな二人から、誰も見ていないところで、踏んづけられていじめられていたから、恐怖の方が勝っていた。
「あ、ロアくん。少しいいかしら?」
「グローリアさん?」
グローリアさんが僕に話しかけてくれた。
「ロアくん、せっかくだし、新人講習受けてみない?」
「……!? 僕が……ですか?」
「うんっ。人数足りないみたいだし、講習はダンジョンで行われると思うの。多分、そのダンジョンではいろんなものを拾えるし、コンパス代わりのものも見つかるかも。ロアくん、強くなりたいっていってたから、一石二鳥だと思って」
「確かにそうですけど……」
僕は力が欲しかった。
ひ弱な自分を変えられる力を。
思えば、僕が力を欲したのは、あの姉妹にパンストでしごかれたのも理由にあると思う。
だから、グローリアさんの提案は嬉しいものだけど、今新人講習を受けるとなれば姉妹とパーティーを組むことになるんじゃないのかな……!?
ーーと、その時だった。
「「!?」」
「!」
……殺気。
そして、ロックオンされていた。
「あら……? あなた、どこかで見た顔な気がするわね?」
「そのひ弱な顔……懐かしい気がするわ」
「!」
姉妹が僕の存在に気づいたようだった。
だけど、まだ僕が僕なことには気づいていないようだった。
「ひ弱そうな女の子で、可愛いわね」
「スカート似合ってるし、妹にしたいぐらいだわ」
「うう””……」
……そう、今の僕は、スカートを履いているのだ。
グローリアさんの服を借りている僕は、女の子の格好をしている。だから今の僕は男の子じゃなくて、女の子なのだ。
「懐かしい匂いがするわ。ロアの匂いがするかも」
「あのね、私たちの村にはロアって男の子がいたのよ。男のくせに私たちに泣かせられるやつで、パンストかぶるのが好きだったやつよ」
「うう””……」
違う……。
そう言いたかった。
だけど、僕は今、スカートを履いている女の子だから、ロアではないのだ。
「うふふっ。でもちょうどいいかもっ。あなた、私たちとパーティー組みましょっ」
「たっぷり可愛がって、妹にしてあげるからねっ」
「え、あっ、うわああああああ””ん……”””っ」
結局……。
にっこりと、嗜虐的な笑みを浮かべる二人によって……僕はパーティーに引きずり込まれたのだった……。
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