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12話 あの村の村長の姉妹が……。

 

「昨日、ロアくんが譲ってくれた触手のおかげで、本当に助かったんですよ。あれは珍味として有名だし、ギルドから卸すという名目で、この街の定食屋さんとか、有名な料理家とかに売れば、資金も入るし、コネもできる。本当、ロアくん、このギルドの立役者です!」


「それで、報酬がこのお金……」


 僕は目の前にある大金を見ながら、思わず息を飲んでしまった。


 こんなお金初めて見た……。

 しかも、これを全部もらっても良いということだから、頭が追い付かなそうだ。


「でも、このお金……僕がもらってもいいのでしょうか? あの触手を倒したのはグローリアさんですし、ギルドに持って帰ったのはバニラさんですし……」


「いいんじゃない? ロアくん、今、お金持ってないんだし、もらっておきなさいな。ロアくんには正当なその権利があるわ」


「そうです! ロアくんに受け取ってもらわないと申し訳ないです! 何より感謝の印ですもの!」


 グローリアさんとバニラさんが僕の手を握り、受け取っていいと言ってくれる。


「あのっ、ありがとうございます。では、いただきます……」


「うん!」


 僕は恐る恐るそのお金を受け取らせてもらうことにした。


 お金がないのも本当だし、お言葉に甘えて大切に使おうと思う。


「それで、ロアくん、おうちに帰れるめどは立ちましたか? 無くしたコンパスの代わりは見つかりましたか?」


「あ、いえ、まだで……」


「これから、色々準備しようとしていたところよ」


「そうでしたか。ギルドにはいろんな情報が集まってますので、ぜひ、有効活用してくださいね」


「ええ、実はそのためにギルドに来たの。バニラ、今、あの街がどの辺にあるか分かる?」


「あの街というと……『オムロルムの街』ですか?」


 バニラさんはすぐにピンと来たようで、その街のことを思い浮かべたみたいだった。


『オムロルムの街』。

 通称、場所が変化する街。


 その街には少し特殊な出来事が起こり、街自体の存在する場所が変化することがあるのだ。

 おかしな話だが、街自体の場所が無意識のうちに分からなくなることがある。


 それには諸説あり、磁場が狂って、街の周りの魔力も乱れ、街に近づく者の方向感覚を惑わせるだとか……。


 昔から、そういう話が多々あって、僕とラフィネが拠点にしていたのが、よりにもよってその街だったのだ。


 だから、コンパスがないと帰ることができない。

 でも、僕はそのコンパスをなくしてしまっている。

 逆に言えば、コンパスさえあれば帰ることができるということで、だからコンパスの代わりになるものでもいいから、手に入れなければいけないのだ。


「うーん、そうですね……。今のあの街は、ここから南方のところにあると聞いたこともありますが、同じように東方に発見したとも聞いたことがあります」


「つまり、結局は分からずじまいというわけね……」


「お力になれそうもなくて、申し訳ございません……」


「あ、いえ、教えていただいただけでも、助かりました!」


 僕は教えてくれたバニラさんにお礼を言うことにした。


「バニラさん、ありがとうございました」


「……! いい子です! グローリアさん、ロアくん、めちゃくちゃいい子じゃないですか!」


 むぎゅっ。


「あ、ちょぉ……っ」


 カウンター越しに僕を抱きしめてくれるバニラさん。

 控えめだけど柔らかな胸が僕の顔を覆ってくれて、彼女の胸はバニラのような溶けそうな香りがした。


「ええ、ロアくんは、本当にいい子なのよ。でも、困ったわね。帰るあてがないのなら、今日もうちに泊まっていって……そのあとは、やっぱりうちの子にならないかしら?」


「だ、だめですよぉ……」


 グローリアさんが、僕を自分の家の子にしてくれると言ってくれている。

 それは、ありがたい申し出だけど……僕には帰らないといけない場所があるから、それはだめなことだった。


 と、その時。


 ギルドの中に数人の冒険者の人がやってきた姿が目に入った。

 女性の冒険者だ。その人たちは、バニラさんのいるこの受付へと歩いてきている。


「バニラさん、少し早いですけど、早めに来ました!」


「あっ、『七色の輝き』のパーティーのみなさん。おはようございます」


「「「「おはようございます。新人講習、よろしくお願いします!」」」」


 四人組の新人さんたちのようだった。


 彼女たちは礼儀正しい姿勢で、バニラさんに向かって頭を下げている。


 そして……。


「!?」


 ……僕は見てしまった。


「実は今日は、村から出てきたばかりの姉妹の子達も、一緒に受けたいって言ってたので、連れてきてしまいました!」


「「ども、しゃしゃしゃ〜す」」


 彼女たちの背後……。

 そこには、二人の少女がいた。少しばかり態度が雑な、僕と同じ年頃の少女だった。

 それは、田舎から出てきたばかりの、癖の強そうな姉妹で……。


「アタシ、腕っぷしには自信があるんですよ〜」


「なんたって、村で男の子相手に泣かせまくっていましたから〜」



 ……あの意地悪そうな顔、忘れはしない……。


 村長の娘の姉妹……、人に頭にパンストを被せて引きずり回す蛮行……。


 ど、どうして、ここに…、あの村のあの姉妹がいるのぉ……!?。


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