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11話 大金持ちになる気配

 

 早朝。

 目を覚ました僕は、ベッドから起き上がると、軽く家の中の換気を行うことにした。


 玄関のドアを開けると、朝の爽やかな空気がゆっくりと流れ込んでくる。暑くもなく、寒くもない、麗かな春のように、過ごしやすい気温だ。

 そして、雲の切れ目から朝日が差し込むのを浴びて、背伸びをすると、ドアを静かに閉めて、キッチンに向かい、朝食を作ることにした。


 パンと、スクランブルエッグだ。


 起きたばかりの体を温めれるといいかもと思い、コンソメスープも作ることにした。


 ベーコンを細かくカットし、コーンも用意する。それらをコンソメの素を溶かしたスープで煮ていく。他にも野菜を細かくカットし、食べやすいようにしていった。パセリもいれた。


「んん〜ん、いい香りね。おはよ、ロアくん」


「あっ、おはようございます。グローリアさん」


 寝癖をつけているグローリアさんがやってきてくれた。

 寝起きのグローリアさんは、短パンとタンクトップというラフな格好をしていて、なんだか自然体な雰囲気がした。


「朝ごはん、コンソメスープなのね。ちょうど、食べたいと思ってたのよ!」


「昨日の夜、ルルナさんがコンソメスープがいいって言ってくれまして……」


「それで作ってくれたのね。うんうん、いい子いい子っ。本当にうちの子になってほしいぐらいだわっ」


「ぐ、グローリアさん……っ」


 むぎゅりとグローリアさんが、キッチンにいる僕を抱きしめてくれた。

 僕はタンクトップから覗くグローリアさんの深い谷間に顔を埋めることとなり、朝のグローリアさんはミントの香りがした。柔らかさと爽やかさが僕の顔を包み込み、僕の顔はそのまま豊かな谷底へと埋まっていくことになる。


「ふふっ。やっぱり、ロアくんはかわいいかもっ」


 よしよし、とグローリアさんが僕の頭を撫でてくれた。


「さてとっ。作ってくれてありがとね。それで、もう少しかかるかな?」


「あ、はい……。一応、すぐにも食べれますけど……」


「ルルナが起きてないものね。あの子はあと5分ぐらいで起きてくると思うわ。あの子、ご飯の時間だけは、欠かさずに起きるから。じゃあ私はそれまで、軽く運動してきてもいいかな?」


「どうぞ、ぜひ。お飲み物も用意しておきますね」


「本当、気が利くわねっ。ロアくん、本当いい子っ」


 むぎゅりっ。


 その後、僕はたっぷりとグローリアさんに抱きしめてもらって、グローリアさんを見送ると、残りの準備もしていくことにした。

 そして、そのあとはルルナさんも起きてきて、運動を終えたグローリアさんと3人で朝食をとっていくことにした。


「んまい……。朝から手の凝ったものが食べられるなんて幸せ……。ロアくん、もううちの子になればいいのに」


「あ、ありがとうございます……」


 ルルナさんも、グローリアさんも本当に優しい……。

 二人の優しさに、僕はなんだか照れくさくなった。


 そして食後はテーブルの上を片付けると、軽く掃除を行うことにした。

 窓を開けて、外の空気の入れ替えをしながら、さっきまでは空に雲が出ていたけど、今は雲も無くなって快晴になっていたので、お布団を干すのにいい天気だった。


「……お布団も干しましょうか?」


「賛成。今日はロアくんのおかげで眠気もないし、久々に働ける気がする」


「まったく……ルルナったら現金な子ね。じゃあロアくん、掃除終わったら、今日は私と一緒に街に行こっか。ロアくん、自分のおうちに帰るなら、その道中で、色々必要になると思うし」


「グローリアさん、ありがとうございます」


 僕はグローリアさんたちと掃除を終わらせると、出かける準備を始めた。



 昨日、僕は色々なものをダンジョンで失ってしまった。

 まず、服だ。今はグローリアさんの服を着させてもらっているけど、自分の服はない。

 だから服が必要になる。

 それに……グローリアさんから借りている服は、女性ものの服だった。


「ロアくんの履いてるスカート短いし、足綺麗だね」


「み、見ないでぇ……」


 ルルナさんが僕の足を見て、興味深そうにしていた。

 僕はスカートを押さえて、できるだけ隠そうとした。


 僕は男の子なのに女の人の服を着ていて、少し恥ずかしいから、せめてズボンを履かないと下半身が心許なかった。

 でも、グローリアさんの服は動きやすいしおしゃれで、何より可愛くて、いい服だと思った。


「その服はそのままロアくんにあげるわよ。だってロアくん似合ってるもんっ」


「ふ、複雑です……」


「ちゃんとした男の娘にしか見えないよ」


「お、男の娘……」


 そんな僕は玄関前にグローリアさんと一緒に立っていて、ルルナさんが僕たちの見送りに来てくれた。


「せっかくだし、ルルナも街についてくればいいのに」


「パス。私、街嫌いだもん」


「そっか……。じゃあお留守番、お願いね」


「ルルナさん、ありがとうございました」


「こっちこそありがとね」


 ルルナさんは僕の手を握って、握手をしてくれた。



 * * * * * *



 それからの僕は、グローリアさんの馬に乗って、ここから程なくして辿り着ける街へと移動を始めた。

 外壁に囲まれている、平和で栄えている街だ。


 そして、その街に辿り着いてから、グローリアさんが向かったのは冒険者ギルドという建物だった。


 剣と盾の看板が掲げられているその建物の、受付のところ。

 そこには、見覚えのある少女が、制服姿で立っている姿があった。


「あ、グローリアさん! それと、ロアくん!! 昨日ぶりですね!」


「あっ、バニラさん!」


 彼女はバニラさん。

 昨日、ダンジョンでグローリアさんと一緒に行動していた人だ。


「冒険者ギルドにようこそ! ロアくん、あなたを歓迎致します」


 どうやらバニラさんはギルドの職員さんだったようだ。

 そんなバニラさんは僕たちを歓迎してくれて、僕たちは彼女の待つ受付へと歩み始めた。


 そして、


「それでロアくんにお知らせがあります。昨日、譲ってもらった触手が思った以上に高い価値があるものだったので、その報酬をどうぞ、お受け取りください」


 どん! 


 カウンターに置かれたのは、ずっしりと重さのありそうな布袋で。


「合わせて、金貨1000万枚です」


「えええぇぇぇ!?」


 金貨1000万枚……。


 それって……家が建つ金額だ!?


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