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3話 侍女との別れ



 父と話を終えたラステリゼはどっと疲れが押し寄せてきたのを感じた。地上界へ行っても衣食住には困らないことは嬉しいが、別人になって地上人の生活をすることに戸惑いを感じていた。


「エステリゼって呼ばれてもダレ?って顔してそう」


 容姿も変化すると言われたから、本当に別人になってしまうのね。小説でよく見る異世界転生みたい。私の場合は異世界変身?になるのか。



「お帰りなさいませ、姫様。お疲れ様みたいですね。お茶をにいたしますか?」


「ありがとう。お願い。疲れちゃった」



 疲れたと顔に出ていたのか、自室に入ると、私の専属侍女がお茶の準備を始めた。




 ユーリル・スノウ。




 伯爵家の次女で、18歳。行儀見習いで城で勤めていたのだけど、16歳の時に降された神命が『天上界の姫君の世話』とされたため、以来私の専属侍女となっている。


 とっても色白で、金色の髪を綺麗なのに襟足までしかなく、紫色の瞳は宝石のようにキラキラと美しい。容姿が綺麗な侍女だ。そろそろ結婚適齢期なユーリルに良縁を幾つか伝えたが、いつも決まって


「私は姫様のお世話が生きがいなので、必要ありません」


 と、断られている。今回、神命で私が地上に行くのを機にユーリルも自分のやりたいことや良い相手と歩んでくれればなと思う。


「ユーリル、今日だけお茶に付き合ってくれる?あなたにも話したいことがあるの」



「はい。分かりました。神命のことですね。私も協力できることがあれば姫様のために力を尽くします」


 

 あー、もう。これは、本気で解放してあげなくては。嫁き遅れ真っしぐらね。


 お茶の準備が整うと、私とユーリルは向かい合って椅子に座った。お茶を一口飲むと漸く今日の疲れが和らいでくる。




「ユーリルのお茶、いつも美味しくて大好きよ」


「……姫様にそう言ってもらうと、私も嬉しいです」



「だから、もうこのお茶が飲めなくなるのは、寂しいわ」



「……」


 笑顔で伝えたが、ユーリルの顔が強張るのが分かった。


 紫色の瞳が揺らぐ。アメジストのその瞳が綺麗だなといつも思っていた。ずっと見ていたいなと。ユーリルは、私の飲みやすいお茶の温度、いつもその日に飲みたい茶葉を理解していれてくれる。勿論、お茶だけでなく、ラステリゼの身の回りをいつも完璧に整えてくれていた。大好きな侍女。


 神命のことをユーリルに話すと、しばらく絶句していたが、納得したのか、私がこれからは自分の未来を考えるように話すと頷いていた。




「ありがとうユーリル。大好きだった。私が天上界に還っててきたら、結婚しているかもしれないわね。今から再会が楽しみだわ」


 

「姫様。私は想い人がいるので還ってきても私は結婚しているかは分かりません。でも、姫様から自由に生きるよう言われたので、まずはその人を追いかけます」


 ユーリルに想い人がいるとは聞いたことがなかったラステリゼは驚いたが、大切な人がいるのは嬉しかった。


「その人とうまくいくことを願うわね。私の知っている人かしら?」



「知っているというか……まあ、そうですね」



「ふうん?では、還ってきてからのお楽しみにとっておくわね」


 にこりと笑いながら返事をしながら、お茶の時間を楽しむ。還ってきてからの楽しみができたラステリゼだった。



 お茶を済ませると、今日は疲れた夕食はいらないこと、すぐに眠ることを伝えて寝室に向かう。




「じゃあ。おやすみ……ユーリル」


 寝室へ消えた主を見送り、侍女は紫色の瞳を細めた。


「姫様。きっと追い付きますから」


 

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