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1話 天上界の美姫『オーロラ姫』の神命



 かつてこの世界には神々が人と共に歩んでいた。



 しかし、今は人と神は別の世界に在る。



 一説には、神々が人間を見棄てたと言われている。


 一説には、人間が神々を必要せずとも自分の力で立ち上がる力を持つようになったため、神々を天上世界へ還したと言われている。



 ーどちらが、真実か。今となっては、知ることができない神話。




 ✳️✳️✳️


「地上って、文献に記されているように美しいのかしら……」




 天上にある国、アスマリア王国。


 その国のオーロラに輝くクリスタルで守られた城があった。オーロラ城の淡いグリーンの一室で私、ラステリゼ・ルノ・アスマリアはぼんやりとつぶやいた。


 とっても不安で、本当はうろうろと歩きたい。


 今日は、私の誕生日。天上を統べる王から神命を与えられる日。


 万が一最悪な神命を与えられたら、私の魔法で抗うしかないわ。




「……」




 時間がすごく気になるが、待つしかない。


 アスマリアの姫として逃げるわけにはいかない。




 私は、運命を受け入れ、進むか抗うかはその時次第。


 ため息をつくラステリゼに侍女達は声をかけたいが、これから姫が受ける神託については何も手伝えない。無力な自分たちが励ましても無意味だ。侍女達はラステリゼ姫の儚く美しい姿を見ていることしかできなかった。



 ラステリゼ・ルノ・アルマリア姫。アルマリア王国の第3王女。その容姿は、オーロラ色の美しく変化する、ハッとするような輝く緑の瞳に、雲ひとつない蒼天を思わせるウェーブのある青髪。頬は、薔薇色で唇は淡いピンク色の天上の美しい姫君。天上界の至宝、『オーロラ姫』と呼ばれる美姫。


 


 天上の姫として誕生して16年。天上界では16になると姫だろうが臣民と変わらず神命を創造主から与えられる。地上と天上の均衡のために世界を創った創造主からなすべきことを伝えられる。

 地上で言うところの就職だ。天上界の王が神託の泉で祈り、さらに天上にいる創造主から個人へ神託、神命が降る。



 ラステリゼの父王は早朝から祈りを捧げている。もう正午になる。一度様子を見に行こうかと立ち上がると突然、グニャリと眩暈がした後、頭に声が響いた。



 いよいよ神託が降るようだ。




――ラステリゼ・ルノ・アルマリア。此より汝に神命を降す。時止め姫。地上界へ赴き、争いなる世界を平和へと導くのだ。




 突然、頭に響く低い声。これが神命だと理解したラステリゼは慌てて目を閉じて集中した。


『創造主様。争いを止めるとは、地上は今戦争状態なのですか?私などに止められるでしょうか?』


 ――汝の時止めの力は2つとないもの。以上だ。約束したぞ。2つの世界を平和へと導くと――。



 『え、お待ち下さい!約束されても、無理ですわ』


 慌てて呼びかけるが、全く返事はない。神託は終わったようだ。静まりかえった部屋でラステリゼは愕然とした。


(えー‥。土地勘もない地上界の戦争を止めるなんて大それたこと、16歳の温室育ちの姫にできる?できないわよね)


 神命。それは天上、地上を創ったとされる創造主が、2つの世界の均衡を保つために地上人よりも能力が高い天上人に課す仕事。神命に背いた者は天魔法を失い地上に堕ちる。


(と言っても、地上に赴くことになるなら堕天と同じだとおもうわ。天魔法が使えるか使えないかだけで、神命を遂げなければ天上に戻れませんもの。お父様に聞かなきゃだわ)




 父は王としての役割である祈りを終えて消耗しているだろうが、16歳の小娘が戦争を止める(命がかかった)という、少々常軌を逸した神命を伝えておくべきだ。侍女に王に大事な話があり、すぐ面会したいとの連絡を頼み、ラステリゼは長椅子に座る。



 戦争を止める。それは、天上界の姫だから降った神命なのかしらと思う。地上のことは地上人で解決できないのだろうか。天上界の姫が介入しなければならない戦争。考えるだけで身体の震えが止まらない。人が死ぬところなど見たくない。



「無理よ。地上のことは文献でしか知らない。たった一人の天魔法だけで戦争が終わるはずないでしょう」


 

 暫くして連絡から戻った侍女から王がすぐ神命報告に来るようにと伝言を受け取ると、ラステリゼは父の元へ向かった。


 父は難しい神命なら手伝ってくれると言っていたが、天上界から離れられない王について来てと頼むのは無理だ。私が一人でやらなければならない。断ったら堕天で地上暮らし。断らなくても神命で地上暮らし。どちらを、選んでも同じだが、決定的に違うのは、神命を遂げたら天上界に帰れる。


 

 堕天になり、永久に地上にいたくなければ、やるしかないのだ。それが過酷と分かっていても、他に道はない。




 ――覚悟を決めなきゃいけないみたいね。





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