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人生初めての死

 

「かなり、壁から離れたな。しっかし、どこにもグロウリスの死体が見当たらない。これじゃ、いつまでたっても仕事が終わらねぇよ」


 ヴァニクは、機械の森をかき分けてかなり遠くまで歩いてきていた。ここまで来るのに一匹もグロウリスに会わなかったのもおかしい。


「さっき聞いたギャリオスとかいうやつがうろうろしているから、ほかのグロウリスが逃げたとか?でも、奴らは機械なんだろ。だとしたら、戦う理由ってなんだ。肉食と草食みたいな動物の関係性があるのか?だとしても、その目的は何だ?」


 そんなことを考えながら歩いていたヴァニクは少し開けた場所に出た。今まで空を覆っていた機械の木がなくなり、どこまでも青い空が広がった。


 「空の上にも、グロウリスは視認できない。本当にいるのかよグロウリスなんて」


 そんなことを口走り少しあたりを見渡した。するとある一定の方向を見るとひどく視界がぶれることに気づいた。ヴァニクは不思議に思いその方向に歩き出した。

 ジージージーと鳴り響く砂嵐のような耳障りな音。


「うるさいな!なんなんだよ。ん?なんだ・・・立ち入り禁止?」


 道の先には看板が一つ、黄色い看板に黒文字で、立ち入り禁止とだけ書かれていた。


「なんだ?ここだけずいぶんと現実世界みたいなデザインだな。これは、あれかゲームとかでよくあるストーリの進行度によって通れるようになるステージ的な奴か。だとしたらあまり関係ないな。それにもしかしたら、この先がドイルさんが言っていた危険区域かもしれないし。近づくのは止した方が良いかもしれないな」


 ヴァニクは、違和感しかない看板を見て少し考えると、その場を後にした。もと来た道を戻り、先ほどの開けた場所に戻ってきた。しかし、先ほどまで開けていたその場所には大きな機械の塊が転がっていた。どことなく、生物的な造形のそれは無残なものだった。無造作に引き裂かれた体表の鉄板。強引に引きちぎられた手足のような、部位が無造作に転がっていた。


「こ、こんなものさっきはなかった。いったいこの短い間に何があったんだ。・・・グロウリス、だよな?ドイルさんが言っていたグロウリスの死体か。・・・今確証を持った。こんなこと人間にできるわけない、こいつらは、グロウリスは殺し合う。なぜかは分からないが、同族で殺し合う。ドイルさんの言葉が今理解できた。殺したやつってのは、グロウリスのこ・・・と」


 開かれた、空が一瞬で影った。ヴァニクは生つばを飲み込み上を見上げた。


 ブオン


 無機質な重低音とともに、赤く光る二つの球体がヴァニクを見下ろしていた。


「うそ、だろ・・・」


ギギャーーーー!!


 ヴァニクの頭上で、金属の化け物が雄たけびを上げヴァニクに向けて、チェーンソーのような両腕を振り下ろそうとする。

 しかし、ヴァニクは動かない。いや動けなかった。足が震え、腰が抜けその場にへたり込みそうになった。その時だった。


「何やってんだ!」


 その野太い声とともにヴァニクは襟をつかまれ、後方へと投げ飛ばされた。

 

ギャリりりりりりりりりりりりりり!!


 ヴァニクが目を開けるとそこにはギャリオスの両腕を二本の大剣で止めているドイルがいた。しかし、その体はもうすでに満身創痍で体のいたるところに切り傷が見られた。


「ドイルさん!なんでここに!」

「それはこっちのセリフだ!なぜおまえが危険区域にいる!」

「き、危険区域!?そんな」

「いいから早く逃げろっ!お前も死ぬぞッ!」

「ドイルさんも逃げないと」

「ふざけんなッ!お前だけで逃げろ!この先、未来を創っていくのはお前みたいな若い奴らだ。俺の命一つで、未来が守れるなら安いもんだ」

「でも!」

「でもじゃねぇッ!」


 今まで険しかった、ドイルの表情は覚悟を決めたのか、泥臭い笑顔に変わった。血反吐を吐き、ひざから血を流しながら、ドイルは微笑んだ。


「生きろよ・・・」


 バキンッ!


 鈍い音とともに、ドイルの大剣が真っ二つに折れギャリオスのチェーンソーの刃がドイルの体を上下に両断した。


 ブシャ


 ドイルの身体から噴き出した深紅の血がヴァニクの体に降りかかる。生暖かい赤い液体は、ヴァニクの恐怖心をあおっていく。


「あ、あ、あーーーーーーーーーー!」


 ヴァニクは、恐怖で腰を抜かしその場に座りこんだ。

 返り血で真っ赤に染まったギャリオスが血よりも赤い眼光でヴァニクを見据える。ギャリオスは口から白い煙を吐き出し、ゆっくりとヴァニクに近づいてくる。血の付いた両の腕の刃を回転させ一歩一歩ヴァニクとの距離を詰める。


「あ、あ、逃げなきゃ・・・逃げなきゃ・・・生きないと・・・約束」


 ヴァニクは震える量の手で重たい体を引きずり前に進もうとするが、ドイルの血で滑りうまく前にすすめない。ヴァニクが血の海に足を取られている間に、ギャリオスがヴァニク真後ろまで近づいてきていた。


 バキッ


「グァ、ギャアアア」


 ギャリオスが狙ったのか、ヴァニクの左足を踏み潰した。体中に響く鈍痛にヴァニクは嘔吐してしまった。

 目の前がかすむ、もう体は一ミリも動こうとしない。息が苦しい、吐き気で、まともに息ができない。

 そんなヴァニクに向かってギャリオスは無慈悲に腕を振り下ろした。


「ガァ、ぁぁッ!」


 ドイルの血で切れ味の悪くなった刃はいつまでもいつまでもヴァニクの肉体を震わせ続ける。声も出せぬほどに体を破壊された。

 背中から入った刃が心臓に到達するまでいったい何分切り付けられたのか、いやひょっとしたらほんの数秒の出来事だったのかもしれない。しかし、ヴァニクにとってその時間は途方もなく長くそしてそれは生まれて初めての死だった。




 ヴァニクはまたあの謎の空間で目を覚ました。


「おめでと~。人生初めての死はどうだったかな?」


 ヴァニクの目の前にはあの白髪の少年が立っていた。


「お前は・・・俺は死んだはずだろ。なぜ」

「いったろ、すぐに生き返るって」

「生き返る・・・いやだッ!俺はもうあんな思いはしたくな!死にたくない!」

「どうして?君は何度でも生き返るんだよ?」

「どうしてだと、そういう問題じゃないだろ!思い出しただけでも足がすくむ。死ってやつは根底から人間を破壊してしまうんだ!・・・あんな思いをするくらいなら俺は・・・生きたくない」

「君の、感情なんて聞いていないよ」

「は?」


 少年の冷たい言葉がヴァニクの恐怖を一瞬で凍り付かせる。


「君は、あの世界で二日ほど過ごして気づいたはずだ。あの世界では腹が減る。君の感情に関係なくあの世界は君を何度でも生き返らせる。君が恐怖で足をすくめて家から出ないのならば、そうすればいい。だが君はすぐに餓死か脱水症状で死ぬ。僕は、あまり君の世界に詳しくはないが、君の世界ではこう言うのを、生き地獄というんだっけ?いや、死に続けるんだそんな生ぬるいものじゃないね。つまりだ、君が死ぬにしても、まずはこの世界から出なきゃならないんだ。分かるだろ?」


 少年は不敵に笑い続けた。


「君は、このゲームをクリアするしかないのさ!何度死んで、何度もよみがえってやり直す。君の大好きな、死にゲーだよ」

「く、狂ってる。狂ってる!」

「狂っているのは僕じゃない!この世界のほうさ。いったろ、文句はクリアしてから、僕の上司に言ってくれ。さぁ、君の二度目の人生だ!楽しんでいこ~!アハハハハハハハハハハ」


 少年の笑い声とともに、またヴァニクの足元に穴が開き、下に落とされた。




 こんにちは神奈りんです。この度はこのお話に目を通していただき誠のにありがとうございます。

 とりあえずひと段落、ということで、少し解説を挟みます。

 まずこの世界について、この世界は、尺初の少年も言っていた通り、彼の上司が何かの目的のために作り出した世界です。その目的は、少年も知らされてはいません。

 そして、グロウリスについて。この世界には、人間とその他動物、そしてグロウリスという大まかに三種類の生き物に分かれます。

 グロウリスには三種に分類できます。これは、作品内でも説明しようと思っていますが、ここで少し先に説明します。グロウリスには、「発電種」「蓄電種」「放電種」の三種に分類されます。発電種は、ヴァニクがちぎった、花形とグロウリスや、樹木型のグロウリスが分類されます。蓄電種は無残に転がっていたグロウリスがそれです。そして放電種、これにはギャリオスが分類されます。

 この三種の関係性は、自然界の食物連鎖のような感じだと考えてもらえれば幸いです。

 では、今回はこのあたりで終わりにしたいと思います。次の話で、タイトルの機械少女が登場する予定です。ここまで非常にお待たせしました。次回からが本編といってもいいかもですね。

 さらに、次回は、プロローグの続きとなります。今回までの話はプロローグの前日談のようなものと受け取ってください。よろしくお願いします。

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