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謎の壁と、機械の世界


「起きなよ、ヴァニクくん。大事なヒントの時間だよ」

「ハッ!・・・ここは」


 自室のベッドで眠っていたはずの、ヴァニクが目を覚ますとそこは、この世界に来る前に謎の少年と話した謎の空間だった。そしてヴァニクの隣には、あの少年が微笑みながら立っていた。


「あんたは、さっきの」

「ふふ、実に19時間ぶりだね。君に、この世界の感想を聞きたくてね」

「感想?ふざけんな!無理やりこんなわけわからない世界に連れてこられて!」

「君も楽しんでるように見えたけど?」

「ぐっ、それは・・・ちょっとは楽しかったけど」

「ならいいじゃないか。この世界はゲームなんだ、思う存分楽しめば、それがこの世界での君の役目、楽しんで最後まで、このゲームのシナリオをクリアする、勿の論クリアすれば元の世界に返してあげるさ。最も、君がこのゲームをクリアするころに、元の世界に帰りたいかはわからないけどね」

「ッ?どういうことだ」

「さ~、それは、プレイしてからのお楽しみ。というわけで、第一のヒントタイム。『武器は軽いほうが動きやすくていいよね!』」

「?どういうことだ?」

「てなわけで、バイバ~イ」


 少年がそういうと、また床に穴が開きヴァニクは下に落ちていった。


「またこれかよ~!」


 

「ハッ!・・・夢?いや、精神だけが移動したってことなのか?プレイヤーとしてこの肉体に入っているだけだと定義すれば、納得できない話ではないか・・・しかし、あの少年の言っていたヒント、武器選びに対するヒントだろうか」


 ヴァニクは、昨日脱ぎ捨てた服を着て部屋を見渡してみる。きのうは気づかなかったが、部屋の隅に大き目な宝箱のようなものが置いてあった。


「これは、あれだな。ゲームとかでよくある、何でも入る異次元収納ボックス。さてさて、何がはいいているのかな~」


 ヴァニクは、うきうきで箱のふたを開けた。ギギギと渋い音を出しながら開いた箱の中には・・・


「これは、異次元なんかじゃない!底がある、触れてしまう!こんなんじゃ、入るアイテムなんてたかが知れてるぞ!にしても、・・・入ってる武器が思ってたのと違うな。これは何だ?うわっ!重!」


 ヴァニクが手に取った二の腕ほどの長さのものすごく重い四角い塊。横に取っ手のようなものがついており、その上にボタンのようなものがあった。


「これは?ボタンか」


 ポチ

 ガシュン!


「こ、こりゃ!?すごいな!!」


 ヴァニクがボタンを押すとか、四角い塊が一瞬でヴァニクの背丈ほどの大剣へと姿を変えた。そのほかにも大小さまざまな四角い塊があったが、そのすべてがボタン一つでワンタッチ変形する武器だった。

 しかし、そのような武器の中に一つだけ、元の姿を保ったまま無造作に入れられたものがあった。


「これは、銃か?見たことのないデザインだな。リボルバーみたいな回転式の弾倉がついているが、銃全体のフォルムはオートマチック銃のようだ、ドラマとかで見たことがあるな」

 

『武器は軽いほうが動きやすくていいよね!』


 ふと、ヴァニクの頭に少年のヒントがよぎった。銃以外にも軽い折り畳み式の武器もいくつかあったが、ヴァニクは無意識にその銃を選んでいた。


「これにするか」


 ヴァニクは銃と一緒についていた腰に巻く形のガンホルダーを腰に巻き付けて、銃を差し込んだ。

 妙にしっくりくるのは、ヴァニクのカウボーイのような格好に起因しているのだろう。

 ヴァニクは最後にウエスタンハットを深くかぶり、家を出た。



「俺の今の所持金が、1000円?だからこの依頼書の契約金は払える。でも失敗したら無一文てことか。ここに来る前、食事をしようと店に入ってみたが、どの料理も1000円より高かった。かなりここの物価は高いらしいしい。俺この手のゲームはやったことないから、序盤の進め方がわからん。う~ん」

「よう!ヴァニク。朝早くから何を悩んでやがるんだ」

「ドイルさん、おはようございます」


 掲示板の前で悩んでいたドイルの後ろからひげ面の男、ドイルが声をかけてきた。


「なるほど、効率のいい金の稼ぎ方か、最初は、報酬は少なくても契約金の発生しない依頼を取ったほうがいいぞ。たとえば・・・これとかな」

「グロウリスの死体調査?」

「ああ、契約金のつかない、国からの依頼だ。報酬金は少ないが、副産物を売ればそれなりの金にはなる」

「副産物?」

「ああ、グロウリスの身体を構成する金属は、死体から取り放題さ」

「なるほど、納入量より多くとってくれば、余りを売れるってことですね」

「そういうことだ。だが、気を付けることもある。グロウリスが死んでいる、ということは近くに殺したやつがいるという可能性が高いということだ」

「殺した、奴・・・」

「んじゃ、俺も仕事があるから。初仕事気をつけていってこいや」

「うっす!」


 ドイルは、ヴァニクに後ろ手で手を振り、その場を去っていった。


「ドイルさんは、いいひとだな。殺したやつに気をつけろ、か。グロウリスとかいうのは機械生命体なんだろ、俺の知ってる機械生命体つったら、そいつ単体で完成されてるから、不完全な人間を滅ぼしに来る、みたいな感覚なんだが。グロウリスを殺した同業者に気をつけろってことだろうか。確かに報酬の横取りはよくないな」


 ヴァニクは、カウンターに依頼書を提出し、依頼品用のポーチを受け取り、ギルドを出た。そして地図を見ながら、町の入り口と逆のほうへと歩き出す。ヴァニクとは逆にギルドに向かう人々の波の後ろに高い壁が見えてきた。


「あれは?入り口にはなかった、城壁?金属でできているのか。グロウリスたちが入ってこれないようにしているのか」


 黒光りする鉄の壁は、5メートルを優に超えるほどだった。壁の前に男たちがたむろしていた。


「おい、またギャリオスが出たらしいぞ」

「まじかよ、こりゃ少し狩りに行きずらくなるな。金は稼がなくちゃならねぇが、命には代えられねぇ」


「ギャリオス?グロウリスの個体名か何かか?どちらにしろかなり危険な奴がそこら辺をうろうろしているのか。だが、今の俺は生きるためにも金をかせがにゃならん。ゲーム世界でも腹は減るらしいし」


 ぐ~、となる腹を抑えながら。ヴァニクがつぶやく。ヴァニクの現在の所持金では、食事すらできないのだ。いつその、ギャリオスとやらがいなくなるかもわからない今、命よりも金のほうが勝ってしまった。


「え~っと、この壁を超えるのは・・・上るか!」

「何馬鹿なこと言ってやがる」

「ドイルさん!どうもっす」


 ひらめいた、ようにつぶやいたヴァニクの言葉に、ドイルがツッコム。ドイルは朝あった時よりも重装備に身を包み、背中には重そうな大剣を背負っていた。


「そんな軽装でいいのか?って、お前に装備を買う金もねぇか。・・・いいか、ヴァニクこれは、プロからのアドバイスだ、攻撃を受け止めようなんて考えるな、全部よける気前でやれ」

「うっす」

「グロウリスどもの攻撃は一撃一撃が、致命傷につながる、一発受けたら死だと思え」

「一発で、死」

「そのぐらいの気前で行けって言ってるんだ。ま、今回は討伐じゃないんだろ、なら、危険は少ねぇはずだ」

「うっす!とりあえず、生きてるグロウリスにあったら、全速力で逃げます!」

「ガハハハッ!その息だ、その息!戦場では引き際が肝心だ!ついてきな、壁の超え方を教えてやる」


 親指で壁を刺すドイルに連れられ、壁までやってきたヴァニク。ドイルが壁の目の前に立つと、壁が青く光り、平たい金属製の板が壁からせり出した。


「ここに、自分のプレートをかざすんだ、そうすると」


 ゴゴゴゴと、鈍い音が鳴らしながら、壁に亀裂が入り横にスライドして、人ひとり通れるくらいの四角い穴が開いた。


「こんな感じで壁が開く。お前もやってみろ」


 ヴァニクは、言われた通り壁の前に立ち、せり出してきた板にプレートをかざした。するとドイルと同じように壁に穴が開いた。


「すごい、どうなってんすか!?」

「さぁ、俺も知らん。俺が生まれる、ずっと前から、グロウリスと人間の世界を隔ててる壁だからな、神秘の力さ。だが、使い方がわかって、使えればそれでいい」

「なるほど」

「それじゃ、俺は危険区域に出る。お前とは違う地域だが間違っても入ってくるんじゃねぇぞ」

「うっす!ありがとうございました」

「おう!仕事が終わったら、酒でも飲もうや」


 ドイルは、そういうと壁の中へと消えていった。


「俺も行くか」


 ヴァニクもドイルに続いて壁の中へと入っていった。


 

 まばゆい光が目をくらます。目が慣れたとき、ヴァニクの目に入ってきたその世界は異様そのもだった。


「こ、これは・・・。本当に壁を一枚隔てただけなのか」


 広がった異様な世界は、世界を構成するものすべてが機械でできていた。地表を埋め尽くすように生える金属のチューブや銅線の束。木のように絡みあった金属製の何か。花のように咲き誇る色とりどりの謎の金属板。


「町の形も異様だったが、この世界はその比にならないな。これがすべて、機械生命体。想像よりも何倍も馬鹿げてる」


 唖然とするヴァニクの視界に黒いタブが出現し、白文字で


『クエスト開始』

目標 グロウリスの装甲×5

 達成度 0%


 と、書かれていた。そしてタブは縮小されて視界の右上に表示された。


「この、グロウリスの装甲ってのを五つ集めればいいのか。でも、どうやって確かめるんだ、いちいち、ポーチに入れて、クエストの達成度から確かめる必要があるのか?・・・試しに」


ヴァニクは、足元にあった金属の華のようなものを引きちぎってみた。バチバチという音とともに青白い光が、切り口から放たれた。


「やっぱり、全部機械なんだな・・・」

 

 ヴァニクは、金属でできた花を見てつぶやいた。すると、ヴァニクの視界の中で、花の上に小さなタブが現れた。


「モールメント、黄色。この花の名前か。よかった、アイテムの詳細は出ないまでも、名前は出るんだな。これなら、なんとかなりそうか」


 ヴァニクは、一応ちぎった花をポーチに入れて、機械でできた森を進んでいった。


 


こんにちは神奈りんです。この度はこのお話に目を通していただき誠のにありがとうございます。よければ今後ともよろしくお願いします。

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