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謎のゲームと謎の男

 

「さてと、今度はどこを変えようか?さっきは、少し行ったところに罠があったから・・・」


 日曜日の朝6時、先日の深夜から彼、馬場文雄ばばふみおは新作の㍶ゲームを徹夜でプレイしていた。


「難易度、超ハードのこのゲームやはり俺の見込み通り化け物級だぜ。あ、また死んだ。・・・かー、やめだやめだ、集中力切れた。ちょっと休憩~」


 馬場はそういうと、席を立ち、風呂場へ向かった。

 都心の1LDKに住む彼は、そこそこの収入と普通の家庭環境に生まれた彼には、趣味があった。それは世に言う死にゲーをプレイすること。彼は死にゲーをこよなく愛し、それをプレイすることを人生の楽しみにしていた。


 「ん?・・・なんだこのメール。・・・新作ゲームのベータテスト?なになに・・・西部劇風の世界で機械生命体を狩る、新作の狩りゲー?・・・いやいや、狩りゲーって俺やったことないし。なんで俺なんだよ」


 ㍶画面に突如現れた謎のメールは馬場に新作ゲームのベータテストへのお誘いだった。しかし、そのゲームのジャンルは狩りゲー、馬場が好む死にゲーとは少しベクトルが違うゲーム性だった。

 馬場はカーソルを下にずらしメールの続きを読む。


「・・・難易度はかなり高く、死にゲーとなることが予想される。だって!?ちょっと興味わくな」


 そしてメールには、ベータテストに参加された方には後日製品版が発売となった時無料でソフトを送るということだった。死にゲーと聞き完全に乗り気になっていた馬場はすぐに、メール内の、お申し込はこちらと書かれたURLをクリックした。

 

 その瞬間だった、馬場の目の前が暗転した。

 馬場は見ず知らずの真っ白な世界で目が覚めた。あたりにはうっすらと機械的なモーションが見えている。大きな歯車や、ピストン、そして空間の中心には青く輝く大きなクリスタルが浮かんでいた。


「な、何だここ!?俺は・・・そ、そうか。昨日から徹夜だったし、寝落ちしちまってこんな変な夢を・・・、で、でも夢にしちゃ少しリアルというか」

「夢なんかじゃないさ」


 困惑する馬場の後ろから、透き通るような声が聞こえてきた。馬場が振り向くとそこには白髪できれいな青い瞳をした初年が笑顔でたたずんでいた。


「ど、どちら様ですか・・・?」

「ふふふ、君を選んで正解だ」

「選んだ?」

「そう、だって最近の学生は異世界転移とか異世界転生とか聞くと、ステータスだなんだってうるさいだろ。君はそういう要求はなさそうだし、それに根っからのMっ子っと見た」

「Mっ子?なんで俺がMっ子だと?」

「え~、だって君死にゲー大好きじゃん、あんなゲームを何時間も楽しんでプレイできる人間のどこがMっ子じゃないっていうのさ」


 楽しそうにしゃべる少年は、コホンと咳払いをして馬場に告げる。


「君には、僕らの世界で生きてもらう。それは、あっちの世界で君が読んだベータ版ゲームの世界だ。そこで君にはその世界のシナリオを攻略してもらいたい。理由は聞かないでね。僕も頼まれてやってるだけなんだ。文句はクリア後に僕の上司に言ってね」

「ちょ、ちょっと待ってくれ____」

「質問は受け付けませーん」


 そう少年が言うと馬場のいた床が抜けた。咄嗟に馬場は床の端に指をかけてとどまった。


「ひ、一つだけ」

「ん?」

「死にゲーって書いてあったよな、俺は死んだらどうなるんだっ!」

「生き返るさ、すぐにね」


 そういうと少年は馬場の指を外し、穴へと落とした。



 馬場が目を覚ますと、そこは見知らぬ荒野を走る馬車の中だった。


「お!起きたかい、お客さん。もうそろそろ着くぜ」

「着くって、どこに?」


 馬車の御者が振り返り馬場のほうを向きながら言う。


「なんだよ、寝ぼけんてんのか。まぁ、ずいぶんの長旅だったからな」

「いやだから、どこに着くって?」

「どこって、そりゃ西の開拓地、メイルタウンだよ」

「メイル、タウン。そうか・・・ほんとに来たんだな、ゲームの世界に」


 馬場は雲一つない青い空を見上げた。黄昏る馬場に御者が話しかける。


「あんたとはずいぶんと長い旅をしたな、最後にあんたの名前を聞かせてくれねぇか」

「あぁ、ゲームの名前付けイベか・・・そうだな、ここはいつもので。・・・ヴァニクだ」

「ヴァニクか、いい名前だ。アンタに待ち受けるこれからの運命に幸があらんことを願うぜ」

「あぁ、ありがとう」

「しっかし、すごいもんだな。アンタみたいな若い奴がグロウリス狩りとは」

「ぐ、何だって?」

「グロウリスだよ、お客さん寝すぎてグロウリスのことも忘れちまったのか?」

「あ、ああ、あれか。あれだな。思い出した、思い出した。・・・グロウリスってなんだ?待て待て思い出せ、この世界は確か狩りゲー。そして、グロウリス狩りってことは、グロウリスは例の機械生命たってことか!」

「ハハハ、不思議なお客だ。さて、見えてきたぜ、メイルタウンだ」


 馬場、いやヴァニクは、馬車から身を乗り出し、前方の町を見据えた。


「こ、こりゃ、まじ物の西部劇みたいな町だな」


 そこにはつぎはぎだらけの木製の看板に、木張りの家々。そして町の中心にはレンガ造りの時計塔といった感じだった。しかし、いかにも西部劇な街並みからはたいてい想像もできないような重装備に身を包んだ男たちが町の入り口には立っていた。

 金属の板が体のところどころに張り付いたような鎧とも言えないその格好はどことなく、現実世界の狩りゲーに出てきそうな鎧だった。そして、その男たちが馬車を止めた。


「お疲れさん、今日の荷物は・・・人か」

「はい、そうです。今回も上玉ですよ」

「・・・上玉?」


 御者が不穏なことを口走ると同時に、一人のこわもての男が馬車を覗き込んだ。男はにたぁっと笑うとヴァニクに言った。


「こいつぁ、何日もつかみものだな!ガハハハハハッ」 


 そう大笑いする、男はヴァニクの後ろ襟をつかむと馬車から引っ張り出した。


「なんだよ、そのウエスタンハット!英雄、カナビスのコスプレかよ!おい皆、新人ちゃんは英雄にあこがれた夢見る開拓者さんだ」


 ウエスタンハットと聞いてヴァニクはそっと頭に手を置いた、そこには触ったことのない手触りと妙に収まりの良い被り物があった。そう、ヴァニクはまさに西部劇のカウボーイまんまの格好をしていたのだ、例を挙げるならばそう、インディー・ジョー〇ズのような風貌だった。


「ガハハハハハ、そいつぁいいや、これからよろしくな!え~っと名前は・・・」

「ヴぁ、ヴァニクっす」

「ヴァニクか!いい名前だ!」


 柄のお悪そうな男たちは笑いながらヴァニクの背中をたたく。男たちはひとしきり笑った後にヴァニクに言った。


「ついてきな、俺たちのギルドに連れてってやる」


 そして、ヴァニクの波乱に満ちた長い時間の旅が始まった。


 

 

 こんにちは神奈りんです。この度はこのお話に目を通していただき誠のにありがとうございます。よければ今後ともよろしくお願いします。

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