プロローグ
「また死んだのか」
そういって、家具のない殺風景な部屋のベッドで一人の赤髪の青年が目を覚ます。
彼は、眉間にしわを寄せ、自らの拳を見つめる。
「もう何度目だ?・・・俺は死ぬなら、しっかり死にたいんだ。こんなのただの拷問じゃないか」
そういった彼は、ため息をつくとベッドを出て部屋を出る。
木張りの壁に、オレンジ色の照明。無造作に回り続ける空調がアンティークな雰囲気を醸し出す。しかしやはり部屋は殺風景で、大した家具はありはしない。椅子も、テーブルもない部屋の真ん中に一本の服掛けがあり、そこに一式の衣類がかかっていた。
「どんなにひどい死に方をしても、この服だけは元通り。いつものことだがこの世界は狂っているな」
そういいつつ、彼は服を着始める。
白いワイシャツに、袖のない革ジャンを着て。紺のジーパンをはいた。そして腰に銃のホルダーを掛け。皮の手袋を付けた。
「こいつは・・・こいつだけは捨てられないな」
そういって、彼は一丁のリボルバーをホルダーにしまった。最後に革のウエスタンハットをかぶり彼は部屋を後にする。
そう、ここは遠い遠い西の町。一面に荒野が広がる黄金の開拓地。多くの人間がそこに夢をはせはかなく散ってゆく。
そして彼もまた、ある目的のもとこの街にやってきた開拓者。『ギア・フロンティア』
「やり直しだ。また外に出るか。・・・でもその前に、イベントフラグを立てとかないとな」
そういうと、彼は町の中心近くの酒場に向かった。
酒場につくと、そこは荒くれ者どものたまり場となっていた。
酒臭い息をまき散らしながら、大声で笑う男や、筋骨隆々の男同士が腕相撲をしていたり、カードゲームに金を掛けたりと、やりたい放題だった。
「いらっしゃい。アンタ、見ない顔だね。新入りかい?」
店のカウンターに座った彼に店のマスターが声をかける。
「まぁそんなとこだ。マスター、スコッチをを一つ」
「あいよ」
彼が酒を注文すると、一人の男が近寄ってきた。ガラの悪いいかにもな男だ。男はなれなれしく肩に手を回し彼に話しかける。
「ヘイ、兄ちゃん。随分といかした服着てるじゃねぇか。お上りさんか~?」
「ここは都会じゃない。お上りさんというのは少し間違っているな」
「うるせぇ!てめぇ調子乗ってんじゃねえぞ!ここでのルール教えてやるよっ!」
男は、かなり酔っているんかいきなり青年に殴りかかった。しかし、彼はひらりと身をかわし、拳が空ぶった男はカウンターに拳を打ち付けた。
「よけてんじゃねぇー!」
男は、額に血管を浮き出させ、ものすごい形相で、もう一度殴りかかってくる。しかし、彼は瞬時に体をかかがめ男の足首を蹴り飛ばした。バランスを崩した男は頭からテーブルに突っ込んだ。テーブルは簡単に壊れ、男和置いてあった酒を頭からかぶり酒まみれになっていた。
「て、てめぇ・・・ぶこっろ・・・」
「ぶっころ、何だって?」
彼は、腰のリボルバーを抜き男の額に突き付けた。男も懐の銃に手をかけていたがもう間に合わない。先に球が出るのは確実に青年のリボルバーのほうだ。
「ほ、本気で打つ気か?」
「どうだろうな」
ギチチチ、彼はゆっくりとリボルバーの撃鉄を引き始める。
「や、やめてくれっ!俺が悪かった!だから命だけは!」
「いやだね・・・ばーん」
そう、彼が言うと男は白目をむき泡を吹いて倒れた。
「あまり他人にかかわらないのが、長生きの秘訣だぜ」
そういうと彼は、カウンターに戻り唖然としているマスターの手からスコッチのコップ受取りくいっと飲み干すと。コップに一枚のコインを入れその場を後にする。
「あんた、名前は何てんだ」
そんな彼にマスターが後ろから声をかける。
「俺か?俺の名前はヴァニク・ハルビン。さすらいの開拓者さ」
「ふ、ヴァニクか。覚えておくよ」
「無理だよ、きっとすぐ忘れる」
「そりゃ、どういうことだ?」
「こっちの話さ・・・」
そう言い残すと、彼、ヴァニクはその酒場を後にした。
この町、いやこの世界は弱肉強食である。その自然の摂理にもちろん人間という種も組み込まれている。この世界は、ある二つの種による生存競争が行われ続けている。それは、人間と謎の機械生命体
『グロウリス』の戦争である。・・・戦争というよりも人間の一方的な支配のための戦いである。この世界の約三分の一はグロウリスたちの土地といわれている。
彼らは、動物ほどの知性と超高レベルの科学力を有す体を持つ生命体である。その生命体の構造は、非常に緻密であり、人間の科学力は到底及ばないほどのものであった。
そして、200年ほど前、人間政府が打ち出した「フロンティア計画」により、グロウリスたちとの全面戦争が始まった。しかし、これまでの人間を殺すための兵器ではグロウリスたちに傷一つ残すことすらできなかった。そこで人間たちはまず、彼ら、グロウリスたちを研究することにした、彼らの科学力を自らの力としようとしたのだ。
研究は、難航した。明らかに技術力が足りない、人間にはグロウリスをしとめることすらできない、よって研究しようにもその元がないのだ。しかし、研究が始まって、約40年ほどたったある日、ある男が機能を停止、つまり死んだグロウリスを持ち帰ったのだ。それをきっかけに、研究は飛躍的に発展した。そして、人間はグロウリスに対抗する兵器を得たのだ。
そして現在、国の意思にかかわらず、グロウリスたちを狩りその体を構成する多種多様の金属類を売り生計を立てる者たちが現れた。人々は彼らを開拓者、「ギアフロンティア」と呼んだ。
初めまして、神奈りんです。この度はこの話に目を通していただき誠にありがとうございます。今後とも温かく見守ってくれると幸いです。