1章 1話目 打倒!ぴーまん山崎!!
「ぴーまん山崎…ねぇ……。」
「そうでござんす!奴だけは…絶対に許してはいけないでござんす!!」
いったいそのぴーまん山崎とやらは何をしでかしたのだろうか。
「奴はtheうぃーけすとの住民全てに絶対にやってはいけないことをやったのでござんす!」
「絶対にやってはいけないこと?」
「……悪口を言ったんでござんす。」
ん?何かおかしい。思ってたのと違うぞ…?
「悪…口?」
「あの野郎、あっしらに『バーカ、バーカwww』なんて宣ったんでござんす!!!本当に許せないでござんすぅぁぁぁ!!!!」
葉っぱ次郎から出てくるオーラ(蒸気)がいっそう激しくなった。
というか、悪口のなかでも物凄く典型的なものだ。「バーカ、バーカ」なんてまるで小学生だ。
「まぁ、ぴーまん山崎が何をしたのかはわかったけど、それってそんなに怒ることなのか?」
「当たり前でござんす!この世界に住むものたちは各々があまりにも個性的な姿をしているがため、他人の悪口を言うことだけは絶対の禁忌として扱われてきたんでござんす。」
まぁ、たしかにそれなら怒るか…な?
たしかに葉っぱ次郎も超個性的だし。むしろこんな植物見たことないし。
「それは確かに許せんわな。でも、打倒ぴーまん山崎っていう目標はいいとして、肝心のそいつは何処にいるんだ?というか、僕みたいな人があと49人もいるなら、もう最悪倒されててもおかしくなくないか?」
「他のアナザーさん方は……奴の手駒とされてしまったでござんす…。」
「手駒!?そんなことができる能力をぴーまん山崎は持っているって言うのか!?」
「その通りでござんす。この世界ではアナザーさんも元々住んでいるものも必ず一人一つだけ、固有の能力が与えられるんでござんす。あっしらはその能力のことを[すきる]と呼んでいるでござんす。」
「すきる……。」
そんな不思議能力が僕にも備わっているって言うのか!僕のすきるってどんなものなんだろう?
「ちなみに、あっしのすきるは一分間の間素早さが超絶アップ、というものでござんす。」
「なにそのチート能力…。」
「そして憎きぴーまん山崎のすきるは…視界に入れた本名を知っている相手を手駒にすることができる、というものでござんす…。」
敵側はさらにチート能力でしたとさ。
「え、そんなの勝てなくない?名前知られたら終わりじゃない?」
「しかもぴーまん山崎の部下の中に、10秒間見つめた相手の情報全てを知ることができる、というすきるをもった[タンバリン田中]という奴がいるでござんす。」
「終わりじゃん。勝ち目ないじゃん。」
もう詰んでる気がするのは僕だけなのだろうか。
「…あ、でもぴーまん山崎のすきるには一つ弱点があって…」
少しばかり暗い顔をしながら葉っぱ次郎がぴーまん山崎の弱点について話し出す。もちろん食い付かない手はない。
「なんだ?教えてくれ!」
「それは……涙を流すとすきるの効果が消える、というものでござんす。」
何故か簡単にことが済んでしまうような気がしたミツヤであった。